2009/12/4

1952年美唄炭鉱「総合原爆展」  1950年代原爆の図展調査

先日、目黒区美術館の「‘文化’資源としての〈炭鉱〉展」を訪れた際、M学芸員から一枚の写真を見せて頂きました。

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雪の積もる建物の玄関先で、2人の青年に引率されて並ぶ30数人の子どもたち。入口扉には「綜合原……」という貼り紙も見えます。
この写真は、今回の炭鉱展に出品されている《習作 人民裁判事件記録画》(1950年、193.9×130.3cm、油彩・キャンバス、美唄市教育委員会蔵)を共同制作した三菱美唄美術サークルのメンバーの一員、平山康勝さんが所蔵されているもの(三菱美唄美術サークルについては、ジャスティン・ジェスティー氏が「炭鉱展」図録に興味深い文章を寄せています)。1950年代に美唄炭鉱で開催されたという「綜合原爆展」の貴重な証拠写真です。
平山さんの証言によれば、三菱美唄美術サークルの活動の一環として、絵画教室の子どもたちを原爆展に連れてきたときの写真で、2人の青年のうち、向かって左側に写っているのが平山さん。右側はサークルのメンバーの一人・鷲見(わしみ)哲彦さんだそうです。偶然のようですが、鷲見さんは現在も丸木美術館の「反核反戦展」に毎年出品して下さっている画家さんです。

《原爆の図》の展覧会は、当時「原爆展」と呼ばれることが多く、1951年7月の京都大学同学会の主催による大規模な展覧会では、医学、物理、化学、政治、経済などの多角的な視点から原爆に関する展示物が制作され、初めて「綜合原爆展」という名称が使われました。
この展覧会はその後の「原爆展」の基盤となり、同年11月の札幌展も、北海道大学の学生が京都展に倣うかたちで多角的な原爆資料を展示し「綜合原爆展」として行いました。
1951年11月の札幌「綜合原爆展」については、以前にも紹介しています。

http://fine.ap.teacup.com/maruki-g/949.html

丸木俊さんが自伝で回想している北海道の「原爆展」は、室蘭、旭川、秩父別、札幌、函館の5会場(最初に予定していた岩見沢は手違いで中止)ですが、翌1952年2月に釧路に巡回していたこともわかっています。

http://fine.ap.teacup.com/maruki-g/1140.html

しかし、美唄炭鉱で「原爆展」が行われたことは初めて知りました。
「綜合原爆展」という名称から、おそらくは札幌展の展示が巡回してきたものと思われます。
その後、美唄市教育委員会委員長S氏のご協力により、会場が新築の三菱美唄労働組合本部2階大会議室であったこと、地元の常盤中学校、沼東中学校の生徒が見学に行っていたことなどが判りました。さらに、美唄市議会議員Y氏が沼東小学校6年生のときに展覧会を見に行った記憶があるとのことで、S氏が沼東小学校の沿革史をたどったところ、「雑」記録の1952年1月28日に「原爆展見学」という小さな記述が一行だけ出てきたそうです。

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1枚の写真をきっかけに、埋もれていた原爆展の記憶と記録がつながってくるのは本当に感動的です。

   *   *   *

現在判明している1951年から52年にかけての《原爆の図》北海道巡回展の足取りを、ここで少し整理してみます。

@11月?日−?日 室蘭(会場不明、俊の回想によれば3日間で6,000人来場)
A11月?日−?日 旭川(会場不明、俊の回想によれば木造3階デパートの床が抜けそうなほど来場者あり)
B11月10日−12日 秩父別(俊の生家・善性寺にて3日間で3,000人来場、最終日には原爆死者追悼法要を行う)
C11月20日−21日 札幌(北大文化団体連合会主催「綜合原爆展」、丸井百貨店5階と富貴堂2階にて開催、北大中央講堂に会場を移して24日まで延長)
D11月28日−12月2日 函館(北大水産学部・学芸大函館分校自治会主催、棒二森屋百貨店2階にて開催)
E1月28日−?日 美唄(三菱美唄労働組合文化部主催、三菱美唄労働組合本部2階にて開催)
F2月24日−26日 釧路(日本平和推進国民会議釧路地区主催、釧路市立労働会館にて開催)


俊さんの回想のなかに、函館までの5会場しか登場していないのは、おそらく函館展を終えた後に、丸木夫妻が《原爆の図》を残して帰京したからではないかと推測されます。
その後は《原爆の図》などの展示物だけが道内各地を巡回したと思われますが、美唄や釧路のように“埋もれている”「原爆展」は、ほかにもまだあるのではないでしょうか。
今後も継続して調査を進めていきたいと思います。
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