2017/1/6

「柳幸典展」「クラーナハ展」「坂口寛敏展」  他館企画など

新年はじめの美術館巡り。
まずは横浜へ行き、閉幕間近のBankART Studio NYKの柳幸典「ワンダリング・ポジション」展(1月7日まで)。

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1階から3階までの会場を効果的に使って、憲法第9条の条文がネオンで分節化され解体された《アーティクル9》など、社会的な批評性を含んだ過去の作品を一堂に会する見応えのある展示でした。

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1990年代に制作された、代表作ともいうべき《アント・ファーム》シリーズは、砂に着色して国旗や紙幣を描き、プラスチックのケースをチューブでつないで、アリに境界を浸食させるというコンセプト。
国家という人工的な概念を揺さぶるアリたちの「自然な」営みは、境界なき現代社会を生きる私たちの姿のようにも見え、あらためて示唆に富んだ作品だと感じます。

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3階部分には、ギリシャ神話のイカロスのエピソードをもとにした三島由紀夫の「太陽と鉄」の言葉が浮き上がる鏡の迷路が設置され、「天空」に向かって歩き続けると、突然、広島型原子爆弾リトルボーイの「原寸大」彫刻に突き当たります。

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さらに、《目のある風景》という靉光のシュルレアリスム絵画を思わせる副題のついた、肉塊ならぬ瓦礫とフレコンパックの山の中からこちらを見つめる巨大な眼のインスタレーション《Project God-zilla》にたどり着きます。

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90年代から社会の「揺らぎ」を表現してきた柳さんの、ひとつの帰結点として提示された「3.11」後の世界。
その余韻に浸りながら、上野に移動して、国立西洋美術館「クラーナハ展―500年後の誘惑」へ。

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日本初の本格的回顧展ということで、ヨーロッパの美術館ではたびたび目にするユディトやサロメ、ヴィーナス、ルクレティアといった彼独特の細身の女性像を、あらためてじっくりと見ることができました。
村山知義、岸田劉生といった日本の画家たちへのクラーナハの影響が紹介されていたのも興味深かったです。

最後に、東京藝術大学美術館「坂口寛敏退任記念展 パスカル 庭・海・光」へ。

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坂口さんには、2008年に丸木美術館で行った「シシュポス ナウ―罪と罰のでんぐり返し―」展でたいへんお世話になりました。
以後、たびたびお会いする機会があり、教え子の生徒たちと丸木美術館との関わりもあったので、退任記念展はぜひ拝見したいと思っていたのです。

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こちらも「3.11後」の世界の提示でしょうか。
防護服や灰、鉛に包まれた枯木などが素材として用いられながら、しかし、整然と“美”を主張しています。
会場では、坂口さんの担当教官に当たる野見山暁治さんのお元気そうな姿を見かけ、坂口さんからはミュンヘン滞在の思い出やヨゼフ・ボイスの話を伺って、ちょっと元気になったような気分で、早々に帰宅しました。
まだ少し正月の風邪を引きずっているので、レセプションは失礼しました。
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