2012/12/19

『朝日新聞』に本橋成一写真展「屠場」紹介  掲載雑誌・新聞

2012年12月19日付『朝日新聞』夕刊文化欄に、“被写体との接近と隔たり”との見出しで、北井一夫「いつか見た風景」(東京都写真美術館)とともに丸木美術館で開催中の本橋成一写真展「屠場」が紹介されました。
http://www.asahi.com/news/intro/TKY201212190616.html?id1=3&id2=cabcbcca
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取材をして下さったのは、文化部の西岡一正記者。
以下、記事から「屠場」についての紹介部分の抜粋です。

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……「屠場」の被写体は大阪の食肉処理場で働く人々。80年代半ばに撮影した写真を中心に構成する。撮影者は、炭鉱の閉山が進む60年代の筑豊や、86年の原発事故で汚染されたチェルノブイリ周辺の村の写真で知られる本橋成一。この撮影では、偏見にさらされがちな営みの現場に自らの身を投じた。

 とはいえ声高な社会派の写真ではない。本橋がまなざしを向けるのは、特殊なピストルで牛を気絶させる技術員の厳粛な表情であり、ナイフを研ぐ職人の誇り高い手業であり、解体作業にいそしむ男たち女たちの笑顔である。一言でいえば、日々「いのち」そのものに向かい合う人々の姿となろうか。

 二人の写真は、実はもう一つの「距離」を浮かび上がらせている。被写体と現代の私たち、とりわけ都市生活者との間に横たわる「距離」だ。時代の変化が背後にあるとはいえ、彼我の「生のかたち」の隔たりに呆然とさせられる。


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「屠場」展、本当に見応えのある写真ですので、ぜひ多くの方にご覧いただきたいと思います。
わざわざ足を運んで下さった西岡記者に、心から御礼を申し上げます。
どうもありがとうございました。
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2012/12/19

【沖縄出張第3日】画廊沖縄/ひめゆり平和祈念資料館  調査・旅行・出張

今日もまた思いもよらない展開が続きます。
午前中、沖縄県立博物館・美術館のT学芸員に連れられて、南風原の画廊沖縄に行きました。
画廊沖縄のUさんは、30年ほど前から沖縄の芸術家たちを支えて来られた方で、その噂はかねがね伺っていたのですが、車でなければ不便な場所にあるというので、今まで訪れたことがなかったのです。

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画廊沖縄では、現在、阪田清子展「Story Reclaimed Land」を開催中(12月23日まで)。
Uさんにご挨拶をして、画廊の階段を上がっていくと、展示室の中央に古い木製の机がありました。琉球石灰岩で固められた土台の上に机が置かれ、机の下の空間にもがっちりと琉球石灰岩が詰め込まれています。デスクランプが何もない机の上をほんのりと照らし、古い木製の椅子は脚が焼け焦げて長さも不揃いになった状態で、机から離れたところに傾きながら辛うじて立っています。そして壁には埋め立て地の地平・水平線を撮影した写真が展示されていました。

Uさんの話では、この展示は「復帰40年」のための特別企画であるとのこと。
暴力的に埋め立てられた「本来の場所」から不条理にはじき出され、傷を負いながら不安定に立つ椅子の姿こそ、現在の沖縄そのものだというのです。
そして、この琉球石灰岩を別のものに置き換えて、たとえばコンクリートで固めてしまえば、それは原発事故を負った福島の姿にも重なると。

阪田清子さんは1972年新潟県生まれ。
沖縄県立芸術大学大学院修了後も沖縄に残って制作を続けている芸術家です。
ご本人の記されたテキストを読むと、この《Story Reclaimed Land》という作品は、“ナイチャー(内地人)”としての孤独や新しい地への渇望も投影されているようです。ともあれ、多様な解釈を可能にする作品ということでしょう。
「アジアをつなぐ―境界を生きる女たち」展に出品されている《止まったカーテン》も、日米安保/基地問題を日常の一瞬の風景からつなげて見せるという非常に印象に残る作品でした。

阪田さんのドローイングが展示されている部屋で、Uさん、Tさんといっしょにお茶を頂きながら、沖縄の現代美術の歴史や、米軍基地・原発事故をめぐる現在の社会の状況など、時間を忘れるように話をしました。
昨日からずっと、私は今まで何度か訪れて見てきた沖縄の姿とはまったく違ったものを見せて頂いている、という思いがありました。
きっとTさんが意識的に「見ておくべきもの」と見せて下さっているのだろう、とも思いました。
本当にありがたいことです。
おかげで今後、沖縄を見続ける視点が、大きく変わっていきそうです。

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Tさんといっしょに昼食を食べたあと、車でひめゆり平和祈念資料館まで送っていただき、そこでTさんとはお別れ。この2日間、本当にお世話になりました。

ひめゆり平和祈念資料館を訪れた目的は、今年完成したというアニメーション映像『ひめゆり』を見せて頂くことでした。
まずは「平和のための博物館ネットワーク」でいつもお世話になっているF学芸員、N説明員にご挨拶をして、映像を拝見。海津研さんによる原画をもとにした物語映像は、いわゆるアニメーションと聞いて想像される、流れるような動画ではなく、絵本や紙芝居を映像化したような素朴な印象の作品です。しかし、その抑制の効いた映像表現が、逆に見る側の想像力を広げて、戦争体験の継承という意味ではリアリティを呼び起こす可能性があるように感じました。
先月に京都の立命館大学国際平和ミュージアムで行われた「平和のための博物館ネットワーク全国交流会」の際にも部分的に映像を見てはいましたが、やはり、あらためて30分ほどの全編を見せて頂いたことは、とても良かったです。

その後は4年ぶりに展示室を拝見。企画展「生き残ったひめゆり学徒たち―収容所から帰郷へ―」(3月31日まで)も、証言映像を含めてじっくり見せて頂きました。

閉館後、那覇空港までNさんが車で送ってくださいました。
さまざまな方にお世話になりながら、予想以上に充実した日々を過ごすことができた3日間の沖縄出張。
今後の丸木美術館の企画などに、ぜひとも今回の体験を生かしていきたいです。
お世話になった皆さま、本当にありがとうございました。
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