アメリカのある山道に24時間営業しているセルフサービスのガソリンスタンドがある。そこで恐ろしい殺人事件がおきた。
その日の深夜、そのガソリンスタンドにある女子大学生が初めて仕事しに来ていた。
そのガソリンスタンドは、防弾ガラス越しに客と手続きを済まし、ボックスに入れてお金の支払いなどのやり取りをする。バイトの人は、ボタンでスタンドを操作するという仕事であり、操作室の建物の中にいて、客とは一切接触することはない。だから女子にもできるバイトであった。
彼女は、そのバイト中は試験勉強をしつつ、朝になったら友達が車で迎えに来てくれることになっていた。仕事と勉強と遊びを両立するためにも彼女は多少怖い気もするがこのバイトを選んだ。
バイトの手はずを手短に説明したあと支店長は、「初めてのバイトで、君をおいていくのは少し心許ないね。最近ここらへんでは、連続の殺人事件がおきているからね。またわからないことがあったらここに電話しなさい。いつでも私は大丈夫だから。」、と言って、電話番号が書かれた紙をテーブルの上に置く。
彼女は「ありがとうございます。大丈夫です。この建物の中にいれば。私試験勉強をしなければなりませんし、怖くもありません。」
「じぁ、お疲れ。がんばってね。」といって支店長は出て行った。
ここは山の中腹であり、しかも深夜ということもあってほとんど客は来ない。この日も客は数えるほどしかこなかった。
一人目 中年の男。深夜ということもあって向こうはいやらしく彼女を口説いてくる。彼女は緊張しながらもそれをかわしながら手続きをすましていく。男は、未練を残しながらしぶしぶその場を去っていく。
二人目 中年のダンディーな男。彼はとても紳士的な態度であり、容姿は非常に彼女のタイプだ。彼女は少ない会話を交わしただけでも少しいい気分になった。
しかし、彼は支払いのときの使ったキャッシュカードを忘れてしまう。彼女はあわてて外に飛び出したが、車はそのまま行ってしまった。そのとき彼女はこの操作室が、オートロックになっており、自分が鍵を持たずに出てきたことに気がつく。
一瞬パニック状態に陥ったそのとき、背後から「トイレを貸してほしいのだが、鍵が閉まっている」と声をかけられた。
驚いて後ろを振り返ると、非常に気味の悪い浮浪者が立っている。「きゃぁっ」と悲鳴を上げそうになるが何とか気持ちを抑え、修理場のほうにある建物から、操作室のスペアキーを取りに行く。浮浪者は、それをじっと見ている。彼女はその目線を感じとっていた。
支店長のデスクの中から操作室のスペアキーを取り出し、操作室からトイレの鍵をボックスの中にいれ、それを外にいる浮浪者に渡した。「終わったら鍵をこちらに持ってきてください」と焦った様子で告げる。
三人目 オープンカーに乗った中年のカップル。二人とも酒を飲んでいるようで異常に上機嫌である。二人はこれから性交を交わすことは間違いない。
男はレギュラーを注文したついでにトイレを貸してほしいと頼んできた。
彼女はもう外に出たくなかったため、男に「だいぶ前に浮浪者の男が、トイレに入ったきり戻ってこないの、だからトイレは開いていると思うんだけれど見に行ってくれないかしら。」
男はそれを快諾する。その間客の女が、ガソリンの入れ方がわからないから教えてほしいといってきた。彼女は外に出て操作方法を教える。
そうしている間に男が戻ってくる。
浮浪者は便所の中で眠っていると言っている。鍵はだからドアつけっぱなしにしてきたよ、と言って金を支払い去っていった。
彼女はしょうがなく、また操作室を出てトイレを確認してくることにした。トイレに行ってみると、ドアには鍵がついたままだった。トイレの中に入ると浮浪者はいなかった。壁には猥褻な言葉が書いてあり、彼女はそれを読んだ瞬間身震いを起こす。それを見て逃げ出すようにしてトイレから出てきた彼女は、走って操作室の中に戻ろうとする。
その時、突然修理場のほうから機械が動く音が聞こえた。彼女は恐る恐る修理場のほうに行き様子を確認する。どうも動いたのは、修理中の車のようだ。
そして、車の中を見るとさっきの浮浪者が死体なっていることに気がつく。
彼女は悲鳴をあげ、一目散で操作室に戻る。彼女は泣きそうになって、さっき支店長に渡された電話番号に焦りながらも電話をかける。
すると、向こうから気持ち悪い男の声が聞こえた。しかし、その声は間違いなく支店長の声だった。「○○○は、ただいま外出しておりま〜す。ピィィ」
次の瞬間、電話が切られた。彼女は意味がわからないまま、彼女は瞬時に警察に電話をかける。が、窓からは修理場のほうから斧を持った支店長がこちらにやってくるのが見える。
彼女はパニック状態に陥り言葉にならない。うまく警察に告げることができない。その間に支店長はこちらに来て、防弾ガラスに斧を振りかざし始めた。彼女は腰が抜けてしまいその場に倒れこむ。支店長はなんという力の持ち主か防弾ガラスに亀裂が入る。
彼女は悲鳴を上げながらなんとか後ろにあるロッカールームに逃げ込もうとする。支店長は完全に防弾ガラスを粉々に割って、笑いながらゆっくりと部屋の中に入ってくる。
彼女は部屋に入り、ロッカーにぶつかった瞬間、ここのガソリンスタンドの制服を着た男に死体が、ロッカーから飛び出してくる。その瞬間ドアを斧でぶち破り支店長が中に入ってくる。彼女は泣き叫びながら、ロッカーを倒して支店長を押しつぶす。支店長は倒れこむ。彼女はそのすきに外に逃げ出す。
外に出て彼女は少し安堵するが、血だらけになった支店長はゆっくりと起き上がり、外に出てくる。彼女はそれに全く気がつく様子がない。
支店長はまた斧を握り、口元に笑みを浮かべ、足を引きずりながら、彼女のほうに歩いてくる。
彼女は助けを呼ぼうにも、届くはずもなく、とにかくここで朝を過ごすしかないのかと途方にくれている。
支店長に全く気がつかない様子の彼女にむかって斧を振り上げ、近づいてた瞬間彼女は彼の気配に気がつき、叫んで修理場へと逃げてゆく。
彼女は意を決して、浮浪者の死体が入っている車のなかに乗り込みエンジンをかけようとする。車は鈍い音を上げるが、エンジンはなかなかかからない。彼女はいらだち、発狂寸前の叫びをあげる。
支店長はこちらにやってくる。車を発車させることができず、車はクレーンらしきもので上に上げられてしまう。ドアを開けられ、引きづりおろされる。首をつかまれた彼女はすでにもうなすすべもない。薄ら笑いを浮かべた支店長に殺されかかるその瞬間、誰から支店長の肩をつかみ殴り飛ばした。見てみればそれは、二人目の男がキャッシュカードを忘れたことに気がつき戻ってきたのだということがわかる。彼女は喜びのあまり抱きつく。男も安心させるために抱きしめる。
その間にまた、支店長は起き上がってくる。危機一髪のところで、男が支店長を殴り倒し、その瞬間に彼女はクレーンであげていた車を下ろすことによって、支店長を下敷きにして殺してしまう。
二人はそれを確認し、もう一度抱擁する。外は知らぬ間に薄明かりの朝を迎えている。
これはどこかで見た、タイトルも思い出すことのできない30分くらいのホラー映画である。しかも大体はこんなストーリだった気がするが、正確であるというわけではない。
このホラー映画、映像は構図主義に徹底され、光も美しい。エドワードホッパーのような典型的なアメリカの風景を使って、限定された要素から、非常にたくみに恐怖の状況を描き出していた映画であった。
この内容に少しでも興味がわいたのなら、今年の夏、ホラー映画を見てみるのも悪くないのではないだろうか。