2013/12/4

岩波ブックレット『非核芸術案内』刊行  執筆原稿

岩波書店より、ブックレット『非核芸術案内 核はどう描かれてきたか』が刊行されました。

==========

クリックすると元のサイズで表示します

 芸術は人間の営みのなかから生まれてくる.その営みに直結する問題である核の脅威と対峙するなかで,「非核芸術」と呼ぶべき作品があらわれ続けることは,決して不思議ではない.

 「芸術の役割は見えるものを表現することではなく,見えないものを見えるようにすることである」とは,画家のパウル・クレー(1879-1940)の残した言葉だ.もちろんクレーの言う「見えないもの」とは魂の領域を指すのだろうが,それも含めて,核に対峙する芸術を思うとき,この言葉が頭をよぎる.核の脅威,とりわけ放射能を人間は知覚できない.その危険性を隠そうとする社会的な力が働くことも少なくない.「非核芸術」の歩みは,「見えない」核を「見える」ものとしてあばき出す試みの連続であったと言える.

 芸術には,時代を越えて語り継ぐ物語となって忘却を防ぐ力がある.それぞれの時代に何が記憶されてきたのかを見つめなおすことは,「3.11」後を生きる私たちの現在,そして未来を照らすことにもつながるはずだ.

 まずは,1945年以後,脈々と受け継がれてきた「非核芸術」の系譜をたどり,「非核芸術」とは何か,そして,その多様な表現がもたらすものの意味について,考えていきたい.


(「はじめに」より)

http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/2708870/top.html

==========

岩波書店編集部の吉田浩一さんをはじめ、本書の執筆においてお世話になった皆さま、とりわけ、日頃からさまざまなご教示を頂いている近現代史研究者の小沢節子さんには、心より御礼を申し上げます。

手もとに届いたブックレットをあらためて見ると、図版も非常に美しく掲載されています。
以下、参考までに、目次とともに図版で紹介している作品を書き留めておきます。

表紙
 丸木位里・丸木俊「原爆の図第3部《水》」(部分)1950年

はじめに
 シケイロス「都市の爆発」1936年

T 原爆を表現する
▼最初に原爆を伝えた絵画
 丸木位里・丸木俊「原爆の図第1部《幽霊》 」1950年/同「ピカドン」1950年
▼原爆を見た画家たち
 福井芳郎「昭和 20 年 8 月 6 日午前 9 時」1945年/同「炸裂後 15 分」1952年/深水経孝「崎陽のあらし」1946年
▼想像を超える破壊を描く
 古沢岩美「憑曲」1948年/山下菊二「オト・オテム」1951年/山本敬輔「ヒロシマ」1951年/増田勉「母子」1949年/鶴岡政男 「人間気化」1953年
▼置き去りにされる被爆者
 高山良策「矛盾の橋」1954年/上野誠「ケロイド症者の原水爆防止の訴え」1955年/中沢啓治「はだしのゲン」1973〜1985年
▼描けなかった記憶
 丸木スマ「ピカ―ゆうれい」1950年頃/「ピカのとき」1950年頃/大道あや「ヒロシマに原爆が落とされたとき」2001年

U ビキニ事件と原発
▼放射能の脅威
 ベン・シャーン「珊瑚礁の怪物」1957年/ゴジラ 1954年/岡本太郎「燃える人」1955年/手塚治虫「第五福竜丸」1985年
▼揺らぐ被害者意識と原発神話
 丸木位里・丸木俊「原爆の図 第 14 部《からす》」1982年/水木しげる「パイプの森の放浪者」1979年

V チェルノブイリ事故後の世界
▼汚染された大地
 貝原浩「風しもの村」1992年/本橋成一「無限抱擁」1995年
▼現実と虚構の間で
 こうの史代「夕凪の街 桜の国」2004年/石内都「ひろしま」2008年/ジミー・ツトム・ミリキタニ「原爆ドーム」制作年不詳/Chim↑Pom「ヒロシマの空をピカッとさせる」2008年

W 3.11 後の「非核芸術」
▼若者たちの挑発
 Chim↑Pom「LEVEL 7 feat.明日の神話」2011年/同「Red Card」2011年/風間サチコ「噫!怒濤の閉塞艦」2011年/同「獄門核分裂235」2011年
▼終わりのない物語
 壷井明「無主物」2012年〜/増田常徳「不在の表象 浮遊する不条理 A」2011年
▼歴史を重ね合わせる
 黒田征太郎「火の話」2011年/鄭周河「奪われた野にも春は来るか」2012年/池田龍雄「蝕・壊・萌」2011年
▼福島に希望はあるか
 ヤノベケンジ「サンチャイルド」2011年/安藤栄作「光のさなぎ」2013年
▼受け継がれる意志
 粟津潔・杉浦康平「原水爆禁止+核武装反対!」1959年/新井卓「2011年7月26日、飯舘村長泥、放射性のヤマユリ」2011年

おわりに

なお、岩波ブックレットは、小さな書店では在庫がない場合も多いので、お近くの書店あるいはインターネットでご注文いただくか、丸木美術館でもお取り扱いしておりますので、ご来館の際にお求めください。
3



teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ