2013/11/7

銀林美恵子さんの訃報  その他

長年、丸木美術館を支えて下さった、銀林美恵子さんがお亡くなりになったという知らせを聞いたのは、今月4日のことでした。
銀林さんは長年江戸川区で被爆者運動に関わり、滝野公園にある原爆犠牲者追悼碑の建立に尽力されました。以前、銀林さんから掲載のご許可をいただいた文章を、再掲します。

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平和の願いが鳩になって世界に飛び立った日
―原爆犠牲者の追悼碑・鳩と母子像ができるまで―
銀林美恵子(江戸川区原爆被害者の会副会長/丸木美術館理事)

東京の下町江戸川区には区立公園の一角に、ユニークな原爆犠牲者追悼碑が建っています。「原爆の図」で世界的に著名な故丸木位里・俊夫妻が描く「鳩と母子像」の図柄が浮き立つような緑色の石碑です。

この碑建立までの経緯ですが、26年前区内の三人の住職から、江戸川の被爆者の会に「37回忌に何かを・・・・・・」との申し出があったのがきっかけです。三ヶ寺回り持ちでお寺さんと親江会の役員が毎月集まり相談を重ねました。その頃、私は知人から丸木夫妻を紹介され、広島でともに被爆した友達2人を誘って、初めて丸木美術館にでかけました。東京から1時間余りのところにこんな美しい自然があるのかと驚くような環境です。鶏や山羊も庭を歩いていました。すぐ下に川が流れ、林の中に美術館があり15点の大作「原爆の図」の殆どが展示されています。ご夫妻のアトリエは囲炉裏のある古い日本家屋、そこで、山羊の乳からつくったチーズと焼きたてのパンに山羊のミルクをご馳走になったその日のことは忘れられません。原爆のすごい絵を描かれた偉い先生にお会いする前の緊張でこちこちになっていた私たちでしたが、初めてお会いした時からすぐ打ち解け、すっかり丸木ファンになってしまいました。直接丸木夫妻に絵を描いていただき、被爆者や多くの市民たちで彫る手作りの碑を作りたいという想いで一杯になり江戸川にその話を持ち帰りました。

江戸川の「碑を建立する会」がその方向で活発に動きはじめ、石屋さんに適当な自然石を探すことを依頼し、碑の設置場所としては区長の協力も得て葛西駅近くの区立滝野公園に決めました。1981年4月12日、待望の「ノミ入れ式」。四国から運ばれてきた縦横2メートルの自然石を前に、丸木夫妻を囲んでの集まり。はじめ俊先生が、筆に墨汁を含ませて、母子像を子どもの目から、丁寧に描いていかれました。集まった人々が、固唾をのんでみまもっています。お母さんの髪が長く優しく象徴的に描かれた後、筆が位里先生の方へバトンタッチされました。しばらく、石をにらんでおられましたが、描きはじめるといかにも男性的な勢いで、大胆に母子像を囲む大きな鳩を一気にかき終えられました。皆の目が石に吸い付けられるようなひと時、とても80歳のご老体とは信じられません。参加者一同、平和への願いを込めて石の絵にノミを入れました。「この絵は原爆で亡くなった子どもたちが、鳩に生まれ変わって、世界に平和を訴えている図です。」と話される俊さんのお顔はさわやかでした。

その後約1ヶ月、石を彫る作業が続き色塗りも自分たちでして完成、公園に運ばれて7月26日、除幕式を兼ねた第1回江戸川原爆犠牲者追悼式が開かれました。それから25年、毎年7月末に追悼式が碑前で開かれる他、デモ行進の出発点や終結点になり、韓国の被爆者やチェルノブイリ支援で招いたキエフの子どもたちを案内したりなど、戦争・平和を考える反戦・反核の拠点として滝野公園は定着しています。

この碑に寄せる人々の願いが鳩になって世界に飛び立つことを願っての活動です。

(『ぴーす・ぴあ』2005年初夏号 No.104より)

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私がこの追悼碑を訪れたのは、2009年11月21日のこと。
銀林さんに「どうしても追悼碑を案内しておきたい」とお声掛け頂き、江戸川区に伺ったのでした。そのときの記録は、「丸木美術館学芸員日誌」に記しています。
http://fine.ap.teacup.com/maruki-g/1275.html

リューマチを患っていた銀林さんは、ご自分で自由に動くことのできる最後の時期だということを、覚悟されていらっしゃったのでしょう。銀林さんが施設に入所されたという知らせを聞いたのは、その翌年のことでした。

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穏やかな人柄で、誰にでも優しい姿勢で接して下さる銀林さんは、決して多くはない丸木美術館の給料で生活をしている私たち家族のことも、ずっと気にかけて下さっていました。

今日は午後から全国の平和博物館の関係者が丸木美術館を訪れ、館内説明を行いましたが、その後、急いで小岩で行われたお通夜に駆けつけました。
安らかにお眠りになる銀林さんのお顔を見ることができて、胸のつまる思いがしました。
銀林さん、本当にありがとうございました。
これからも、丸木美術館を見守っていてください。
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