「芸術や音楽は、人間の魂の最も深い表現であり、また、私たちが暮らす世界を直接映し出すものです。どんな人でも芸術家として生まれついていて、芸術は地球上の誰とでも共有できるものだと思っています。」
上記、昨年4月、引退を表明して最後のN響とのベートーヴェンの協奏曲演奏後のマリア・ジョアン・アレシャンドレ・バルボーサ・ピレシュ(Maria João Alexandre Barbosa Piresのコメントです。演奏も人間的にも、とても足元にも及ばない私ですが、実は私も漠然と、このように考えていました。
芸術って、音楽、絵画など、それを特別の人が表現して、一般の人がそれを聴いたり観賞して自分の心の中にある芸術性を呼び覚ます、、 だけど、その芸術というものは、普通の人の心の中にある。芸術は特別なものではなくて、普段の生活の中にもあるのではないかしら、、 たとえ楽器が弾けなくても、その心があれば芸術家。そして、その芸術性は心の中の共感を呼ぶ、、 だからカザルスは言われたのよね、
「音楽は世界を救うであろう」
でも、この素晴らしい演奏をされるPiresが、前述の4日前、リサイタルでコメントをされた。
つまるところ、ピアノ自体が、私が引退する主な原因です。私はこれまで、決してピアノ ("him" と表現) とよい関係を築けたためしがありません。いや、もちろん、引退には複数の要因があります。自分自身のためにもっと時間が必要だし、コンサート活動に追われることのない人生も欲しい。でもやはり、ピアノという楽器自体が、決して私になじもうとはしてくれなかったことが、最大の理由なのです。
マリア・ジョアン・アレシャンドレ・バルボーサ・ピレシュ 1944年ポルトガル生