2012/12/6

埼玉近美「ベン・シャーン展」/NHKさいたまFMラジオ「屠場」紹介  TV・ラジオ放送

午後から、浦和へ出て埼玉県立近代美術館で開催中の「ベン・シャーン展 線の魔術師」(来年1月14日まで)を観ました。

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朝霞市にある丸沼芸術の森のコレクション約300点によるベン・シャーン展。
丸木美術館も、昨年春の「第五福竜丸事件―ベン・シャーンと丸木夫妻―」展の際には、同コレクションからラッキー・ドラゴン・シリーズをお借りして、たいへんお世話になりました。

「線の魔術師」というタイトル通り、線描による小品を中心とする展示ですが、しかし、ベン・シャーンの特徴である力強い線の魅力には、やはり圧倒されます。
そして、初期の版画集『レヴァナとわれらの悲しみの貴婦人たち』の原画を同コレクションが持っているということも初めて知りました。

今回の展覧会の図録の冒頭に掲げられた以下の一文、今の時代にも、心に響きます。

わたしは、個人の神聖と優越を信じ、また人間のうちの最下層のものの生命と安全が、もっとも偉大で重要な人間のそれと同等な価値をもつものであることを信じます。
                       ――ベン・シャーン


展覧会を観た後は、企画担当のY学芸員にご挨拶をすることができました。埼玉県立近代美術館の学芸員の皆さんは、いつも温かく迎えて下さるので、本当にありがたいです。

   *   *   *

午後6時からは、NHKさいたま局でFMラジオ番組「日刊!さいたま〜ず」に出演。

お相手して下さったのは、キャスターの山崎薫子さん。とてもしっかりしていて(新卒とは思えないほど!)落ち着いたトークで、楽しくお話をすることができました。

番組の構成も山崎さんが丹念に考えて下さっていて、前半は丸木美術館と本橋成一写真展「屠場」の簡単な紹介。先日、美術館に足を運んで下さった彼女の感想を中心に話が進み、いきなり「おこたでいっしょに味噌煮込みうどんを食べた」と暴露されてちょっとあわてましたが、おかげで和やかに会話が進みました。

そして最初のリクエスト曲は、『ドナドナ』。
この曲を美術館で流したところ、子牛に感情移入してしまって屠場の写真を見られなくなるのでは……との苦笑まじりの意見もあったのですが、もちろん、笑いをとるために選んだわけではありません。
もとはナチスによって強制収容所に送られるユダヤ人の子どもたちを子牛に重ねた反戦歌といわれていることや、丸木美術館には《原爆の図》だけでなく《アウシュビッツの図》も展示していること、差別という“暴力”も丸木美術館や本橋さんの写真から見ることのできる隠れたテーマであると説明をしたうえで、曲を聴いていただきました。

後半は、本橋さんがこれまでに撮り続けた炭鉱やサーカス、上野駅、チェルノブイリ原発事故の汚染地で生きる人びとの写真の仕事を紹介しつつ、「屠場」のテーマである「命あるものは自分の命を保つために、命がけでほかの命をいただく」という根源的な問題に話を進めました。

今回、ぜひ紹介したかったのは、以前、新聞のインタビューで読んで印象に残った、本橋さんが大切にしているという言葉。
若き日の本橋さんが出会った、筑豊の文化運動を先導した上野英信の記憶です。

「我が身を投ずる」って言葉が上野さんは大好きだったんです。自らをその場に投げ込んでしまうということ。文章も写真も、ものを伝えるってことはそういうことなんだと。いきなりひょいっとやってきてペンと紙を取り出して「さあ、あなたの苦しみや悲しみを話してください」と言われて、だれが話したくなるだろうか。ともに時間をすごし、「こいつになら自分のことを書いてもらいたい」と思われないとね。どの立ち位置でおまえは写真を撮っていくのか、と考えさせられた。
 (2012年3月22日付『朝日新聞』夕刊「人生の贈りもの」より)

こうした姿勢を大切にされている方だからこそ、「屠場」という複雑なテーマの作品を撮り、発表することができたのだろうと、つくづく思います。
そして、この姿勢は、本橋さんだけでなく、ベン・シャーンや丸木夫妻にも共通していると思うのです。こんなふうに時代と向き合っている作品を、これからも丸木美術館で紹介していきたいと、心から思うのです。

「日刊!さいたま〜ず」の出演は、今回でちょうど10回目。お世話になったキャスター・アナウンサーの方は、山崎さんで6人目となりました。皆さんそれぞれ個性が違うので、今度はどんな話になるのかと、毎回とても楽しませていただいています。
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