2015/9/16

近刊のご案内『原爆の図 全国巡回――占領下、100万人が観た!』  書籍

8月末刊行を目ざしていながら、今夏の忙しさに大幅に遅れていた新著が、ようやく刊行の目途が立ちましたのでご紹介いたします。

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『原爆の図 全国巡回――占領下、100万人が観た!』
岡村幸宣著(原爆の図丸木美術館学芸員)
装幀=鈴木一誌+山川昌悟 四六判上製 312頁 本体価格2400円(予価)
2015年10月25日刊行予定

◎事前注文を承ります。 特典DVD映画『原爆の図』(1953年、17分、今井正・青山通春監督)
本書が出来次第、本+DVDをお送りします。代金は同封の振込用紙でお支払いください。
ご注文は新宿書房へ FAX03−3262-3393 メールinfo@shinjuku-shobo.co.jp


占領軍が日本の政治、経済、生活、教育文化のすべてを支配していた時代。
1950年2月、丸木位里・赤松俊子(丸木俊)夫妻の手から最初の《原爆の図》が産まれた。
「原爆」という言葉を使うことすら許されないこの時期に、夫妻によってはじまった巡回展は、北海道、新潟から東京周辺へとつづく。そして《原爆の図》を背負った二人の青年によってさらに西日本各地へと、燎原の火のように広がっていく。
本書によって、1950年から53年まで展開された《原爆の図》全国巡回展の知られざる実態が、関係者への取材と丹念な資料集めから、ここに明かされる。
全国巡回の迫真のドキュメント。


申込書はこちらからダウンロードできます。
http://www.aya.or.jp/~marukimsn/NgenbakuOL.pdf

今年の夏、《原爆の図》の展示のために日本とアメリカを何度も往復する日々のなかで、身を削る思いでまとめました。
これまで伝説的に語られていた1950年代はじめの「原爆の図全国巡回展」の実態を、個別具体的な資料調査によって、明らかにする内容です。

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1950年代は、「大衆に学べ」という合言葉が生まれ、芸術家(芸術文化の創造者)と大衆(その受け手)という関係が見直されて、どちらも同じ位置に立って向かいあう対等な関係が芽生えはじめた時代です。
そうしたダイナミックな変化は、現在のインターネットの発達がもたらした情報やネットワーク構築の変化と重なる部分があるかもしれません。

当時の文化運動は政治との距離の「近さ」が特徴でしたが、ときに逸脱し、あるいは一線を画して展開されることもありました。
要するに、担い手それぞれの思いはさまざまで、「政治」も「大衆」もひとくくりにできるものではなかったのです。
そして「原爆の図展」は、それら同時代の文化運動と深く結びつきながら、野火のように広がっていきました。

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もっとも、運動はやがて衰退を迎えます。
1950年代の文化運動が長く忘却の淵にあったように、占領下の「原爆の図展」も、現在、一般に知られているとは言い難いところです。

先入観による党派的な偏見も、再評価を妨げる要因になったことでしょう。
当時の巡回展を担った関係者に聞き取りをした際、重い口を開いて、今まで話せずにいたことをようやく話せる、とつぶやく人もいました。
その言葉の裏に込められた沈黙の歳月の長さは、想像の及ぶものではありません。
巡回展を観客として見たという証言を電話で聞いた際にも、受話器の向こうで、今まさに《原爆の図》を目の前で見ているように語る方がいました。
涙ぐみながら絵から受けた感動を語る方もいました。
そうした人びとの「熱さ」に圧倒されながら、60年という歳月を越えて、なお人の心に残り続ける《原爆の図》の意味を考えずにはいられませんでした。

丸木夫妻は《原爆の図》を「大衆が描かせた絵画」と語りました。
その言葉には、多分に1950年代の政治的な感傷が込められているとは思います。
しかし、調査を進めるうちに、期せずして、その言葉を何度も思い起こすことになったのも確かだったのです。

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米軍占領下の困難な時代に、《原爆の図》の巡回展がどのように行われたのか。
どのような人たちに、どのような思いを残したのか。
「大衆」をひとくくりにできないように、「原爆の図展」にかかわった人たちの思いもまた、ひとつに束ねることはできません。
これらの思いを記録し、伝え残したい。本書を書いたのは、その一念でした。

そして、1950年代の原爆の図巡回展の歴史的な実態に迫ることは、原爆の図研究の先駆者であるヨシダ・ヨシエさんや小沢節子さんの積み重ねてきた仕事に、ささやかながら新たな1頁を付け加えることでもあり、《原爆の図》という絵画のはたらきを通して、1950年代の文化運動研究への水路を開くことにもなると信じています。

ぜひ、多くの方にお読みいただき、《原爆の図》への新たな視点を発見していただければと思っています。
当時の貴重な記録映画のDVDという特典があるので、事前予約がお勧めです。
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