2012/1/19

今井正・青山通春監督と宮島義勇監督の映画『原爆の図』  作品・資料

昨年暮れに、銀座シネパトスのS支配人から、「生誕百年 今井正監督特集」記念イベントのために、今井正・青山通春監督の映画『原爆の図』(1953年/白黒/17分)の上映をしたいというお話があり、美術館内の整理をしたところ、その作品の16mmフィルムとともに、宮島義勇監督の映画『原爆の図』(1967年/白黒/27分)の16mmフィルムも見つかりました。

今井・青山版はVHSやDVDにしているので何度も観ているのですが、宮島版は未見だったこともあり(どちらもフィルム上映は未見)、午後4時から三軒茶屋のスペースKENにお願いして、16mmフィルム映写機で試写をして頂きました。

銀座シネパトスのS支配人、番組編成担当のSさん、目黒区美術館のM学芸員、I学芸員、東松山CATVのIさんら数人が集まっての、ささやかな観賞会です。
また、目黒区美術館で開催予定だった「原爆を視る」展に資料協力をされていた目黒区在住の小林誼行さんも来場され、宮島監督が撮影した頃に発行された『映画原爆の図 製作ニュース』という貴重な資料を見せて頂きました。

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資料には、映画に関する重要な基本情報が掲載されていたので、以下に書き起こします。

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映画「原爆の図」製作ニュース 1967.8.1 No.2

映画原爆の図制作集団製作委員会事務局

注目の反戦美術映画 映画原爆の図ついに完成!

 「今からでもおそくはない・・・・」という峠三吉の詩にはじまる反戦美術映画「原爆の図」は七月二十八日の改装なつた広島市の原爆ドームの撮影でクランクアップし、全国の平和を愛する多くの人々の力と、宮島義勇氏を先頭とする製作集団の全力をあげての努力でついに完成した。
 今の時点でこの映画は世界の核兵器保有の禁止・核実験禁止の呼びかけを強化する目的であることは当然だが、さらにますますエスカレートされようとしているベトナムにつながるものである。脚本・監督・撮影を一人で担当した宮島氏は「アラン・レネ監督がピカソの絵を撮影して作つた有名な反戦美術映画「ゲルニカ」への挑戦です。ベトナム問題にまでつながる原爆映画にしたい」と語つている(サンデー毎日八月十三日号)がまさしく「原爆の図」製作の意図はそこにあつたのである。レネの作品「ゲルニカ」は一九三六年のスペイン内戦当時のナチス・ドイツの惨虐行為を描いたピカソの画を題材として第二次世界大戦におけるナチスの非人道的な行為に抗議をぶつつけたものだが宮島作品の「原爆の図」もまたヒロシマを題材としながらベトナムにつながる
 一九四五年八月六日――この瞬間から戦争も平和も歴史も人間もかわつた!
世界の三大反戦絵画といわれる、丸木位里・丸木俊夫妻の不朽の名作「原爆の図」(全十一部)をこの映画はこくめいに、そして怒りをこめてうつしだす。峠三吉の詩(詩朗読山本圭)、岡田和夫の音楽が一体となつて観るものの胸に 平和を!原水爆禁止を! と呼びかけきざみつける。
 「原爆の図」は八月六日東京の朝日講堂で朝日新聞社主催による最初の公開が決定し、当日は他に山本圭による原爆詩の朗読と丸木俊、武谷三男両氏の講演があるが、八月六日には埼玉県東松山市の原爆の図美術館での試写会も予定されている。さらに埼玉県では、原水禁が中心になつて八月中に各地で原水禁大会の報告集会をかねた全県上映が組まれている。

映画「原爆の図」製作委員会
 埼玉県東松山市下唐子「原爆の図」丸木美術館内
 (順不同)
 安井郁/末川博/高津正道/稲村隆一/千葉千代世/浜井信三/三宅正太郎/田近憲三/水野仁三郎/岩崎昶

映画「原爆の図」製作集団
 代表 宮島義勇

製作委員会事務局
 瀬戸要/宮坂博邦/岩淵正嘉/広島博

製作スタッフ
構成 宮島義勇
撮影 宮島義勇/加藤和郎/今井英雄/安藤峰章
照明 鈴賀隆夫
編集 中尾寿美子/小幡正直
音楽 岡田和夫
音響 奥山重之助
製作進行 岩部成仁
提供 丸木位里/丸木俊(財団法人原爆の図丸木美術館)
詩 峠三吉(原爆詩集―青木書店)
詩朗読 山本圭
製作協力 国際記録映画研究所/全国映研/ブープロ/インターナショナルフィルム・コレス・ポンデンス

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黒白スタンダード 全三巻 三十分
三十五ミリ版 十六ミリ版
十六ミリ販売 四万五千円
三十五ミリ貸出し 七千円
十六ミリ貸出し  五千円

上映その他の詳細は、製作委員会又は製作委員会事務局にご連絡下さい。


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M学芸員の教示によれば、『「天皇」と呼ばれた男 撮影監督宮島義勇の昭和回想録』(2002年、宮島義勇著、山口猛編、愛育社)には、「手帳によると六月二六日にスタッフ打ち合わせがあり、六月三〇日から七月七日まで撮影、一一日から一四日まで編集作業をして、一五日にはスタッフ試写を行っている」という記述があり、かなり短期間に制作した作品であることは確かなようです。

実際、宮島版『原爆の図』を観た第一印象は、素材が非常にシンプルだというものでした。
映像は原爆ドームの映像と《原爆の図》第1部から第8部までの絵画で構成され(クローズアップやカメラの移動が多用されていて、映像が第何部のどの部分かということは一切説明されません)、被爆の状況説明はほとんどなく、その代わりに峠三吉の『原爆詩集』の「ちちをかえせ ははをかえせ」ではじまる「序」と「希い――「原爆の図」によせて――」の朗読、そして「ちちをかえせ」の合唱が最後に印象的に挿入される、という内容。

『映画「原爆の図」製作ニュース』に、「アラン・レネ監督がピカソの絵を撮影して作つた有名な反戦美術映画「ゲルニカ」への挑戦です」と表明されている通り、説明的描写を極力排し、《原爆の図》を解体して宮島監督の視点から再構成したような、実験的/前衛的な作品でした。

その後に上映した今井・青山版『原爆の図』が、米軍占領期の終了(つまり原爆表現の規制からの解放)直後に撮影されたという時代背景の違いもあって、《原爆の図》周辺の情報(たとえば山端庸介、松重美人らの被爆写真や、《原爆の図》の制作風景、巡回展の観客の様子など)を丹念に取材し、一般の人にわかりやすく見せる記録映画になっているのと比較すると、非常に対照的で興味深く思いました。

   *   *   *

宮島版『原爆の図』の今後の上映予定はありませんが、今井・青山版『原爆の図』は、2月12日(日)に銀座シネパトスの「生誕百年今井正監督特集記念イベント」で今井監督の代表作『純愛物語』とともに特別上映されます。

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■『生誕百年 今井正監督特集』 記念イベント

日時:2月12日(日) 14:15〜予定
《特別上映&トークショー》

《特別上映》
「純愛物語」(1957年/東映) 
「原爆の図」(1953年/丸木美術館所蔵)
《スペシャルゲスト》
俳優・江原真二郎
女優・中原ひとみ
*聞き手:樋口尚文(映画批評家)

《2月12日上映スケジュール》
14:15〜15:00トークショー
15:10〜15:30「原爆の図」
15:40〜17:55「純愛物語」
★注意事項★
※「純愛物語」「原爆の図」は16mm上映です。
※ゲスト・上映スケジュールはやむなく変更する場合がございます。
※映画「純愛物語」「原爆の図」は無料上映。トークショーご来場のお客様のみ鑑賞できる資料上映です。
※当日上映の「喜劇にっぽんのお婆ぁちゃん」「米」もご覧いただけます。

■1月14日より劇場窓口にて自由席前売券販売開始予定
【料金】一般¥1300(トークイベント当日¥1500のところ)
■上映劇場予定:銀座シネパトス1(177席)


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また、1月21日(土)には、午後1時から早稲田大学早稲田キャンパス11号館603教室にて、「《幻灯》に見る戦後社会運動――基地と原爆――」が開催され、幻灯版『原爆の図』(1953年/本郷新構成/内田巌解説/キヌタ・ヨコシネ提供/東京スタジオ配給)などの上映の後、岡村の研究報告のなかで、ほぼ同時期に撮影された今井・青山版の映画『原爆の図』と幻灯版『原爆の図』の比較を行います。
興味のある方はぜひ、会場にお運びください。

http://kyodo.enpaku.waseda.ac.jp/activity/20120121.html

上映と研究報告会「《幻灯》に見る戦後社会運動――基地と原爆――」

◆日時 
2012年1月21日(土) 13:00〜18:00  
   
◆会場
早稲田キャンパス11号館603教室 
※入場無料・予約不要
※定員80名・先着順

◆概要
幻灯――光源とレンズを使った静止画像の拡大映写装置――は、映画に先行する近代的な映像メディアとして、明治期日本に広く普及しましたが、映画時代の本格的な到来と共に、長い衰退期を迎えます。しかし、幻灯は戦時期から占領期にかけて、教育・宣伝メディアとして復興をとげ、占領後期から1950年代後半までの約10年間に、明治期に次ぐ第二の全盛期を迎えます。
この時期、幻灯は学校や官庁等で教材として利用されたほか、労働争議、反基地闘争、原水禁運動、あるいはうたごえ運動、生活記録運動といった、戦後の主要な社会運動にとっても重要なメディアとなり、運動の当事者による自主製作・自主上映が盛んに行われました。今回は、神戸映画資料館所蔵の幻灯資料のうち、「基地」と「原爆」をテーマとする4本のフィルムを上映し、併せてさまざまな視点とアプローチによる研究発表を行うことで、戦後社会運動のメディアとしての幻灯の知られざる―面を明らかにすることを試みます。

◆タイムテーブル
13:00 研究発表「《映画以後》のメディアとしての幻灯」
    鷲谷花(早稲田大学演劇博物館招聘研究員)
13:30 幻灯上映『基地立川』
14:00 幻灯上映『基地横須賀』
14:40 休憩
14:55 研究発表「基地をめぐるジェンダー表象:幻灯と映画を中心に」
    紙屋牧子(早稲田大学演劇博物館招聘研究員)
15:25 幻灯上映『原爆の図』
15:55 幻灯上映『ピカドン 広島原爆物語』
16:15 休憩
16:30 研究発表「幻灯版『原爆の図』『ピカドン』と50年代《原爆の図》のメディア表現」
    岡村幸宣(原爆の図丸木美術館学芸員)
17:00 研究発表「ルポルタージュの器としての紙/布/フィルム」
    鳥羽耕史(早稲田大学文学学術院准教授)
17:30 全体討議・質疑応答
18:00 終了予定

◆主催
早稲田大学演劇博物館・演劇映像学連携研究拠点 平成23年度公募研究「戦後映像文化史におけるオルタナティヴ的実践についての実証的研究――幻灯/スライドメディアの再評価及び映画・演劇界との連携の実態の検証を中心に――」(代表・鷲谷花)

◆協力
神戸映画資料館
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