2日目。
岡ちゃんと二人、ミッテ地区を中心にギャラリーをまわる。やる気な僕らは午前中に動きだし、もちろんまだどこも開いていない。まずは下見ですよね、場所の。INDEXを片手にまわってるのだが、通ってるはずなのに、半分もギャラリーが見つからない、少々嫌な予感。このINDEX、日本でいうfavoriteみたいなもんで選りすぐりを集めたギャラリーマップくさい、なのに70近くもある、しかもそんなギャラリーマップが何種類かあるらしい。気が遠くなる。とりあえずいただいたINDEXが2月までのものだったので今月のをゲットすべく、日本人作家を中心に扱っているMURATA&FRENDSを目指してみる。場所わかりにくっ。加藤泉さんの個展をちょうどやってました。で、本格的にまわりはじめる。なんかこの辺ではですね、「ホ−フ」と呼ばれる中庭を囲うように店鋪を構えるのが流行っているんでしょうか、一見なんもなさそうで、ちっちゃい看板をたよりに中庭に入り込み迷路みたいにうろつくと、あ、あった、みたいにギャラリーがありまして、なんか違うゲームみたいでした。そうそう、以前の食糧ビルみたいなイメージかな、中庭って。それがいっぱいみたいな。そんで純粋にみつかんなかったり、展示替えで閉まってたり、アポイントがないと入れなかったり、かなり苦戦しました。が、マップに記載されてないところもたくさんあり、途中から手当りしだいに観たので量は結構観られました。
とても大雑把な印象としては、勝手に先入観としてベルリンに不安定で、実験的なイメージを強く持っていたんだけど、それはもう何年か前のことらしく、コマーシャル的土壌が整備されてきてるようで、ペインティングが多いなあ、ってのがまず一つ。スペースが素敵、旧東ベルリン、ほんとに家賃が安いらしいです、リノベーション上手なんだなあ、と感心。作品の質として、ピンキリ。あんま変わらんなあ、どこも(日本と)、ってのが正直な感想。もちろんいいものはよくて、よくないのはよくない、比率として変わらないなと。ただ売れる比率がきっと日本だと1:9とかなのがきっと3:7とか4:6くらいあったりするのかなと想像してみました。ちょいと足を伸ばして、タへレスという、ベルリンでのアーティストの建物不法占拠のはしりのようなとこも覗いてみました。ちょうどオープンスタジオの日らしく中に入ってみました。グラフィティが激しくすごく、いかにも、というおもしろ物件でしたが、内容としてはとても微妙。観光地として割り切ってみるには楽しいかもしれません。僕ら慣れてきたのか徐々にギャラリーを見つける嗅覚があがってきて、陽が落ちるころには百発百中で狙ったギャラリ−が見つかるようになりました、すごいね。でもわりと観れたといっても、最後に行ったGagosianは間に合わず閉まってたり、あとベルリンビエンナーレがすぐに控えてたのでKunst-Werkeはじめビエンナーレ会場になるスペースは準備で一切みられなかったみたいで、まあ、印象ってことで。夕飯は語学留学でベルリン在住のアジと。次の日、一緒にまわることに。
3日目。
タワーの根元集合。目の前の教会が修復中のため、マキオ作品制作のため絵はがきを探す。やはりある。まずはグッゲンハイム。ここまで観光には全く目を向けずにきたが、なんか観光スポットが集中した通りを散歩、なかなかいいもんでした。グッゲンハイムを過ぎて議事堂の方まで足を伸ばしてみる。帰りにうれしい発見。Vonderbankという、リヒタ−やらポルケやらドイツ巨匠をずらりと揃えたギャラリーに遭遇。アジが一番驚いてた。グッゲンハイムはピカソ展!とアジが言うので三人でピカソ、ピカソ、と浮かれ気分で入場。なんか数字がずらりと並んだ作品、ほほう、ピカソがこんなコンセプチャルな作品も作っていたのか、と感心して観ていると、展覧会名のところに「オマージュ」って書いてあったらしく、もちろんピカソなわけもなく、なんかおバカ丸出しの三人組で、この辺からテンションが上がってきました。次に行ったのが「壁」。オストの駅からすぐに2,3キロくらい壁が残ってるところがあり散歩。ずるい。すごい。落書きやらペイントやら、カッコよかったりださかったり。どんな作品よりもよかったし、ぞくぞくした、だって本物なんだもん、しょうがないよね。絶対行った方がよいスポットでした。地味に小ネタ的パフォーマンスをこっそりやってみた。この後、INDEXに記載されてるミッテ地区からちょっと離れた2エリアをまわる。Jannowitzbruckeの駅近くの高架下にいくつかギャラリーが連なっていて、どこもスペースも作品もとてもよく、見ごたえあり。Friedrichstr.の駅からしばし歩いた辺りにあるコンプレックス、7,8軒くらいあったかな。これまた見ごたえ十分。特によかったのがArndt&PartnerというギャラリーでやっていたJules de Balincourtの展覧会。このギャラリーは杉戸洋さんや落合多武さんも扱ってるみたいでした。この展覧会、なんだろう、繊細で味もあるタッチで、よくある流行りの雰囲気のペインティングなんだけど、抜群にうまい、てかカッコイイ。一枚一枚もよかったんだけど、テキストを熟読したわけじゃないんで曖昧ではあるんだけど、ある設定、物語を前提として展覧会を構成するインスタレーションになっているくさい、たぶん。その一枚一枚と全体との見え方のゆるやかなバランスが心地よくて、ここ2日間のベスト展覧会でした。NYのギャラリーが発行した、薄めのカタログを買わなかったことをとても後悔してます、やっぱ出会いですね、探してみます。夜はユース近くのベトナム料理屋で三人で一杯ひっかける。僕ら料理の多さに日々やられていたので、この日は三人で二人前を注文、予想通りの量にしめしめと思っていると、店長が貧乏なアジア人の若者三人が一杯のかけそば的シチュエーションだと思ったんでしょうね、マンガでみるような皿に山盛りな米をサービスで持ってきてくれました。いや、無理だって、罰ゲームみたいだったけど、もちろん笑顔で完食しました。おっさん、ありがと。
4日目。
ぐったりだったので、のんびりすることに。アジにすすめられベルガモン博物館に。個人的にホントに行ってよかった。壁とここが最高によかったです。ほんとに建物の中に遺跡があるんです。あきれるくらい大きいの。時間があまりなかったので博物館とか、古いのは今回はもういいかな、などと思い始めていたのでうれしい誤算でした。現代美術の作品を観るのと違って、なんっというか、純粋にインスピレーションが湧くというか、ネタになるというか、よかったなあ、ほんとに。そのあと蚤の市をちょこちょこのぞく。夕方、作家の増山士郎さんに案内してもらい、アーティスト・イン・レジデンスの施設として知られるベタニエンを訪ねる。もともと病院だった建物らしく、とても素敵なのだが、夜一人でトイレに行くのはちょっと怖いかんじでもあった。僕はレジデンスのイメージが強かったんだけど、美術館とレジデンスとはっきり2つの部署に別れて運営されているらしく、美術館で企画展がやっていたのに加えて、レジデンスの方でも常時滞在作家の発表するため、広いスペースが3部屋ほど確保されており、そちらも展覧会をやっており、そうとうなボリュームの展覧会が観られました。あと、前にコマーシャル化からペインティングが多いと書いてたんだけど、ここはインスタレーションやらゆるいのやら、広い幅の作品が観られて、特に僕はバランスがとれたというか、そうそう、こういうの観たかった、てかんじがありよかった。現在、ベタニエンに滞在している開発好明さんのスタジオにもお邪魔させてもらう。これまたすてきなかんじで、そのあと増山さん、開発さんやらと夕食をご一緒させてもらいました。いろいろ考えさせられるよい夜でした。