《波紋―求心的なものから広がりを与えよ》
「そろそろチェックメイトだ。最後の一手は誰でもできるが、誰にやらせるのが一番効果的なのか?」と広報戦略の人間が考えた。「とどめをさしたことの印象の強さと、同時にその暴力性を正義として印象づける必要があります。」と依頼主は言った。「ならば答えは簡単です。」と広報戦略の人間が言った。
「暴力における倫理的な問題をクリアーし、いかに暴力の快楽を見ている人間に堪能させるか、ですか。なるほどこれはわたしの本業ですね。」と監督は誇らしげに語ったという。
「普通この機能は紹介や広告として利用されますが、実は対抗勢力のつるし上げとしてもうまく機能するんです。宣伝と抑圧のうまいバランス感覚をつかんでください。またここで生じる「争い」自体をうまい形で利用するとさらに効果的な印象づけができます。」とインストラクターは教えた。
代議士が飲み会の席で、「観客というものは、初めはみな警戒しています。何を考えているのかわからないものに対しては慎重になりますよね。ですから素の自分をその戦略の中にうまく刷り込んでください。どちらが観客の感情をつかむかといえば、親しみのあるキャラクターのほうが理知的で画期的なアイデアより勝るのです。」と語った。
「みんなのためを考えてやっているという人間のことを真に受けてはいけません。彼らは特定の宛先を持っているものです。彼らを有利に働かせることのできるのは特定の人間なのですから。我々はそれを客観的に分析する必要がある。何が我々にとって得策なのかと。ですから、現実的に政治ゲームは一つのゲームではなく複数のゲームが同時進行し絡み合っています。しかし、物事の決定は一つです。そしてそこから複数の利益関係が生まれます。」と、批評家が言った。