2011/12/1

幻灯版『原爆の図』『ピカドン』発掘!  調査・旅行・出張

午後1時から早稲田大学早稲田キャンパスの演劇映像学連携研究拠点事務局で、1950年代はじめにつくられた『原爆の図』や『ピカドン』の幻灯フィルムを見せて頂きました。

丸木美術館には幻灯フィルムに関する記録がまったく伝わっておらず、先日、早稲田大学の鳥羽耕史さんからその存在を知らされて、たいへん驚いたのでした。

これまで知られていた丸木夫妻関連の映像でもっとも早い作品は、1952年制作・翌年公開の今井正・青山通春監督による記録映画『原爆の図』(新星映画社、モノクロ、17分)。
今回発掘された幻灯版『ピカドン 広島原爆物語』(星映社、カラー、36コマ=下写真左)は1952年4-6月制作で、映画より少し早く作られたことになります。幻灯版『原爆の図』(横浜シネマ製作所、モノクロ、38コマ=下写真右)も1953年10-12月と、ほぼ同じ時期に制作されています。

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そもそも幻灯というメディア自体、今までほとんど調査されていなかったようなのですが、現在、早稲田大学演劇博物館演劇映像学連携研究拠点2011年度公募研究「戦後映像文化史におけるオルタナティヴ的実践についての実証的研究―幻灯/スライドメディアの再評価及び映画・演劇界との連携の実態の検証を中心に―」というプロジェクトが進んでおり、そのメンバーの鷲谷花さんや紙屋牧子さんが、神戸映画資料館の所蔵フィルムから多量の作品を発掘したのです。
もとは関西幻燈センターに所蔵されていたフィルムだそうですが、そのなかに、松川事件や米軍基地問題などを題材にした作品とともに『原爆の図』や『ピカドン 広島原爆物語』が含まれていたというわけです。

幻灯というと、私はまず、宮澤賢治の童話『雪渡り』に出てくる狐の幻灯会の牧歌的な様子を思い浮かべます。幻灯は取り扱いが簡単なため、戦前期から教育・啓蒙・宣伝・娯楽など多様な目的で活用されたようです。

敗戦後には占領政策によって全国的に大規模な幻灯機の供給が行われたこともあり、公共施設での幻灯会がブームとなりました。
そうした中で、労働組合などの文化運動にも重要なメディアとして使われていったそうです。
2009年の目黒区美術館「‘文化’資源としての〈炭鉱〉展」に紹介されていた『せんぶりせんじが笑った』(日本炭坑労働組合制作、上野英信原作)は代表作のひとつです。

『ピカドン 広島原爆物語』や『原爆の図』の幻灯フィルムが制作されたのは、1952年4月のサンフランシスコ講和条約発効による占領終結とともに原爆表現が解禁された時期と一致します。
この時期には、前述の記録映画『原爆の図』のほか、青木書店から最初の画集『原爆の図』(1952年4月発行)が発行され、翌月には同じ青木書店から峠三吉の『原爆詩集』も発行されるなど、重要な原爆作品が相次いで制作されており、幻灯版『原爆の図』や『ピカドン 広島原爆物語』にもそれらの内容と共通する点がいくつか見出せます。

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フィルムは35mmロール式。
幻灯はフィルムに直接着色することでカラー映像を容易に実現できたそうですが、幻灯版『ピカドン 広島原爆物語』の大きな特徴は、もともと単色の絵本として出版された『ピカドン』に、きれいな彩色が施されている点です。
当時はアルバイトがフィルムに彩色をすることが多かったそうで、丸木夫妻が直接色を指定したわけではなさそうですが、なかなか新鮮な効果を感じました。
全体の構成も、原作の絵本から順序の入れ替えや場面の削除などの編集がされています。

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それぞれのフィルムには解説書もセットになっています。
上映の際には、この解説書に記された台本を読むことになるのです。
ちなみに幻灯版『原爆の図』の構成は本郷新、解説は内田巌が手がけています。

   *   *   *

これらの貴重な幻灯を公開する上映会&研究発表会を開催することも決まりました。

「《幻灯》に見る戦後社会運動――基地と原爆――」
日時:2012年1月21日(土)13:00-18:00
会場:早稲田大学早稲田キャンパス11号館603教室
定員:80人(先着順)

タイムテーブル
13:00 研究発表「《映画以後》のメディアとしての幻灯」
    鷲谷花(早稲田大学演劇博物館招聘研究員)
13:30 幻灯上映『基地立川』
14:00 幻灯上映『基地横須賀』
14:40 休憩
14:55 研究発表「基地をめぐるジェンダー表象:幻灯と映画を中心に」
    紙屋牧子(早稲田大学演劇博物館招聘研究員)
15:25 幻灯上映『原爆の図』
15:55 幻灯上映『ピカドン 広島原爆物語』
16:15 休憩
16:30 研究発表「幻灯版『原爆の図』『ピカドン』と50年代《原爆の図》のメディア表現」
    岡村幸宣(原爆の図丸木美術館学芸員)
17:00 研究発表「ルポルタージュの器としての紙/布/フィルム」
    鳥羽耕史(早稲田大学文学学術院准教授)
17:30 全体討議・質疑応答
18:00 終了予定


『基地立川』の幻灯フィルムには、1952年8月15日から17日まで立川南口公民館で開催された「原爆の図展」の会場風景も登場します(下写真)。

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「原爆の図展」を主催したのは立川平和懇談会(代表=岸清次)。
http://fine.ap.teacup.com/maruki-g/1557.html
『基地立川』を制作したのも同じ立川平和懇談会なので、この時期に多様な文化運動が展開されていたこと、そのなかで《原爆の図》が重要な主題となっていたことを、あらためて感じます。
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