「シバトラ〜童顔刑事・柴田竹虎」(フジテレビ)と「ゴンゾウ 伝説の刑事」(テレビ朝日)の2つの刑事ドラマ。すべて見ているわけではないが、欠点が似ていると思えた。それは、主犯の犯罪者の造形性がふにゃふにゃでなんら説得力も必然性も感じられないのだ。「シバトラ〜童顔刑事・柴田竹虎」の主犯格である「落合」演じる俳優のあからさまな失敗は、それだけでチャンネルを変えたくなるほどだ。陳腐すぎるトラウマを抱える2つのドラマの犯罪者は、ともに幼児的なエゴイズムを犯罪の動機として押し通し、無理やりな感じが否めない。その陳腐さが最近の日本の犯罪者の心情をうまく投影しているとも思えない。
犯罪に対する動機が描けない。犯人者に対する括弧たる必然性もイメージも作り出すことができなかった刑事ドラマ。2つのドラマとも、刑事側(キャラクターや葛藤)の描かれ方はそこまで悪くないのに、ここまで犯罪者が失敗しているのは、製作側の力不足だけが原因ではないかもしれない。
映画評論家である荻野洋一が最近のハリウッド映画で描かれる警察の無力さに戸惑いを示しているが、日本では犯罪は描けるが犯罪者が描けなくなっている事態に僕は少々戸惑ってしまった。