2013/8/13

炭坑展ギャラリートーク「山本作兵衛を語る」  イベント

連日、多くの方にご来場頂いている「坑夫・山本作兵衛の生きた時代」展。
今日は、わざわざ福岡から山本作兵衛のお孫さんである井上忠俊さん、緒方惠美さん、そして作兵衛さんと深く交流した記録文学作家の上野英信さんのご長男の上野朱さんが丸木美術館にお運び下さり、写真家の本橋成一さんを加えて4人のゲストによるギャラリートーク「山本作兵衛を語る」を開催しました。

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この日の有料入館者はなんと180人。有料入館者だけを比較すると、8月6日のひろしま忌を超えました。
会場は人であふれ、ものすごい熱気です。
大型扇風機を7台投入し、さらに来場者にはもれなく保冷剤を配布。
それでも皆さん汗びっしょりになりながら、しかし、非常に濃密で有意義な2時間となりました。

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左から上野朱さん、井上忠俊さん、緒方惠美さん、本橋成一さん。
この4人のお姿を作兵衛の炭坑記録画が飾られている会場で見ることができただけで本当に嬉しかったのですが、ユーモアにあふれ、和やかな雰囲気のトークがとても素晴しかったです。

上野朱さんは「丸木美術館で作兵衛さんの絵が展示される日が来るとは、父の英信が知ったら死ぬほど喜んだと思います……もう死んでいるんですけど」と観客を笑わせ、緒方惠美さんは、「丸木美術館で休憩室に案内されたときに吹いてきた涼しい風は、作兵衛じいちゃんの家の風と同じだった」と嬉しいことをおっしゃってくださいました。

トークは、それぞれの作兵衛さんに対する思い出から「お気に入りの絵」へと及びました。
鉄道好きの朱さんは作兵衛さんに描いてもらったという自慢の一点、「九州鉄道 筑豊線 発車五分前」を紹介されました。とはいえ、機関車よりも駅員を中心に描いた絵に、当時の朱さんは内心がっかりされたとのこと。しかし、後に、作兵衛さんは人間を描いていたのだ、ということに気がついたそうで、「もし、機関車の絵を描いてくれと頼んでいたら、石炭をボイラーに入れて燃やす機関助士の絵を描いていたのではないか」という言葉に、観客もまた爆笑。
そして井上さんは鉄道の発展により船頭の仕事を失い炭鉱夫となった山本家のルーツを描いた「鉄道と川船船頭」を、緒方さんは坑内の光の表現に着目されながら、珍しい青い光が印象的な「明治筑豊バラスラ」「立掘り 先山後山」の二点の作品を挙げて下さいました。
作兵衛さんに近しい存在の方々が絵についての思いを語って下さるだけで、絵の見え方がまったく変わってくるのが面白いところです。

また、会場から作兵衛さんの「座右の銘」について質問された緒方さんは、座右の銘はないけれどもと前置きしつつ、墨絵「ボタ山」の裏側に記された作兵衛さん自身の文章を紹介されました。

ボタ山よ
汝人生の如し
盛んなるときは肥え太り
ヤマやんで日々痩せ細り、
或いは姿を消すもあり
あーあ哀れ悲しき
かぎりなり


どうしても世界記憶遺産という肩書きに注目の集まりがちな作兵衛さんですが、今回のトークでつくづく感じたのは、“世界記憶遺産に選ばれた画家”という以前に、一人の炭鉱夫であり、長年の労働を通じてたくわえていった豊穣な哲学や世界観が、彼の作品世界を深いところで支えていたのだ、ということでした。

朱さんは、広島に丸木位里・俊という二人の画家がいたように、あるいは水俣に石牟礼道子がいたように、よくぞ筑豊に、その土地で生まれ育って働いた山本作兵衛があらわれた……とおっしゃっていましたが、等身大の無名の人びとに焦点を当てて、社会に翻弄されながらも生きようとする人間のエネルギーを描いたという点で、丸木夫妻の残した「原爆の図」と山本作兵衛の「炭鉱記録画」は、実はとても近しいものだったのではないか、とも感じました。

皆さんが口々におっしゃっていた、「作兵衛さんはたくさんの人に絵を見てもらって、炭鉱のことを知ってもらいたいと思っていた」という言葉を聞くにつけ、この美術館に作兵衛作品を展示できたことのよろこびを、つくづく噛みしめる一日でした。

   *   *   *

「炭坑展」のイベントは、まだまだ続きます。
今後の情報をお知らせいたします。

●「入山採炭ほかスケッチブック」公開作品調査−「入山採炭アルバム」と大宮昇「入山採炭ほかスケッチブック」・『炭山画譜』・『石炭を生む山』をめぐって」
8月20日(火) 午後2時〜3時30分
ゲスト:大宮真弓(大宮昇ご子息・同志社大学生命医科学部教授)+萩原義弘 (写真家)
聞き手:杉浦友治(いわき市立美術館)、正木基 (本展企画委員)、岡村幸宣(原爆の図丸木美術館)
美術家・大宮昇氏が1935年、いわきに長期滞在し、入山採炭の内外を仔細に描いた120点のスケッチブック4冊が、展覧会オープ ン直前に新発見されました。一人の美術家が、これほど炭坑取材のスケッチを残した事例はなく、また、その丁寧な描写によって記録性の高さも注目されるものとなっています。このたび、その全容をあきらかにすべく、本作品群に関心を持つ学芸員の方々と、120点一点一点を鑑賞調査する 「公開作品調査」を行うことにいたしました。つきましては、ご子息の大宮真弓氏、常磐炭田を撮り続けている写真家・萩原義弘氏にご同席いただき、作品一点一点へのコメントや感想をお聞きしながら、参加者全員での意見交換も図ります。
尚、このスケッチブックは、展覧会中、アクリルの覗きケース中に収められているため、全点を鑑賞するただ一度の機会となります。

●特別ギャラリーツアー
8月29日(木) 午後1時〜午後4時半 特別ゲスト:中込潤(直方谷尾美術館学芸員)
直方市の直方谷尾美術館で、筑豊の炭坑絵師たちの調査・研究もされている中込潤学芸員が、会場で、本展企画委員の正木基(casa de cuba 主宰)とともに、筑豊の炭坑絵師たちを中心に自由にお話ししています。

●今野勉氏と炭鉱表現を語る
9月4日(水) 14時〜15時30分 
特別ゲスト:今野勉(演出家、脚本家、テレビマンユニオン取締役)+正木基(本展企画委委員)
お育ちになった夕張市登川炭鉱についてのお話、炭鉱の民話を取り上げたNHKスペシャル「地の底への精霊歌 炭鉱に民話の生まれる時.」の裏話、山本作兵衛翁などの作品、本展覧会の感想などについて、今野勉氏と本展画委員並びにご来場の皆様との「公開語らい」を行います。
【略歴】
秋田県生まれ、北海道夕張市登川炭鉱に高校まで在住。1959年(昭和34年)TBS入社。1970年(昭和45年)に日本初の独立系テレビ番組制作会社・テレビマンユニオン創立。1998年(平成10年)には長野オリンピックの開会式・閉会式のプロデューサー。
TV作品:
1965〜68年 シリーズドラマ「七人の刑事」(TBS、40本) 放送作家協会演出者賞
1970〜76年 ドキュメンタリー「遠くへ行きたい」(YTV、44本) ギャラクシー選奨
1993年 ドキュメンタリー・NHKスペシャル「地の底への精霊歌」 ギャラクシー選奨
1995年 ドキュメンタリードラマ・NHKスペシャル「こころの王国〜童謡詩人金子みすゞの世界」(NHK)芸術選奨文部大臣賞
2008年 日中戦争秘話 ふたつの祖国をもつ女諜報員「鄭蘋如(てんぴんるう)の実像」(YTV)民間放送連盟賞優秀番組賞
等多数
著作:
『お前はただの現在にすぎない-テレビになにが可能か』 (荻元晴彦・村木良彦との共著、2008年、朝日文庫)
『テレビの青春』 (NTT出版、2009年)
等多数。

●トム・アレンツ(TOM ARENTS)氏と炭鉱を語り合う
9月8日(日) 午後2時〜3時30分
ベルギーから来日されるトム・アレンツ氏と会場を歩きながら、ベルギーやヨーロッパの炭鉱について、日本の炭鉱を訪ねた印象などのほ か、本展の炭鉱表現を見た印象などをお聞きし、また、ご来館の皆様と炭坑と炭坑美術について語り合います。
【トム・アレンツ氏略歴】
1984年ベルギー生まれ(28歳)。2012年リューバン・カトリック大学日本学科修士課程卒業。修士時にベルギーのケンペン炭田と空知の石狩炭田の比較研究、現在は日本の石狩炭田と筑豊炭田の比較研究中。
国際産炭地ネットワーク・産炭地プロジェクト NPO法人Het Verlog/COALFACE メンバー
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