2011/12/10

Chim↑Pom展「LEVEL 7 feat. 広島!!!!」  特別企画

若手芸術家集団Chim↑Pomによる「LEVEL 7 feat. 広島!!!!」展が、いよいよ丸木美術館ではじまりました。
(12月18日まで、最終日午後1時よりトークイベントあり)

丸木美術館としては異例の午後5時オープニング。
前日から徹夜で(私も付き合いましたが)展示作業を続けていた彼らは、最後の最後まで仕上げにこだわり、午後5時きっかりに展示終了、同時に開場となりました。

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美術館の入り口には、彼らが用意した展覧会用のバナーが展示されています。
事故で大破した福島原発3号機の建屋にレッドカードを提示する建設作業員の写真。
実は、今回の展覧会の資金捻出のために福島原発事故現場でアルバイトをしたChim↑Pomのメンバーの一人が、作業の合間にこっそりセルフタイマーで撮影したものだそうです。
ちなみに、今回の展覧会は「supported by 東京電力」というコンセプトになっています。

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Chim↑Pom展の最初の展示室には、福島第一原発から30km地域周辺の植物を除染して制作した生け花作品《被曝花ハーモニー》が中央に展示されています。
Chim↑Pomとフラワーアーティスト柿崎順一さんとのコラボレーションです。

その背後、右側に見えるのが、《LEVEL7 feat.『明日の神話』》。
渋谷駅にある岡本太郎の巨大壁画《明日の神話》にChim↑Pomが追加した福島第一原発の爆発の絵です。実際に壁に掲示した絵は渋谷警察署に押収されたままだそうですが、展示している作品はその予備ヴァ―ジョン。映像作品と合わせて展示されています。

背後の左側に見えるのは、放射線の検出によって封鎖された福島の砂場に作った“サンドアート”を撮影した《Destiny Child》。子ども用防護服と防護メガネにスプレーのりを吹きつけ、砂をまぶして、砂場で遊ぶ子どもの姿を制作しています。

この展示室には、他にも被災地で拾った額に、被爆者団体代表の坪井直氏による《Never Give Up》の題字や被災地で出会った犬や牛の写真が飾られた作品が並んでいます。

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2つめの展示室には、福島県相馬市で出会った地元の若者たちとChim↑Pomのメンバーによる映像作品《気合い100連発》、そして原発事故からちょうど1ヵ月後に防護服を着て福島第一原発内展望台の登頂を目指す様子を収録した映像作品《REAL TIMES》が投影されています。展望台を登りきった彼らは、煙を噴き上げる原発を目撃し、白旗にスプレーで日章旗を描くと見せかけて放射能マークを描き、展望台に掲げます。

また、その防護服とガスマスクをカカシにして福島第一原発に最も近い畑に設置した写真作品《Without say GOOD BYE》も展示されています。

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最後の大展示室に展示されているのは、等身大の八羽の鶴の模型のまわりに折鶴を飾った《リアル千羽鶴》(写真左)と、広島の原爆の残り火「平和の火」を用いた絵画シリーズ《平和の日》(写真右)。
《平和の日》は、スーパーマーケットで集めたさまざまなデザインイメージを、高所から投げ込んだ一発の火によって焼き上げるというコンセプトの作品です。
11月30日夜に、丸木美術館近くの都幾川河川敷で燃やしたのは、この作品だったのです。
http://fine.ap.teacup.com/maruki-g/1766.html
こちらも映像作品とともに展示されています。

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《リアル千羽鶴》と反対側の壁には、広島の原爆ドームの上空に飛行機雲で「ピカッ」の文字を描く映像作品《広島の空をピカッとさせる》が投影されています。
Chim↑Pomが丸木美術館で個展を開催することになったきっかけともいえる作品です。

   *   *   *

こうした展示のスケール感は実際の会場でぜひ体験して頂きたいと思います。
オープニングに足を運んで下さった埼玉県内の某美術館の学芸員さんは、「今まで彼らのことをメディア情報の先入観でしか見ていなかったけれども、現代美術家として“凄い”と今日初めて知った。ひさびさの興奮を味わった」と絶賛して下さいました。
実は私も、この1週間ほどChim↑Pomと関わりながら、彼らの芸術に対する真摯な姿勢に、ずっと心を打たれていました。

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オープニングの際、あるTV局(この日はメディアの取材が非常に多く、中にはスイスのTV局の姿もありました)のインタビューに応えていた彼らを見ていて、「何を作るかは会議で決める。1人がやりたいんじゃなくて、6人全員がやりたいと思ったときに動き出す」という趣旨の発言に興味を惹かれました。
リーダーの卯城くんの説明によれば、「6人全員が良いと思うようなアイディアか、あるいは1人のアイディアでも他のメンバーに『やろう!』と思わせるような力がなければ、社会に通用する作品にはならない」というのです。
唯一の女性メンバーであるエリイちゃんは「6人いればもう社会だからね」という示唆に富んだ発言をしていました。

そうした言葉を聞きながら、ふと丸木夫妻の共同制作を思い出しました。
丸木夫妻も、おそらく1人で原爆に対峙していたら、《原爆の図》のような奥行きの深い作品にはならなかったでしょう。2人の異なる個性を持った画家の共同制作だったからこそ、個人の思想や好みに偏らずに、無数の被爆者の記憶の受けとめる作品が描けたのです。
共同制作だからこそ(個人の内面表現ではなく)社会に向かって開かれていくというのは、案外見逃してはならない重要な問題のような気がします。

両者に違いがあるとすれば、丸木夫妻は独立した2人の画家同士の共同制作であるのに対し、Chim↑Pomはバンドのような存在であるということでしょうか。
理論的支柱のリーダーが存在して、華のあるヴォーカルがいる。そしてイメージを具現化できる凄い演奏技術を持ったメンバーもそろっている。なんだかそんなイメージです。

もちろん、丸木夫妻が「傷つけられた人の痛み」を一貫して見つめながら制作していたのに対し、Chim↑Pomは「ちょっと真面目、でもちょっとふざけてる」という軽やかな毒とユーモアによる“Chim↑Pomらしさ”にこだわっている点は大きく違います。
しかし、それはそれぞれが背負っている時代の違いでもあるのでしょう。

Chim↑Pomはこれからも賛否両論を巻き起こしながら、人びとの心をさまざまな意味で揺さぶり続け、世界的に活躍の場を広げていくのだと思います。
個人的には、いつか彼らは、21世紀初頭の日本を代表する重要な芸術集団として、歴史に位置づけられるような気がしてなりません。
そのとき、「彼らが初めて美術館で個展をやったのは、原爆の図丸木美術館だった」と記憶してもらえるとしたら、担当した学芸員としてはとても嬉しいです。

   *   *   *

この日は午後6時半から、音楽プロデューサーの小林武史さんがゲストとして登場し、Chim↑Pomの作品《ピースが壊れた》(一説には《建屋が壊れた》ではないかとも……)のなかで素晴しいライヴ演奏をして下さいました。

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天井には仮設スクリーンが設置され、Chim↑Pomの制作による映像が投影されて、光と音の鮮やかなコラボレーションとなりました。

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参加者は約120名。冬の夜という悪条件にもかかわらず、丸木美術館としてはとても画期的な試みに大勢の方が足を運んでくださいました。
お世話になった皆さまに、心から御礼を申し上げます。
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