関東の私鉄・バス会社の共通IC(集積回路)カード乗車券「PASMO(パスモ)」が3月18日から運用開始され、同時にJR東日本のICカード「Suica(スイカ)」との相互利用が始まる。
ところが、JR線と他社路線を乗り継ぐ区間の一部では、これらカードで改札を通ると、通常の運賃よりも割高な金額が引き落とされる。JR東日本は、こうした「二重運賃」について注意を呼びかけ始めた。
問題が生じるのは、JR線から他の私鉄や地下鉄、その後またJR線に乗り継ぎをする場合の一部区間。
例えば、JR中央線三鷹駅から総武線津田沼駅まで向かう際、途中の中野―西船橋駅間に東京メトロ東西線を経由した場合、三鷹―津田沼の運賃は、乗車券では590円となる。
ところが、三鷹駅をカードで入場し、津田沼駅で下車すると、乗り継ぎ駅で改札口を通らない限り全区間JRに乗ったとみなし、その運賃780円が下車時にカードから引き落とされる。190円高くつく。
ほかに北千住―西日暮里(東京メトロ千代田線)、渋谷―武蔵小杉(東京急行電鉄東横線)、新宿―登戸(小田急電鉄小田原線)の3区間を挟んで、各区間の前後にJR線に乗る場合も、カード利用の方が割高になることがある。JRがあげた事例では、この3区間で140〜30円高くなる。
いずれの区間にも乗り継ぎ割引運賃が設定されている。ところが、カードで入退場した場合はその割引が適用されない。
JR東日本は「こうした問題は、1年以上前から認識している。私鉄各社と共同で検討してきたが、改札にカードをかざすだけで瞬時に運賃を引き落とすような現行のシステムに、こうした複雑な運賃体系のすべてを対応させるのは、時間的にも技術的にも間に合わなかった」と話す。割引を受けたい場合は、あらかじめ自動券売機で乗車券を購入するよう勧める。
同社は昨年末、運賃の計算方法を説明したポスターや小冊子を作製、乗客へ注意を呼びかけている。
レイルウェイライターの種村直樹さんは「割引のためにわざわざ切符を買うのでは、首都圏の鉄道やバスがカード1枚で乗りこなせるという便利さが損なわれてしまう」と話している。
(2007年1月31日14時32分 読売新聞)