2015/8/11

洪成潭「東アジアのYASUKUNISM」展トークイベント  イベント

午後2時より、丸木美術館2階アートスペースで開催中(8月30日まで)の洪成潭「東アジアのYASUKUNISM」展のトークを行いました。

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写真は左から、今展実行委員の古川美佳さん、洪成潭(ホンソンダム)さん、岡村です。
社会に波紋を投げかける果敢な作品とは対照的に、穏やかな表情で挨拶をする洪成潭さん。
「今回の展示は、巨人のような存在の芸術の先駆者である丸木夫妻に捧げる意味がある」と仰って下さいました。

「現在の日本は不安な道を歩いているが、丸木夫妻は重要な道を示している。人間と人間の疎通を可能にするのが芸術家の役割だが、その疎通とは他者との平凡な対話ではない。苦痛に叫ぶ人の声を聞き、ともに手をつないで自分の苦痛として感じることだ。人は内容より題目に流されるから、《原爆の図》という題名に恐れるものだが、真摯に対話するように絵を見たとき、丸木夫妻の愛情に気がつく。丸木夫妻は絶えず芸術的自由を拡張してきた方だと思う。歴史や政治の本質に絵を通して近づくことができるという道を拓いてきた」

洪さんの言葉のひとつひとつは、とてもよく練られたもので、深く考えさせられます。

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「過去を恐れずに見つめなければいけない。なぜそれが大切かというと、権力がつくりあげた記憶によって国民が手なずけられてしまえば、人びとは主体的な考えができなくなる。国家暴力や統制されたメディアを事実だと思うようになっていく。それは権力の奴隷のようなものだ。もっと時間がたてば、奴隷であることを恥ずかしいと思わず、みずからつながれた鎖を誇らしいと思うようになる。やがて『自分の鎖が立派だ』とファッションのように自慢する」

過去から目をそらすのではなく、向き合うことで自分自身が奴隷であることに気づく……と、洪さんは、このときは力を込めて強く語りました。
主体的に考えなくなることが奴隷のはじまりである、というのは、ひろしま忌でおしどりマコさんが話していた内容ともつながります。

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会場に掲げられた巨大な垂れ幕は、もとは木版画の作品で、画面中央にある魚と少女の循環は回復、治癒の象徴だそうです。
もともと、シャーマニズム、アニミズムに強い関心があるという洪さんは、朝鮮半島はもちろん、日本の自然崇拝である神道にも心を惹かれているとのこと。
だからこそ、本来の生命と祝祭の文化を歪曲し、戦死者を包装する死の文化の終着点とした“YASUKUNISM”が許せないというのです。
その深い闇を批判するというより、苦痛から解放し治癒したいという洪さんの最後の発言は、重く響きました。

参加者は約20名ほど。皆さん熱心に会場を観て、トークを聞いていた様子が印象的でした。
個人的には、今回の展覧会のタイトルが「東アジア」を名乗っていたことに感銘を受けました。
悠久の歴史から互いに交流し、さまざまな影響を与え合っていた東アジアの文化圏。
国家という軛に左右されるのではなく、それぞれ個の人間として歴史に向き合い、精神を疎通させることが、これからの未来を築いていくのだということを、あらためて考えました。

追記:古川美佳さんがトークの報告記事を書いて下さっています。
http://www.labornetjp.org/news/2015/0811maruki
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