今ムサビの芸術文化学科の授業で、松井みどり氏が講議をしている単位があります。
授業の流れとしては、グリンバーグ以降の現代美術を中心にして行われています。
グリンバーグと抽象表現主義からアンディー・ウォーホル、シュチュエーショニスト(状況主義)、フルクサスマで授業は進んできています。ちなみに最後は90年代の美術についての授業まで行くそうです。
今日の授業は、フルクサスに大きな影響力を与えたジョン・ケイジという音楽家をとりあげていました。
ジョン・ケイジは、1912年ロサンゼルスに生まれ、アノルド・シェーンベルグに師事され、『4分33秒』という作品は誰しもが知っていると思いますが、現代音楽で最もメジャーな作曲家だと思います。
シェーンベルグの不協和音の流れと、鈴木大拙などとの出合いによって、禅の影響や東洋思想の影響もうけ、またハーバード大学での無音室のでの体験(無音室に入り、自分の神経組織が動いている音(高音)と自分の血液が体内を循環している音(低音)を聞いた)から、様々な物のノイズを音楽として構成したり、また、パーフォマンスに近い形のコンサートを開いています。
彼は美術家たちとも親交があります。ハロルド・ローゼンバーグ(アクションペインティングの名付け親)、ロバート・マザーウェルなどのグリンバーグとは違ったところから抽象表現主義を考えていた人と親しく、Possibilitesという雑誌を発行(一号のみ)しています。
ところで、この授業の後半では、ジョン・ケージのビデオ作品を見ていたのですが、これが非常に面白いのです。
物を叩くと音が出る。人が遠くに行くと声が小さくなる。物によって音の質が全く違う。この様々な当たり前な現実が、映像共に、音が奏でられると非常にわくわくするエキサイティングな映像になっている。またそのシステムと偶然性の機能のさせ方は、それを視覚によって認識しないと、単なるノイズとしてしか理解できないかも知れないと思います。
その映像は非常に唯物的な表現なのですが、ミステリアスで、クレイジー。これを映画としてみても、かなり面白いものだと考える事ができます。
しかし、アンディー・ウォーホルにしてもそうですが、当時のアメリカはともてもミステリアスで、クレイジー魅力的だった事が良くわかります。
また、これがすごく広い工場みたいなところ(PolaXの政治的に過激な集団が音楽を奏でていたあの工場みたいな基地を想像してもらいたい)で演奏されるものだから、コンサートホールとは違うにしてもかなり雰囲気が出ていたことは間違いないでしょう。
特に、ジョン・ケージがジョイスの『フィネガンの宵祭』について、文章を書く事を求められ、そこに出てくるMesosticsという言葉の再構成を23組作った事により、そこから朗読と作曲に繋がった作品は必見です。これは現代音楽の白石氏の授業でも、流していたので見た人はいると思いますが。
ジョン・ケージの発想は、フルクサスや、ブルースナウマン、パフォーマンス、ハプニングなどのアートの分野における人々に多大なる影響を与えています。興味のある人は、CDを買う前に、ジョン・ケージのビデオをお勧めします。