2009/7/18

NHKアーカイブス「被爆体験を語り継ぐ」  館外展・関連企画

沖縄アトミックサンシャイン展のシンポジウムや、H館長と語る会などのいくつかのイベントが重なってしまったこの日、埼玉県川口市のNHKアーカイブスで行われた講演会「被爆体験を語り継ぐ 〜アメリカの若者たちと対話〜」に参加しました。

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出演者は、長崎での被爆体験を書き続けている小説家の林京子さんと、アメリカの大学で原爆表現を教えているダンスアーティストの尾竹永子さん。

はじめに話をされたのは林京子さん。
林さんは、長崎高女在学中の14歳のとき、三菱兵器製作所に動員されて長崎の原爆を体験されました。
その記憶を30年後に小説『祭りの場』として発表し、芥川賞を受賞されています。
今回のお話は、長崎被爆の様子を丁寧に繰り返され、それは『祭りの場』の内容と非常によく似ているように感じたのですが、林さんは「わたしは記憶のなかにある事実を話すので、作品を読まれた方は同じことを言っていると思われるかも知れません。それでも私は同じ話をすることに意味があるのだと思うので、繰り返します」とおっしゃっていました。
「324人の同級生のうち、9月末までに52人が死にました。3人の先生のうち、2人は即死し、1人は郊外に出かけていたのですが生徒を探して爆心地に行き、9月7日に原爆症で死にました。3人とも30歳前後の独身の先生でした。有名な人の死は歴史に残るけれど、彼女たちの死は残らない。彼女たちがこうして生きて死んでいった証を残したいというのが、私が8月9日を書き続ける理由のひとつです」と語る林さん。
1988年にはアメリカに行き、ニューヨークの大学で被爆体験の話をされたそうです。
後遺症の恐怖に苦しみながら生きる林さんに「それでも生きていてよかったか。これから世界はどうなると思うか」と学生から質問があり、林さんは「生きていてよかったと即答できます。これから世界がどうなるかはわかりませんが、私は人間を信じます。いまここにいるあなたたちを信じます」と答えたとのこと。アメリカの学生も青い目を真っ赤にしながら話を聞いていたそうです。

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続いてお話をされた尾竹永子さんは、土方巽のカンパニー出身で、ダンス・デュオ「Eiko & Koma」としてアメリカで20年以上活動されている方。アメリカでは非常に評価が高く、1996年にマッカーサー賞を受賞するなど数々の賞に選ばれています。
尾竹さんは、みずから舞踊活動を行う一方、アメリカの大学で「原爆と表現」を教えているそうです。峠三吉や原民喜、大田洋子、林京子などの文学、初期の黒澤明や新藤兼人らの映画、丸木夫妻の絵画などを学生といっしょに見て、その感動、心の動きをレポートにまとめさせ、最後にそれぞれの「表現」に結実させるという授業です。
とはいえ、学生は理工系や人文系の、これまで表現とは無縁だったという人ばかり。それでも彼女は、時間をかけて内容を深めれば良いものが生まれてくる、と真摯に指導をされているのでしょう。原爆写真をコラージュして作り上げた“MANGA”や、一人では描けないけど……と恋人との共同制作で描いた絵画、家族全員で大量虐殺に巻き込まれたことを想像して撮影した写真など、非常に興味深い作品が数多くありました。
ぼくの心に残ったのは、たくさんの友人にひとつかみの粘土を握ってもらい、それを環状に並べたという学生の作品。一見、リチャード・ロングの現代美術のような印象を受けるのですが、自分の握った粘土を集団のなかから見つけ出すという行為が、黒焦げとなって寝かされた被爆者の肉親を探す行為につながるという深い内容のものでした。

林さんの作品を読んだインドネシアの女子学生の感想を、尾竹さんがお送りしたことから交流がはじまったというお二人。もの静かな林さんと活発な尾竹さんという対照的な性格のお二人が本質的なところで共鳴し合い、互いの仕事を尊敬されている様子がとても良く伝わってきて、心に残る講演でした。

   *   *   *

講演のあと、林さんと尾竹さんにご挨拶し(尾竹さんは以前に丸木美術館に来て下さったことがありました。林さんはもちろん、俊さんと対談をされています)、そのままアーカイブスの建物の1階にある居酒屋へごいっしょしました。NHKアーカイブスの企画者Iさんや国際交流基金のMさん、尾竹さんの学生やお弟子さんを交えて、とても楽しい時間を過ごすことができました。

◆NHKアーカイブスでは、8月30日まで原爆の図1/4パネル《虹》と《からす》が貸出展示されています。こちらもぜひご覧ください。
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