2016/4/17

国立民族学博物館「夷酋列像展」  他館企画など

大阪の国立民族学博物館で「夷酋列像展」を見ました。
フランス・ブザンソン美術館蔵の原本の展示が19日までなので、たいへんな混雑を覚悟していたのですが、なぜか観客は数人で、落ち着いてじっくり見ることができました。

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この「夷酋列像」は、クナシリ・メナシの戦いというアイヌの反乱の鎮圧に協力した首長12人の肖像で、作者は松前藩家老で画家の蠣崎波響。
松前藩の搾取に耐えかねて蜂起したアイヌの首謀者を、和解のあとに捕まえて皆殺しにし、和解に尽力した首長を函館に呼び出そうとして拒まれるなど、収奪する側とされる側の複雑な関係も背景にあります。
松前藩がアイヌを制御していることを全国にPRするために描かれたという肖像画ですが、しかし、非常に丹念で美しく、独自性のある描写で、完成度は高いです。

首長たちが出頭しなかったため、「実写」というより、西洋画の影響や中国の関羽像など既存の表現を転用しながら創作したようだが、当時から高く評価され、画家自身も含めて、いくつもの粉本・模写が制作されました。
今回の展示は、原本11点(1点欠落)を軸に、模写版の系譜や関連する人物に加え、実物の衣服や道具、地図などの世界観を多角的に紹介する博物館ならではの内容。

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そしてこの博物館で見逃してはならないのが、レストランの「食」体験です。
特別メニューのオハウセット(「オハウ」とは汁物の意)は、鮭を使った煮込み料理と「コロコニ」(フキ)の煮物、「アマム」(きびご飯)というアイヌ料理をベースにした健康的なメニューでした。

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いまはちょうど《原爆の図》の原本と模写の関係性について考えているときだったので、《夷酋列像》の展示を見ながら、「芸術」が輸入される近代以前においては、作者自身も含めて、絵画を模写して複数制作することに何の抵抗もなかったのだという当然の事実に、あらためて目が開かれる思いがしました。

若き日の丸木位里は、江戸期の伝統を受け継ぐ円山四条派の田中頼璋の弟子で、散々師匠の絵の模写をしていたから、重要な絵の「写し」をとっておくという発想は、自然なものだったのでしょう。

再制作版の《原爆の図》三部作が展示された際に、「ピカソの《ゲルニカ》が傑作だからといって、模写して展示することがあるだろうか」と批判されたという話も伝わりますが、どうやら現在の芸術の文脈とはまったく別な問題として考えた方が良さそうです。
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