2008/8/9

埼玉近美/安藤栄作さんワークショップ  館外展・関連企画

埼玉県立近代美術館で好評開催中の「丸木スマ展」。
今回、特別出品をして下さっている彫刻家の安藤栄作さんのワークショップとギャラリートークに参加しました。

間伐材や建物の廃材といった人間社会で不要とされた木に、手斧で叩くように刻みを入れていく安藤さんの作品。今回は、スマの《母猫》に触発されたという同名の作品をはじめ、《うさぎ》《かめ》《がま》《かに?》《牛道雲》《オレンジイロの神様》など、ユニークな動物のかたちをした木彫が、展示室の床にならんでいます。
使われている木は、ヒノキ、ナラ、イチョウ、プラタナス、カヤなどいろいろです。

   *   *   *

夏休みということもあり、およそ100人の親子連れが集まったワークショップ。粘土で動物のかたちを作って、それを展示会場にならべるのです。大人も子どもも夢中になって粘土をこねる様子を、安藤さんは楽しそうにニコニコしながら眺めていました。ときどき、恐竜や馬などの動物を粘土でひょいひょいと作っては机に置いていくので、そのたびに安藤さんのまわりに人だかりができます。簡単にひねっているようで、今にも動き出しそうな躍動感のある見事な作品。安藤さんは、少年のころ、いつもポケットに粘土をしのばせて、暇を見ては動物や恐竜のかたちを作っていたそうなのです。

あっという間に時間が過ぎて、粘土遊びを堪能した後は、会場に移動して安藤さんのトークがはじまりました。
第一声は「スマさんの絵は、今日皆さんが粘土で作った動物と同じです」。
つまり、自分が動物になりきって手を動かす、ということ。うまく描けるかどうかではなく、スマは自分自身としてネコやイヌを描いた、というのが安藤さんの見方です。
お気に入りの作品は、最晩年の傑作《簪(かんざし)》。
スマが今までに描いたすべてのいのちが、ひとつの画面のなかにぎっしり詰まり、みな一律に存在している。これは、私たちが生きるこの世界そのものだ、と安藤さんは言うのです。
それをずいぶん長いこと忘れてきたのが今の人間の営みだけど、しかし、いのちというのはそういうもので、この世界には余白なんてない。全部がくっついて、つながっている。スマはそういうふうに世界を見ている。国と国との間にも余白やラインなんてないし、あなたと私の間にも本当はラインがない。これからの人類や世界のあり方を、スマの絵から考えさせられる、という安藤さんの話を聞いているうちに、何だか胸が熱くなってきました。

東京藝術大学を卒業した安藤さんは、大学院の試験に落ち、彫刻を辞めようと思ったほど悩んだそうです。しかし、自分がいま彫刻を辞めても、世界じゅうの誰も、そのことを知らないだろう、それならとことん彫刻をやってみようと決意し、その後は、材木屋で選ばれた木を買うのをやめて、海や山の近くに住み、人から捨てられた木に再びいのちをよみがえらせるような作品を作るようになります。ねじれや曲がりが激しかったり、固い節があったり、木目が入り組んでいたり、計画通りに制作できないことも多いそうですが、そうした素材の“欠点”を抱え、受け入れながら、安藤さんは制作をしています。
人間だって同じ、どんな欠点や問題があっても、この世に存在する意味は必ずある、と安藤さんは言いました。

トークの途中、「彫刻をさわってもいいよ」と言われて、嬉しそうに手を伸ばし、やがて抱え込むようにその触感を楽しんでいた大勢の子どもたちの姿も、忘れられない光景になりました。
一見素朴に見えながら、しかし、細部まで丁寧な作業を施されている安藤さんの木彫。
作家さん本人の人間性とともに、とても心を惹かれました。
0




※投稿されたコメントは管理人の承認後反映されます。

コメントを書く


名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL




teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ