団塊のあなたへ:/6
藤島寿子さん /和歌山
◇何もしないで後悔するより、笑顔で健康生きがいづくり−−フラダンスリーダー藤島寿子さん(59)=和歌山市
和歌山市内のフラダンス教室。ゆったりとしたメロディーに合わせ、「健康生きがいづくり一座」のフラダンスリーダー、藤島寿子さん(59)=和歌山市=がステップを踏む。一座は県内の老人ホームなどを慰問するボランティアグループ。5年前、藤島さんが仲間たちと立ち上げた。
高松市出身の藤島さんは、高校卒業後、地元企業に就職。71年に同僚の澄衛さんと結婚した。澄衛さんの転勤を機に退職し、専業主婦に。子ども2人の家族4人で、84年、和歌山市に来た。親せきも知人もおらず、不安の中で生活をスタートした。
その直後、澄衛さんを病が襲う。1年間の看病もむなしく、42歳で息を引き取った。「このまま離れると、和歌山を嫌いになってしまう」。そう考えていた時、澄衛さんが勤めていた住宅会社から誘われ、40歳で入社。和歌山に住む決意を固めた。
生活が安定してきた10年後のある日、出勤すると、上司から一枚の紙を渡された。リストラの候補者に、自分の名前が並んでいた。「仕事以外で、私に何ができるのか」。リストラは免れたが、自分が退職後の生活をまったく描けないことに気付いた。
そのころ、趣味や経験などを生かし、中高年の生きがいづくりを支援する「健康生きがいづくりアドバイザー」という資格を知った。「何もしないで後悔するよりはまし」。すぐに大阪での研修に参加し、資格を取得。02年、アドバイザー仲間と一座を設立した。
踊りや腹話術などの趣味を持つメンバーが集まり、「ふれあい」をテーマに月に1回活動。藤島さんは6年前に始めたフラダンスを披露している。「ありがとう。また来てね」。慰問先で子どもや老人から贈られる言葉が、今、何よりのエネルギーになる。
今年、定年を迎える。早期退職の勧めもあったが、きっぱりと断った。「父親がいない分、定年まで働いた親の背中を子どもたちに見せるのが私の務め」。定年後も、何か仕事を続けるつもりだ。童話の執筆や介護服のデザインなど、趣味でもやりたいことは尽きない。「人として、女性として、いろんな色を持ちたい。一度きりの人生、笑顔で楽しまないともったいない」【清水有香】(次回は10日に掲載予定)
毎日新聞 2007年1月7日

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