2010/11/20

平川恒太展トークショー1日目  特別企画

丸木美術館2階アートスペースで平川恒太個展「The Neverending Story」が開幕しました。

初日のこの日は、午後1時から楠見清さん、木村覚さんをゲストにお迎えして、トークショーが行われました。

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トークショーのはじめに平川くんは、「《原爆の図》は小さい頃に観ていたが、うろ覚えで、今回あらためて観て、表現者として“負けた”とショックを受けた。絵のとなりに花が捧げられていて、“絵画を超えた存在”だと感じた。羨ましいというか、脅威という感情を覚えた」と語っていました。
彼は現在、東京のギャラリーと契約し、アーティストとして第一線で活躍しているのですが、一方で、絵画がモノとして扱われ、テーマや内容への議論が深まっていかないアート・マーケットへの不満があり、アートは“自己表現”という言葉に甘えて消費・生産するだけなのか……と無力感を抱いていたとのこと。そんなときに沖縄を旅行し、ひめゆり平和記念資料館を訪れたことで、戦争や平和をテーマにした作品に取り組みたいと考えるようになったそうです。
この彼の強い思いと行動力が、今回の丸木美術館アートスペースでの個展やトークショーにつながったわけです。
もちろん丸木美術館にとっても、こうした若い世代からの刺激はありがたいものでした。

トークショーでは、木村さんが「広島―美術 美術が広島に向き合う仕方と広島が美術を求める仕方」、楠見さんが「いのちときもちをかたちにする 戦争と平和のために芸術ができること」と題してそれぞれの視点から語り、その後、短い時間でしたがクロストークが行われました。もう少し時間が長くて、会場の参加者からの声なども交えて深めることができれば、とも思いましたが、2人の話はとても興味深く感じられました。

とりわけ、2人とも、1974年にNHK広島放送局が呼びかけて寄せられた「市民が描いた原爆の絵」について触れていたことが印象的でした。
この市民の絵の多くは広島市の平和データベースでご覧になることができます。
http://a-bombdb2.pcf.city.hiroshima.jp/PDB/PDB060index.jsp

木村さんは「被災者の絵画は、他の広島を扱った高名な作家たちの作品より素晴しいと感じた」と語り、楠見さんはその発言を受けて、「美術史を背負った絵画Paintingと、人類の表現形態Pictureの可能性の違いではないか」と指摘しました。

以下は、トークの際に配布された木村さんの資料からの引用です。

 この絵画は、自ずとイデオロギーから自由でいようとしている。当時なにが起きていたのかという事実を伝えるために、その事実にだけ向き合っているのが見る者に伝わる。その事実だけに向き合うというのは、まず、被災者=当事者の特権的な行為である。とはいえ、単に他の人には立つことが出来ないその立場に彼らは安住してはいない。彼らの目的がはっきりしていることは重要だろう。悲惨さのイメージを伝えることも、自分の苦しい思いを理解して欲しいと思うこととも、明らかに異なる「あのときなにが起こっていたのか」を伝えようとする意志は、自ずと、見る者の心を揺さぶろうとか、記憶(というよりもイメージとしての「広島の記憶」)を反省させようとかいった目的から、描くものを自由にさせるのだろう。

《原爆の図》と「市民が描いた原爆の絵」は、8月6日を直接体験していない芸術家の描いた芸術作品の代表例と、直接体験した一般市民の描いた素朴な絵画群として、近年しばしば比較されています。トークを聞きながら、「市民が描いた原爆の絵」の受容のされ方の問題点について、小沢節子氏が次のように論じていたことを思い出しました。

 第一に、これらの絵「だけ」が「本当の」原爆体験の表象だという規範が知らず知らずのうちに形成され、他の表現を排除しかねないことへの危惧。第二に、またそれ故に、「本当の体験だけが与え得る感動」が最初から想定されてしまうことへの懸念。第三に、印刷物やパソコン画面を通して「画像」へのアクセスが容易になりイメージが拡散する一方で、三千点を越す個別の表現が絵画として論じられないことへの疑問。いずれも「原爆の絵」という一般的な呼称のもとで、これらの絵画が(誤解を招きかねない表現ではあるが)「特権化」され、画一化、均質化されて受け止められかねないことへの不安である。もちろん、「受容のされ方」と断ったように、問題の所在は、「本当の体験」を容易に入手して心を動かされたいという受け手の側にこそあるといえよう。
(花書院『原爆文学研究8』 p.179)

時間的にも空間的にも遠く隔てられた地点から「戦争」への想像力を広げる表現の可能性を探る平川くんの展覧会に、こうした体験/非体験と表現をめぐる問題は非常に重要な意味を持つようにも思います。
ともあれ、もう少し深めて考えていきたい問題です。

   *   *   *

午後3時からはオープニングレセプション。
平川くんのお母さんがバーベキューなどの料理を用意してくれて、参加者皆さんで和やかに食事をしながら懇談しました。

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この日の様子は、トークショーのゲストの木村覚さんや現代美術家の彦坂尚嘉さんがブログで報告して下さっています。
木村さんのブログ→http://blog.goo.ne.jp/kmr-sato/e/dcda9dc97552b612254a863f4e682a4b
彦坂さんのブログ→http://hikosaka3.blog.so-net.ne.jp/2010-11-21-1
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