2012/12/10

東京都写真美術館「記録は可能か。」内覧会  他館企画など

休館日。夕方から、東京都写真美術館の企画展「映像をめぐる冒険Vol.5 記録は可能か。」(12月11日〜2013年1月27日)の内覧会に行ってきました。

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「記録としての映像」をテーマにした興味深い企画なのですが、私も去年から少し関わらせて頂いている早稲田大学演劇博物館演劇映像学連携研究拠点における幻灯に関する公募研究プロジェクトが展示に参加しているのです。

今回、上映されている幻灯作品は、以下の5本。
ぼくのかあちゃん
1954年、製作=東大セツルメント川崎こども会、構成=加古里子、協力・配給=日本幻灯文化社、フィルム提供=神戸映画資料館、ナレーション=藤原和真
自転車にのってったお父ちゃん
1956年5月、製作=東大セツルメント川崎こども会、作画・構成=加古里子、配給=日本幻灯文化社、フィルム提供=熊本学園大学・水俣学研究センター、ナレーション=オヌ齊藤花
日鋼室蘭首切反対斗争記録 嵐ふきすさぶとも 
第1巻、1954年9月、製作=日鋼室蘭労働組合、配給=日本幻灯文化社、脚本・構成=久保田俊夫、フィルム提供=神戸映画資料館、ナレーション=鷲谷花、合唱=今村由美子、入江涼子、中沢俊之、渡辺一利(中央合唱団)
にこよん
1955年頃、製作=全日自労・飯田橋自由労働組合、脚本・演出・撮影=桝谷新太郎、フィルム提供=神戸映画資料館、ナレーション=紙屋牧子
みんなで守ろう 水俣のたたかい
1962年10月、カメラ=新日本窒素水俣労組写真班、脚本・編集=合化労連教宣部、配給=日本幻灯文化社、フィルム提供=熊本学園大学・水俣学研究センター、ナレーション=鳥羽耕史

このうち、『日鋼室蘭首切反対斗争記録 嵐ふきすさぶとも』に記録されている日鋼室蘭争議の関係者は、1951年10月28日から30日まで北海道で最初の原爆の図展を室蘭で開催された方々と重なります。
昨年10月に室蘭で60年ぶりに再現された原爆の図展の際に、当時を知るH氏に証言をお聞きしたのですが、今回の幻灯の調査の際にも、H氏は大きな協力をして下さったようです。
http://fine.ap.teacup.com/maruki-g/1744.html

幻灯の脚本・構成の担当者である久保田俊夫という名前にも見覚えがありました。
日鋼室蘭文学サークル誌『ひろば』の主宰者で、やはり室蘭原爆の図展の際に、中心となって活躍されていた方でした。
社会運動と文学・芸術が密接なつながりをもっていた1950年代の様子が、この一本の幻灯からも浮かび上がってきます。

また、加古里子の絵本のファンとしては、最初期の作品を幻灯で見ることができるという貴重な機会はたいへん嬉しいものでした。

もちろん、過酷な肉体労働を行う一人の女性労働者に焦点を当てた『にこよん』や、『みんなで守ろう 水俣のたたかい』もたいへん貴重な記録。
図録によせた紙屋牧子さん、鷲谷花さん連名の論考「幻灯の映す戦後社会運動」には、「もっとも貧しい労働者や、貧困家庭の主婦や子どもなど、それまで「自分の声を伝達するためのメディア」を持ち得なかった人々にも手の届くメディアとして、多くのユニークな記録や表現を生んだことは注目に値する」と記されていますが、そうした幻灯の特質が、非常によく伝わってくる展示といえるでしょう。

幻灯展示のほかにも、城之内元晴の『日大大衆団交』(1968年、22分)や中谷芙二子の『水俣病を告発する会―テント村ビデオ日記』(1971-72年、20分)、小川紳介の『三里塚 第三次強制測量阻止闘争』(1970年、50分)など、社会的主題をとらえた注目に値する映像がいくつも紹介されています。

展覧会そのものは必見と言えるのですが、すべてを見ているとたいへん時間がかかってしまう点、そして複数の映像の音声が重なってしまって集中して観るのが難しい点は気になりました。
時間をたっぷりとって、集中力を高めた状態で展覧会を観に行くことをお勧めします。

   *   *   *

内覧会を観た後は、幻灯研究プロジェクトのお二人と、W大の50年代研究者Tさん、東京国立近代美術館フィルムセンターのOさんといっしょに打ち上げに参加しました。
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