2016/1/28

『図書新聞』に『《原爆の図》 全国巡回』書評掲載  掲載雑誌・新聞

岡村幸宣著『《原爆の図》全国巡回』(新宿書房)を読む
 ――武居利史、『図書新聞』3241号(2016年2月6日)

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『図書新聞』の1面トップで、府中市美術館学芸員の武居利史さんによる『《原爆の図》全国巡回』の書評が掲載されました。

武居さんは、たびたび展覧会や講演会などでお会いする、尊敬する先輩学芸員のひとり。
教育普及担当をつとめてこられた学芸員ならではの視点から、拙著を「一九五〇年代の文化運動を知る入門書」として、そして《原爆の図》の受容史研究という面も含めて紹介して下さっています。
他紙に比べてもたいへん文字数の多い書評なのですが、以下に後半部を抜粋します。

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 近年、一九五〇年代の文化運動を見直す研究が盛んになりつつある。職場のサークル運動など戦後民主化の流れの中で、新たな文化活動の広がりが生まれた時代だ。戦後文化人が多く関与した共産党が、レッドパージや内部分裂で混乱するなど政治的に複雑な面はあった。だが、平和運動や労働運動など、社会運動は全般に高揚し、政治的視点のみでは把握しきれない、民衆を主体とした文化的空間が生み出されていた。専門家と大衆が結びつき、ジャンルを超えた共同が生み出された。当初は作品だけだった《原爆の図》も、科学者や学生の運動と結びついて「綜合原爆展」へと発展する。作品は映画や幻灯にもされて上映が進められた。本文中には、観客の率直な感想も紹介され、巡回展の受けとめや支えた人々の息遣いが伝わってくる内容になっている。

 戦後間もない時期の出来事は、生きている当事者も少なくなり、一般的に忘れられてしまっている事柄も多い。そこで本書では、初めて読む人にもわかるように、キーワードに解説のための註が豊富につけられている。一九五〇年代の文化運動を知る入門書としても役立つはずだ。また巻末には、今井正らが監督した映画『原爆の図』(一九五三年)のシナリオが採録され、国内巡回展のデータも収録されている。このような戦後民衆が支えた新しい文化の歴史は、地道な調査によって掘り起こさなければ見えて来にくい。よく知られているはずの《原爆の図》を、創作者の側からだけでなく、受容者の側からとらえることで、新たな魅力を生きいきとよみがえらせる。戦後社会における美術受容の問題に光を当てた研究としても注目されるべき本である。


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丸木夫妻は「大衆が描かせた絵画」とたびたび語っていますが、この本の隠れた主役は絵の前に立つ「人びと」であったので、こうした言及をとても嬉しく思います。
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