2014/12/27

福島菊次郎全写真展・講演会「93歳のラストメッセージ」  他館企画など

12月26日、27日と2日間続けて、東京・多摩市のパルテノン多摩で開催していた「福島菊次郎全写真展」に足を運びました。

この写真展は、「福島菊次郎展TAMA実行委員会」の主催により、93歳の写真家・福島菊次郎さん(1921年、山口県下松市生)の写真パネル約430枚、計2000点ほどの写真を展示すした、決定版とも言うべき企画です。

テーマは全部で15に分かれています。

1.原爆と人間の記録(パネル28枚)
2.ピカドン(24枚)
6.捨てられた日本人(22枚)
7.自衛隊と兵器産業(24枚)
8.全共闘運動(学生運動)の軌跡(28枚)
9.女たちの戦後(23枚)
10.ふうてん賛歌(22枚)
11.三里塚からの報告(27枚)
12.自然と人間破壊の構造―公害日本列島(29枚)
13.瀬戸内離島物語(22枚)
14.原発が来た(22枚)
15.鶴のくる村(22枚)
16.写真で見る戦争責任(28枚)
19.天皇の親衛隊(28枚)
19.ある老後(20枚、撮影:宮渕紗枝子)

福島さん自身の構想では、計23テーマ(うち3テーマ「ベ平連活動の軌跡」、「プラスマイナス100度の旅」、「しあわせの詩」が未完)があるそうですが、20テーマのうち5テーマ(「捨てられた子どもたち」、「日本バンザイ」、「沖縄、死の洞窟」、「福祉国家沈没」、「警察国家復活」)のパネルは行方不明とのこと。

クリックすると元のサイズで表示します

特に、福島さんが来場され、詩人のアーサー・ビナードさんと講演会を行った27日には、会場はたいへんな盛況ぶりでした。

クリックすると元のサイズで表示します

とにかく、見ても見ても終わらない、圧巻の展示。
しかも、同じ写真や言葉が何度も重複して登場します。誤字もあります。
福島さんがみずから編集・手作りしたという一見無造作なパネルは、決して洗練されたものではありませんでしたが、「アール・ブリュット(魂の芸術)」という言葉を想起させるような、強固な世界観を発散しています。

クリックすると元のサイズで表示します

みずからの戦争体験を基盤にしながら、戦後の時代を、地面を這いまわるような視点から写真に撮り続けてきた福島さんの「真実」が、圧倒的な説得力をもって迫ってきます。
「公正中立」という、いかがわしい言葉を吹き飛ばすような凄まじい熱度です。

さまようように会場をまわりながら、「アーティスティックな写真」というのとはまったく違った意味で、「ああ、本当のアートとはこういうものかもしれない」と感じていました。
みずからの生きる時代に向き合い、ものごとの本質を見極める視線を鍛え深める。
「こうするより仕方ない」という自分自身の表現を練り上げて、強い世界観を提示する。
ジャーナリズムもアートも、突き詰めれば同じような地平にたどり着くのかもしれないとも思いました。

クリックすると元のサイズで表示します

27日午後1時からは、「93歳のラストメッセージ」、アーサー・ビナードさんをゲストに迎えて、福島さんの講演会です。1000人規模の会場は、ほぼ満席に近い状態。
前半45分はアーサーさんのトークだったとはいえ、3時間におよぶ長丁場をこなす福島さんの体力、そして独特のユーモアを交えた話術の見事さには驚きました。

クリックすると元のサイズで表示します

「個人が頭を働かせる時代ではなかった」というなかで軍国少年として育った福島さんは、10代で徴兵されたものの、馬に蹴られたために、本来沖縄へ行くはずだった予定が広島の内地部隊配属になり、原爆投下1週間前の7月30日に部隊ごと貨物列車で宮崎に移送されたそうです。
不思議な運命に導かれて、生きて敗戦を迎えたわけですが、戦後の自分を支えたのは、「自分は人を殺していない」という思いだったとのこと。「人を殺して、生身の人間が平気であるわけがない」と力強く語った言葉が、深く心に残りました。

また、「ぼくには、基本的に権力には勝てないという敗北感があります」という言葉にも、ドキリとさせられました。あれほどひょうひょうと神出鬼没のように、社会の矛盾を暴き出す写真を撮り続けている方が、そんなふうに思っているのかと、新鮮な驚きでした。
福島さんは、「個人の命には限界がある。悪しき権力者はしつこく根強い。何代にもわたって伝統を維持していく。勝てるはずがない。だから、それ以上にこちらもしつこくなって、“シャッターを切る”という暴力で乗り越えていかなければならない」と続けました。

アーサーさんは、「福島さんの写真からは、歴史を作っていく決定権を持っているのは、一部の権力者ではなく、私たちであることが伝わってくる。決してあきらめずに、これからもいっしょに歴史を作っていきましょう」と講演会をまとめていました。

この日の講演会でも発表されていましたが、来年、2015年夏には、丸木美術館で福島さんの写真展を計画しています。
あの熱度を、どのように丸木美術館の空間に運び込めるか。
帰り道、冬の冷たい風に吹かれながら、火照った頭でずっと考え続けていました。
2



teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ