「フェリーニのローマ」を観た。
ある意味でこれは傑作と言ってもおかしくない作品なのだと思う。けれどもどこか退屈さを感じるところがある。それはわかりやすい直線的なストーリーがないからではない。
スペクタクルとカリカチュアが非常に徹底されている。これはフェリーニしかできない偉業といえる。しかし同時にこの映画では、ショット、モンタージュ、音声といった構造が全くと言っていいほど面白く活かされていない。(さすがにいくつかの場面であったけれど。)
つまりこういうことだ。この「フェリーニのローマ」は、セット、アイデア、テーマ、モデル探しなどの撮影の前段階の準備が誰よりも徹底されている。しかし、撮影に入ると映画をとても凡庸に作ってしまった。
結果見えてきたことは、確かにこれはおもしろい作品だ。しかし映画的な刺激が欠けている。
けれどもこれは、必ずしも悪いこととは言えない。フェリーニが多くの映画監督を触発し、もしくは影響されていることからしてもよくわかるはずだ。できている部分とできていない部分がはっきりとしているからだ。「フェリーニのローマ」的な作品の代表格は、「スターウォーズ」といったところか。
もちろん映画というメディアに付き合っていれば面白い作品が作れるわけではないと僕は思う。映画は、メディアがすべてではない。しかし、だからといって映画というメディアが持っている諸問題に対する問題意識が抜け落ちてしまったとき、どこか作品が徒労感を覚えさせるのかもしれない。
作品であることと、映画であることは必ずしも一致するものではないかもしれない。これはほかのメディアでも同じことと言えるはずだ。
