2016/9/25

NHK「ちきゅうラジオ」原爆の図が60年ぶりにドイツへ  TV・ラジオ放送

2016年9月25日のNHKのラジオ番組「ちきゅうラジオ」の「ちきゅうズームアップ」のコーナーに、「原爆の図が60年ぶりにドイツへ」というテーマで、ドイツ・ミュンヘンの美術館ハウス・デア・クンストから電話出演しました。
出演は、ちょうど《原爆の図》を開梱して、休憩時間に入ったタイミングでした。
約12分間の放送の内容を、以下に抄録でお伝えします。

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柿沼郭キャスター 「ちきゅうズームアップ」です。
芸術の秋。今日は、ドイツ・ミュンヘンで来月から開催される美術展の話題を紹介します。この美術展は、第二次世界大戦後の世界の様々な分野の変化をテーマにしたもので、世界中から350点以上の作品が集まります。
日本からは、《原爆の図》が展示されることになりました。ここであらためて《原爆の図》を紹介します。《原爆の図》とは、広島出身の水墨画家・丸木位里と油彩画家の丸木俊夫妻が原爆投下後の広島の惨状を描いた絵画作品です。キノコ雲や原爆ドームなどの背景ではなく、人間の生身の肉体そのものの痛みを生々しく描いて原爆の恐ろしさを表現しています。全部で15部作あって、1950年から1982年まで、32年かけて制作されました。作品は、縦1.8m×横7.2mの大きさの屏風で、和紙の画面に水墨を用いて描かれています。今回はその中から2つの作品が展示されます。

柴原紅キャスター 今日は、美術展の準備で、ミュンヘンに行っている原爆の図丸木美術館学芸員の岡村幸宣さんと電話がつながっています。日本との時差はマイナス7時間、現地は午前11時半を過ぎたところです。岡村さん、こんにちは!

岡村 こんにちは!

柴原 さっそくですが、今回の美術展は、どんな美術展なんですか?

岡村 来月から始まる美術展は「Postwar: Art Between the Pacific and the Atlantic, 1945–1965」。第二次大戦後の20年というのは、東西冷戦など政治体制が大きく変わり、経済のシステムや科学技術、世界全体の見方が私たちの生きる現在に近づいてくる重要な時期です。その20年のあいだに生まれた芸術作品で、時代の意味を捉え直そうという、とても重要な企画展です。50カ国から180人の芸術家、350点の作品が集まる大展覧会です。

柿沼 準備の様子はどうですか?

岡村 会場になっているのは、ミュンヘンのハウス・デア・クンストという美術館です。日本語に訳すと芸術の家なんですけれども、実は1930年代に、ヒトラーの強い後押しで建てられたという歴史を持っています。古代ギリシャのパルテノン神殿のように正面に柱が並んでいる、大きく立派な美術館です。当時は「大ドイツ芸術展」などナチスが公認した芸術の宣伝のような展覧会が開かれていましたが、そうした複雑な過去を持つ場所で「戦後」をとらえなおす美術展が開かれるのも興味深いところですね。
今、ちょうど《原爆の図》の展示作業が行われているところです。日本から運んできた木箱を開いて、作品の点検をしていて、作業員は休憩時間になっています。これから壁に上下二段掛けで《原爆の図》を展示する予定です。

柴原 今回展示されるのは、どんな作品ですか?

岡村 第2部《火》と第6部《原子野》が展示されます。《火》は、原爆が爆発した瞬間、6000度に到達したとも言われる炎に焼かれて悶える人びとの群像です。炎の朱色がひと際鮮やかな、躍動的な作品です。
一方、《原子野》は、焼け野原になった広島の街の静寂を、墨を何度も重ねてモノトーンで表現しています。炎と闇、動と静の対比が特徴的な展示になります。

柴原 ミュンヘンの美術館の方の受け止められ方はどうですか?

岡村 今は展示でみんなピリピリしているので、「この絵を見て、どう思う?」と聞いても、「うん、これは軽いから展示は大丈夫だ」と、展示の技術的な問題についての答えが返ってきてしまうんです。でも昨日、美術館のスタッフに聞いてみたところ、「戦後の美術を考える上で、《原爆の図》は外せない作品だ」と言われました。

柿沼 《原爆の図》が今回どうしてドイツでの美術展に展示されることになったんですか?

岡村 私も最初は驚いたのですが、戦後美術史上重要な作品だということが大きいのですね。
そして、今回の美術展は8つのテーマに分かれているのですが、最初のテーマが「核の時代」なのですね。原爆の図はその部屋の正面に飾られます。つまり、核の脅威とともに人類が生きることを余儀なくされる時代、その象徴として《原爆の図》が選ばれているわけです。

柿沼 ドイツでは初めて展示されるのですか?

岡村 初めてではありませんが、60年ぶりです。1950年代、《原爆の図》は、原爆の悲惨さを伝えるために、丸木夫妻が多くの人に支えられながら日本全国を巡回し、その後アジアやヨーロッパを中心とする世界巡回も行っています。けれども、その記憶も今はほとんど忘れ去られているでしょう。しかもミュンヘンは今回が初めての展示になります。
60年前と比べて、現在、核の脅威がさらに世界的に広がっていますから、再び《原爆の図》の問題意識に時代を超えて焦点を当てられる貴重な機会になります。ドイツは「戦後」の歩みについてし日本ともよく比較される国です。多層的な歴史の文脈の中で、《原爆の図》がどのように観客に受け止められるか、非常に楽しみです。

柴原 来月から始まる美術展は、来年3月までと開催期間が長いそうですね。他にはどんな作品が見られますか?

岡村 美術展は、来月14日〜3月26日まで、半年間も開かれます。
「核の時代」の展示室には、海外の芸術家が原爆に触発されて描いている作品がならびます。たとえば、日系米国人のイサム・ノグチの核をテーマにした彫刻やデッサン、ドイツを代表する芸術家ヨーゼフ・ボイスが原爆を表現した作品もあります。原爆のドキュメントフィルムも投影されるようです。
また、美術館の玄関ホールには、日本の芸術家・元永定正さんが1950年代に具体美術協会という前衛的な芸術運動に参加したときに試みた、ポリ袋に赤や黄色や緑の色水を入れて両端を天井から吊るすという作品が、すでに設置されています。
昨年、日本では戦後70年として日本の戦争や戦後を問う美術展が数多く開催されましたが、今回はその世界版。世界規模の視点で「戦後の時代」を考え直すことで、今の私たちの生きる社会につながる問題意識を発見できるのではないかと期待しています。

柿沼 二つの作品が展示されるのは、核の時代ということで、上下に並べて展示するんですね? どーんと目の前にあると、結構な迫力ですね。

岡村 見る人は圧倒されると思います。そして画面に描かれた等身大の群像を見ることで、人間の痛みが伝わると思います。

柿沼 ありがとうございました。「ちきゅうズームアップ」は、ドイツ・ミュンヘンから《原爆の図》の話題を、原爆の図丸木美術館学芸員の岡村幸宣さんに伝えてもらいました。

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番組でお話下さった柿沼郭キャスター、柴原紅キャスター、そして企画を準備して下さった内藤裕子ディレクター、本当にお世話になりました。どうもありがとうございました。
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