2012/9/16

「幻灯:光の紙芝居」と「被爆者の声をうけつぐ映画祭」  講演・発表

やや体調不良だったのですが、午後から早稲田大学大隈タワーで「ドキュメンタリー・ドリーム・ショー2012」の一環として開催された「幻灯:光の紙芝居」を観に行きました。
昨年度に少しだけお手伝いさせて頂いた、早稲田大学演劇映像学の公募研究「「映画以後」の幻灯史に関する基礎的研究」の鷲谷花さんたちの企画です。

この日の会場は超満員。
講談師の宝井琴柑さんの語りによって、以下の5本の幻灯が上映されました。

@ぼくのかあちゃん(1953/製作:東大セツルメント川崎こども会/構成:加古里子/協力・配給:日本幻灯文化社)
Aわれらかく斗う 激斗63日(1953/製作:日本炭鉱労働組合/配給:日本幻灯文化社)
Bトラちゃんと花嫁(製作年不詳/小西六寫眞工業株式會社/作:松嵜與志人/画:古沢日出夫 ※大阪国際児童文学館蔵/政岡憲三作の同名短編アニメーション映画の幻灯版)
Cモスクワの地下鉄―地下の宮殿(製作年不詳/製作:星映社)
D嫁の座(1954/製作:朝日スライド/※復元版/出演:山形県南村山郡滝山村の阿部善勇氏御一家)

1950年代の占領期前後に、比較的手軽に作り、上映することのできる映像メディアとして、さまざまな社会運動などに活用されたものの、現在ではほとんど忘れ去られてしまった数多くの幻灯作品を、発掘・再発見していくという貴重な試みです。

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なかでも『ぼくのかあちゃん』は、後に絵本作家として知られる加古里子さんが、東大セツルメント川崎こども会時代に製作を手がけている貴重な作品。素朴な表現のなかに、後の加古さんの絵本の片鱗が垣間見えて、心打たれました。

日本炭鉱労働組合製作の『われらかく斗う 激斗63日』や、四世代が暮らす山形県の農家の一家を生活のあり方を記録した『嫁の座』など、当時の社会・生活状況を描いた幻灯作品も興味深いものでした。
幻灯は、映画作品をダイジェストで紹介する“簡易版の映像”といった側面もありますが、それだけではなく、映画のような“特別な記録”からはこぼれ落ちたような、ささやかな時代の記憶がタイムカプセルのように保存されている気がして、見逃せません。
生活・社会運動の担い手が自ら記録した映像メディアとして、今後も幻灯研究は1950年代の文化運動を考えていく上で、貴重な手がかりになることと思います。

ちなみに、現在編集中の一宮市立三岸節子美術館の「丸木俊展」図録の年譜にも、鷲谷さんたちが掘り起こした丸木夫妻の幻灯作品『ピカドン』や『原爆の図』を追加させて頂いています。

   *   *   *

夕方からは、明治大学リバティタワー1階のリバティホールで開催されている「被爆者の声をうけつぐ映画祭」に駆けつけました。
ジャン・ユンカーマン監督による丸木夫妻の記録映画『Hellfire:劫火―ヒロシマからの旅―』(1988年/シグロ)の上映があり、上映後にトークを行ったのです。

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『劫火』を観るのは久しぶりでしたが、あらためて、とても良くできている映画だと感じました。
《原爆の図》の紹介はもちろん、丸木夫妻の質素な生活ぶり、二人を支える人たちの姿、とうろう流し、夫婦共同制作の様子など、丸木夫妻を知るための主要な要素が実に丹念に手際よく記録されているのです。

ですから、私が補足することは何もないようにも思ったのですが、夫妻の仕事を今日的な視点からどう見つめていくべきか、というような話を少しだけさせて頂きました。
会場からはいくつも質問が寄せられ、関心の高さがうかがえました。

その後は、スタッフの皆さんといっしょに台湾料理店での打ち上げに参加。
さまざまな立場、年齢層の方が映画祭を支えていることを目の当たりにして、楽しいときを過ごしました。
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