2010/12/21

映画『ANPO』トークショー  館外展・関連企画

午後7時から渋谷アップリンクで開かれた映画『ANPO』上映&トークショーに行ってきました。

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ANPO
2010年 上映時間89分 日本
監督・プロデューサー=リンダ・ホーグランド 撮影=山崎裕
編集=スコット・バージェス 音楽=武石聡、永井晶子 歴史監査=ジョン・ダワー
配給・宣伝=アップリンク

出演・作品=会田誠、朝倉摂、池田龍雄、石内都、石川真生、嬉野京子、風間サチコ、桂川寛、加藤登紀子、串田和美、東松照明、冨沢幸男、中村宏、比嘉豊光、細江英公、山城知佳子、横尾忠則
出演=佐喜眞加代子、ティム・ワイナー、半藤一利、保阪正康
作品のみ=阿部合成、石井茂雄、井上長三郎、市村司、長濱治、長野重一、浜田知明、濱谷浩、林忠彦、丸木位里、丸木俊、森熊猛、山下菊二


この映画は、黒沢明や宮崎駿、深作欣二、大島渚、是枝裕和、西川美和らの映画200本以上の英語字幕を制作した日本生まれの米国人リンダ・ホーグランドが、60年安保を知る芸術家の証言や作品を通して、日本と米国の関係を問い直すドキュメンタリーです。

中村宏や池田龍雄、桂川寛、山下菊二らの絵画や石内都、東松照明、濱谷浩の写真など、紹介される作品からあふれるパワーは、とにかく圧倒的。
ナレーションはなし、字幕は固有名詞のみという硬質な作りで、コラージュのように次々と証言や作品を重ねあわせながら、1960年6月の安保闘争が日本にとって政治と文化の分岐点になったという事実を映し出していきます。

   *   *   *

映画上映の後は、リンダ・ホ―グランド監督と西川美和監督のトークショーが行われました。
西川監督は自分と同世代ということもあって以前から注目しており、昨年『ディア・ドクター』が川越スカラ座で上映されたときにはトークショーの司会を務めさせて頂きました。
とても知的で鋭い視線を持ちあわせた方なので、今回のトークショーでは、ホーグランド監督からどんな話を引き出してくれるのか期待していました。
その期待にたがわず、ホーグランド監督の映画への思いが聴き手に伝わる、興味深いトークショーだったように思います。

印象に残ったのは、宣教師の子どもとして日本に生まれ、日本人の学校に通ったホーグランド監督が、小学校4年生のときに初めて学校で原爆について学んだという体験でした。
「戦勝国の子どもが敗戦国の教育を受ける」という特殊な状況。
その体験は彼女の内面にひそかな傷を作り、人生を大きく変える決め手となったそうです。

やがて映画の仕事に携わるようになったホーグランド監督は、あるとき、今村昌平監督が1959年に『にあんちゃん』という貧しいながらも希望に満ちた作品を撮影したにもかかわらず、1961年には『豚と軍艦』というニヒリズムに満ちた作品に大きく転換したことに気づきます。気づいてみると、他の映画監督も1960年を境にトーンが変わっている。
この現象は何なのか、1960年に何があったのか……と調べていくうちに、たどり着いた先が安保闘争の深い影だったというわけです。

ホーグランド監督にとって、日米安保の抱える矛盾は、まさに自らの内面にひそむ傷と重なるものだったことでしょう。
やがて彼女は、特殊な生い立ちから生じる独特の視点……どちらでもなく両方を知るという立場からしか見えないものを、世に投げかける責任があると考え、『ANPO』の制作に取り組みはじめたといいます。
『ANPO』を撮り続けるうちに、彼女は次第に広島に対する負い目が消えていったと語りました。

映画のラストシーン。
基地のある町・横須賀で育った石内都さんが、故郷を歩きながら、「傷ついたままじゃ嫌だった」とつぶやく印象的なシーンがあります。
まさにその言葉こそ、ホーグランド監督の気持ちに重なるものだったのでしょう。
自分のまわりがおかしいと思ったとき、何かを変えたいときに、「今のままじゃ嫌だ」という気持ちを持つことは、一番大事なステップで、誰にでもできる、とホーグランド監督は語ります。
そしてその気持ちは、本当の芸術家の制作の根源でもあるというのです。

『ANPO』に紹介された画家たちの作品の、大地からわきあがるような深いパワーを感じるとき、そして、現代の社会や芸術の抱える理由の見えない閉塞感を考えるとき、このホーグランド監督の映画は、鋭い問いかけを私たちに投げかけてくれるような気がします。
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