2014/5/29

東近美「映画をめぐる美術」/府中市美「官展にみる それぞれの近代美術」  他館企画など

美術館の休みを頂いて、午後から都内の美術館めぐり。
東京国立近代美術館の企画展「映画をめぐる美術―マルセル・ブローターズから始める」(6月1日まで)は、見慣れた展示室の雰囲気を大幅に変えて、美術館の中に6つのテーマ室からなるレトロな雰囲気のシネマ・コンプレックスを作り出すという試み。

中央の部屋で5台の16oフィルム映写機がベルギー出身の美術家マルセル・ブローターズ(1924-1976)の映像作品を映し出し、カーテンで仕切られた狭い通路をたどっていくと、たとえば、エリック・ボードレールによる映像《重信房子、メイ、足立正生のアナバシス そして映像のない27年間》(2011年、66分)など、13作家のそれぞれの写真や映像、インスタレーションが展示されている独立した小部屋にたどり着くという趣向が新鮮でした。

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「何かがおこってるU 1923、1945、そして」と題されたコレクション展示も非常に興味深いものでした。前会期の特集「何かがおこってる」の続編で、絵画や彫刻だけではなく、雑誌などの資料や映像(1941年のアニメ映画《動物となり組》など)も用いて、関東大震災、敗戦、東日本大震災……と繰り返してきた日本の災厄の歴史の中の空気を浮かび上がらせ、暗に現在の社会の動きへの批判を想起させる内容。

特集展示「地震のあとで―東北を思うV」も含めて、Chim↑Pomの映像作品《気合い100連発》や《REAL TIMES》などを、国立美術館で観ることになるとは、なかなか感慨深いものがありました。
2012年秋の企画展「実験場1950s」あたりから、歴史的な名品の陳列から現代の問題意識を踏まえたした内容へと、東京国立近代美術館の展示の方向性が変わってきたような気がします。

   *   *   *

続いて府中市美術館の企画展「東京・ソウル・台北・長春 官展にみる それぞれの近代美術」(6月8日まで)へ。
その功罪も問われるものの、近代の美術システムを確立させた明治期の公設公募展「文展」からはじまり、やがて日本の統治下にあったアジアの各都市(ソウル=朝鮮、台北=台湾、長春=満州)でも開かれるようになった官展の歴史を掘り起こすという、非常に意義深い企画でした。

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こうした官展は、各地において近代美術の形成の基礎となる役割を果たした一方で、日本人の審査員が作品を選定するなど、文化的な植民地政策であった面を見逃すことはできません。
しかし、梅原龍三郎の絵画様式の確立に台湾や北京、満州への訪問体験が影響を及ぼし、とりわけ台湾の画家・陳澄波の自由闊達な画風(非遠近法による空間のねじれや歪み、形象の大胆な単純化など)に大きく触発されたのではないかという推測などは、とても興味深く思われました。
その陳澄波もまた、台湾で指導した日本の水彩画家・石川欽一郎の影響を受けているそうで、いわば螺旋状のように日本とアジアの各地は相互に影響を与え、刺激を受け合っていたのだという歴史をあらためて考えさせられました。
満州の現存作品が非常に少ないなど、「戦争記録画」とはまた違った意味で、戦争の傷痕を感じる展覧会でもありました。
絵本『スーホの白い馬』で知られる赤羽末吉が満州を描いた1950年代のタブロー《満洲の冬の街頭物売り》(ちひろ美術館蔵)など、初めて見る作品も数多くあり、各国の研究者が執筆した論文やエッセイ、資料が数多く収められた図録も圧巻。保存版の貴重な一冊です。
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