2010/7/30

【福岡出張1日目】福岡アジア美術館/火野葦平資料館/長谷川潾二郎展  調査・旅行・出張

原爆文学研究会で発表を行うため、飛行機に乗って福岡へ。
午前中、まずは中洲川端駅近くにある福岡アジア美術館を訪れました。
アジアの近現代美術を系統的に収集・展示する世界で唯一の美術館として知られる、福岡の地にふさわしい美術館です。

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アジア各地の雑貨なども扱った魅力的なミュージアムショップのほか、アジアカフェ、彫刻ラウンジ、キッズコーナー、情報コーナーなど設備も充実。アジア各国の芸術家を日本に呼んで制作などを行うレジデンス活動にも力を入れているようです。
現在開催中の企画展は「おいでよ!絵本ミュージアム2010」という子どもを対象にした展覧会。
所蔵品展示のアジアギャラリーでは、「あじびのりもの大図鑑」と「わっしょい!〜アジアの祭りめぐり」という2つの特集企画が行われていました。
「あびじのりもの大図鑑」では、アジア各地の乗り物が描かれた絵画とともに、バングラデシュの《リキシャ》(絵=サイード・アハメッド、車体製作=アリ・メカール)が会場中央に展示されていました。実際に車に乗って写真撮影もできるのですが、美術館はふつうは撮影禁止なので、カメラをロッカーに入れてしまったのは残念でした。
「アジアの祭りめぐり」に展示された雑多でパワフルな作品群も面白く、ラオス初のアニメーション作品というカンハ・シクナウォンの《カンパとピーノイ(小さな精霊)》の素朴な物語も楽しめました。

   *   *   *

その後、北九州市へ移動して、若松市民会館内にある火野葦平資料館へ。

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実は5月に神戸で行われた「われらの詩」研究会の際に、参加者のS氏から火野葦平資料館に丸木スマの猫の絵が所蔵されているという情報を教えて頂いていたのです。
資料館は、ボランティアによって維持管理されている小さな展示施設。復元された書斎のほか、原稿、書簡、日記、従軍手帳など遺品が数多く展示されています。
火野葦平は1938年に『糞尿譚』で芥川賞を受賞、『花と龍』などの代表作で知られる小説家。ペシャワール会の中村哲医師の叔父にあたるそうです。

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復元された書斎の展示のなかに、「書斎にかけられていた愛蔵の絵」というキャプションでスマの絵がありました。

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1954年に大塔書店から刊行された『丸木スマ画集』には《クーちゃん》の題で収録されている作品で、今まで所在が不明だったのです。
資料館の方々の協力を得て絵を撮影した後、近くにある火野葦平の旧居・河伯洞を訪問。

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葦平の三男の玉井史太郎さんに案内されてお話を伺いました。
史太郎さんによれば、スマ画集刊行時に葦平が推薦文を寄せたという回想が残されているとのこと。
1957年に刊行された『河童曼荼羅』(四季社)にある以下の文章がそれです。

この本のために、私は諸先輩に奇妙奇天烈なお願ひをした。四十三篇をそれぞれ異つた人たちのカツパ・カツトで飾りたかつたからである。これまで一度もカツパをかいたことのない人たちが多かつたにちがひないし、多分、私の依頼は突飛で變てこな無理難題であつたであらう。それにもかかはらず、承諾して下さつた方々が次々にカツパのカツトを寄せられ、私を狂喜させた。特に、つけ加へておきたいのは、お婆さん畫家丸木スマさんのカツパが入つたことである。八十数歳で繪をかきはじめた丸木さんは私をおどろかせたが、畫集が出版されるとき、私はすすんで推薦文を書いた。すると、よろこんだスマさんが、火野さんはカツパ好きだからといつて、生まれてはじめてといふカツパの繪を彩色入りでかいて下さつた。ところが、そのスマさんは、気の毒なことに、まもなく不慮の死を遂げたので、カツパの繪が形見みたいになつてしまつた。

ちなみに、スマが描いたカッパのカットはこちら。

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葦平が書いたという推薦文を読んでみたいものですが、どのように使われたのかは不明です。
当時の丸木夫妻と葦平とのあいだに交流があったのか(史太郎さんの話では、葦平は丸木夫妻の絵は好きではなかっただろうとのこと)、なぜスマの猫の絵が葦平のもとにわたったのかもわかりません。
それでも、河童の絵を数点残しているスマが、葦平との関わりによって河童に興味を持ったという話にはとても興味を惹かれました。

   *   *   *

その後は下関へ移動し、長府の下関市立美術館へ。
平塚市立美術館で見逃した「長谷川潾二郎展」が巡回中と知り、閉館前に駆けこみました。
故針生館長の最後のTV出演は、NHK日曜美術館の長谷川潾二郎特集だったのです。

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一見素朴な写実表現でありながら、深い精神性を感じさせる幻想的で静謐な絵画。
現代画廊の洲之内徹に見出されるまで生涯のほとんどを無名で過ごしたそうですが、これほどの画家がいるのかと、あらためて心を打たれる思いがしました。
出張のおかげで思いもよらずに貴重な展覧会を見ることができ、心満たされて福岡のホテルに向かいました。
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