2013/2/16

水戸芸術館「高嶺格のクールジャパン」展  他館企画など

水戸芸術館「高嶺格のクールジャパン」展に、会期終了間際の駆け込みで行ってきました。

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高嶺さんは、1968年生まれの現代美術家、演出家。これまで、アメリカの帝国主義や在日外国人問題などを主題にした表現活動を行ってきた作家です。
今回の「クールジャパン」というタイトルは、もちろん、日本政府の海外への文化発信の標語を皮肉ったもの。そしてテーマは、原発を容認してきた日本社会の歴史と3.11後の状況です。
企画は水戸芸術館主任学芸員の高橋瑞木さん。彼女は2009年にも「Beuys in Japan:ボイスがいた8日間」を企画されていて、凄い仕事をされるなあと感心します。

展覧会は、8つのテーマに分かれていました。
クールジャパンの部屋(何不自由ない「飽食の時代」を描いた壁画)
敗訴の部屋(市民の反原発運動に対する敗訴の歴史を新聞見出しで展示)
標語の部屋(道徳観や社会倫理を込めた五七五のリズムの標語が電光掲示で次々と流れる)
ガマンの部屋(男女の「ガマンしなさい」という声が繰り返し響き、日本人の“美徳”を表わす)
自由な発言の部屋(3.11後に流布したネット上の口汚い発言の数々が撒き散らされた空間)
ジャパン・シンドロームの部屋(山口、関西、水戸の3地域で商店などに繰り出し、放射能汚染の懸念を尋ねた取材結果を演劇で再現した映像展示)
核・家族の部屋(世界の核実験の年譜とともに、作家自身の家族写真を重ねて並べた展示)
トランジットの部屋(脱ぎ捨てられた服が床に散らばる空間に、ビートルズの「Let It Be」などの曲が流れ、未来への希望が託される)

それぞれの部屋には、ロダンの《考える人》を引用したような、現代のさまざまな職種・年齢の日本人の塑像が配置されていました。
それらの塑像は、思索しているようでもあり、硬直化した現実をじっと耐えているようでもあり、現実を見ないふりをしているようでもあります。

この日は、高嶺さん自身の作家トークがあったのですが、興味深かったのは、高橋学芸員が紹介されたこの展覧会への来館者の反応。
もちろん、展覧会を高く評価する声もある一方で、「芸術に政治的メッセージが入ったことで安っぽい展示になった」、「芸術ではなくプロパガンダ」という否定的な感想もあったそうです。
このあたりは、ちょっと丸木夫妻の《原爆の図》に対する反応にも似ている気がします。
「芸術は世俗を離れた高尚で純粋なもの」という、芸術至上主義のような考え方によるのでしょうか。それとも、単に原発政策に批判的な内容の表現が気にいらない、という方もいるのでしょう。

そうした来場者の声、批判的な展評も含めて、この展覧会は、いまの日本社会の現実をさらし出したと言えるのかも知れません。いろいろと考えさせられる企画でした。
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