「誘惑のシネマ 究極のSEXシーン」(2003)
このDVDを雑誌で有名な『PLAY BOY』が作っています。タイトルからして飛ばしているなぁと思われるかも知れませんが、話は性表現を巡る映画史です。映画の創世記から「メリーに首ったけ」まで、映画の性表現と社会的な関係の歴史的変遷を映像化したそれなりに有意義な企画。映画史ということもあってさまざまな映画が紹介されます。ちなみにエッチな作りを期待すると、はずれかも。ネットのレヴューでも怒っている人がいました。しかし、これは男女問わず見られる作りになっています。
またこのようなものは書物などでもカルチュラルスタディーなどとして出版されていますが、当時の映像などを伴って行われるので、また違った吸収があるはずです。
ただ、もちろん『PLAY BOY』が作っているので、すべての性表現に対して完全に肯定的な立場から語られていますし、あくまで一側面の歴史意識としてみなければいけないものです(ここまで超ポジティブに言われると痛快でしたが)。

Garry Winogrand
ハリウッド映画のような莫大な資本やさまざまな契約のもとで成り立っている映画は、社会的な条件や関心にかなり左右されているところがあります。ここでは語られませんが、性の問題に限らず、共産主義的な意識を持っているとみなされた人間を徹底的に取り締まる悪名高き「赤狩り」は映画の歴史に深い亀裂を作り出しました。ある社会学者が、現在の映画は弁護士によって作られているようなものだと言ったりしているそうですが、監督やプロデューサーなどはそういった規定や制約との戦いの中でさまざまな手段を用いて映画を作ってきています。
そして「誘惑のシネマ 究極のSEXシーン」では、時代順に映画とその生み出されたは背景について紹介されていきます。共和党政治家ウィル・ヘイズなどが中心に打ち立てた「ヘイズ・コード」(映画の倫理規定)や、第二次世界大戦の影響とフィルムノワールの関係について(アメリカ国内の多くの男女が戦争によって長い間離れて生活していたことにより、戦後の男女の関係が変わった。ある意味で女性の自立が促されたと同時に、その離別が男女の間に不信感を作り出した。その時のひとつのリアリティとしてフィルムノワールの女性像が作られている。)について。
また60年代後半から70年代にでてきた人権問題、宗教、人種問題、ジェンダー、セクシャリティなどの関心から芽生えた新しい表現。

Nan Goldin
80年代から始まるエイズの猛威によって、70年代の性の解放から一転し、保守層から映像表現にもまた規制がかかるようになります。(エイズ以降の規定によりアメリカ映画では独特の性と暴力の関係が生まれていったという事実や、性表現の抑圧から生まれたスターローンやシュワルツネッガーなどのマッチョブームなどが出てくる。)
他にも映画の資本の問題つまり低予算映画の登場や、ヨーロッパ映画とアメリカ映画の違いなどなどの多くの社会的な要因が映画にいかに反映していたか、もしくはそういった強制からいかにして映画が自由になろうとしたかの変遷を大雑把にですが知ることができます。
レンタルビデオ屋によってはAVコーナーに置いてあるとネットで書いてあったので、見られない人もいるかと思いますが、なかなかお勧めのDVD作品です。
※添付している画像と映画は関係がありません。