ここのところ厳しい寒さが続いていたが、立春のきょうは暦どおりの穏やかな春本番の陽気となった。外出にも厚手のコートを脱いで、カーディガンで十分。頬を撫でる寒気もむしろ心地がよいほどだった。
今日のギターレッスンでは、中谷先生から現代スペインギター最高峰の製作家パウリノ・ベルナベ(1932〜2007)のギターを「弾いてみますか?」といわれ、一度は畏れ多いからと遠慮したものの、すぐさま千載一遇の好機と思い直し、厚かましくも試奏させて頂いた。
ベルナベはスペインの名工で、かの有名なホセ・ラミレスV世の門下生。 「禁じられた遊び」奏者の第一人者ナルシソ・イエペス考案の10弦ギターを手掛たのがパウリノ・ベルナベである。
先生の勧めで、その「禁じられた遊び」の一節を試奏した。
我が愛器と比べて歴然とした違いは、ド素人の私にも容易に分かる。豊潤で甘美、そして音量が豊かなために力むことなく楽〜に弾ける。特に高音の抜け良くまろやかなニュアンスが心地よい響きを湛える。
よく「弘法筆を選ばず」などというが、これは弘法大師ならではのことであり、逆に弘法ほどの技量のない者こそ素晴しい筆(楽器)を選ぶべきだと痛感した。
余談ながら、一説には、「達人というのは道具の選択においてもずば抜けた目利きであるから、迷ったりはしない」という意味だとしたり、「名人は勿論最高の道具を持ってるんだから、道具選びなんかしないのだ」という説もあるようだ。
先生は「早期に良いギターと巡り合い、早く慣れることが上達への近道」と仰るのだが、値段が我が愛車同等と聞いて腰が引けた。
お言葉に甘えてもう1台別の名器で「アルハンブラの思い出」の出出しを試奏させて頂いたのだが、こちらは初めて耳にするメーカーであり、これまたベルナベの4掛けほどの値段と聞き溜息だけが漏れた。どうせ今の私には「猫に小判」、「豚に真珠」となるのオチと言い聞かせ、ここではいさぎよく諦めた。

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