2012/1/15

脱原発世界会議・第2日  館外展・関連企画

脱原発世界会議の第2日目。
初日のプログラムが福島原発事故を検証する内容が多かったのに対し、2日目は自然エネルギーへのシフトや核廃絶を中心とする、未来に目を向ける企画が中心です。

まずは、午前10時から4階シアターで開催された〈『第4の革命 エネルギー・デモクラシー』上映&監督トーク〉に参加しました。
この映画は、30年以内に100%再生可能エネルギーへのエネルギーシフトが可能だということを、様々な角度から分析し紹介していく内容で、2010年にドイツで公開されてドキュメンタリとしては異例の13万人を動員し、福島原発事故後の昨年5月にもドイツのTV放送で200万人が視聴、ドイツの脱原発閣議決定に大きな影響を与えたと言われる作品です。
前日のトークイベントなどでたびたび紹介されていたこともあって、120席用意された会場の椅子は早々に満席。立ち見、座り見もいっぱいで、参加者の関心の高さがうかがえました。



約20分間のダイジェスト上映後、ドイツから来日されたカール=A・フェヒナー監督と、朝日新聞の伊藤千尋氏のトークが行われました。

フェヒナー監督は、従来のドキュメンタリ映画が、問題提起だけで何も解決していないという点に不満を感じていて、問題解決のヴィジョンを持っている人や実践している人に着目する作品を作りたいと考えていたそうです。そして、「エコロジーは人類最大のヴィジョン」という思いから、100%再生可能なエネルギーを世界中の人に大きなスクリーンで見てもらいたいと発案したのです。
朝日新聞の伊藤さんも、日本における自然エネルギーの実践例を伝えながら「対策を示すことの重要性」を説いていました。

クリックすると元のサイズで表示します

フェヒナー監督は、「ドイツと日本はきょうだいのように似ている」と話して下さいましたが、こうした新しい変化を積極的に紹介するドイツと、ほとんど報じようとしない日本のメディアの姿勢の違いについて、会場から鋭い質問も飛びました。
フェヒナー監督によれば、「ドイツのメディアは、第二次世界大戦の反省が今も大きい」とのこと。伊藤さんは自身の体験を踏まえて、一度会社としての方針が決まってしまうとなかなか方向転換できない(つまり、戦時中と本質的には変わっていない)日本のメディアの問題点を指摘。この討論はたいへん興味深いものでした。

『第4の革命 エネルギー・デモクラシー』は、オーディトリウム渋谷などで上映中。
今回はダイジェスト版だったので、私もぜひ映画館で観ておきたいと思っています。

   *   *   *

12時15分からは、N事務局長やT理事と合流し、3階ホールで開催されたセッション〈原発も核兵器もない世界へ〉に参加しました。
原子力と核兵器開発が深い関係にあり、核の連鎖を断ち切るために原発輸出の問題を考えなおそうという内容のセッションです。

登壇者は、進行役の豪州緑の党フェリシティ・ヒルさんをはじめ、米国の軍縮教育家キャスリン・サリバンさん、インドのジャーナリストのプラフル・ビドワイさん、バングラディシュの映画監督タンヴィール・モカメルさん、ヨルダンの弁護士ムナ・マハメラーさん、ヨルダン国会議員のジャマール・ガッモーさん、核戦争防止国際医師会議ケニア支部事務局長のポール・サオケさん、日本のジャーナリスト鈴木真奈美さん。

クリックすると元のサイズで表示します

キャスリン・サリバンさんは、昨年秋に丸木美術館を訪れて下さった方です。
http://fine.ap.teacup.com/maruki-g/1758.html
長年国連軍縮局の教育コンサルタントを務めてきた方らしく、ワークショップの手法を用いながら、人間らしい生活を破壊する「核」の脅威をあらためて実感させる発表を行いました。

そして、日本が原発輸出を計画しているヨルダンなど世界各国の核をめぐる状況の報告を受けた後、最後に「核」と「原子力」という日本語の使い分けの問題や、核拡散防止条約(NPT)と日本の歴史的な背景を的確にわかりやすくまとめた鈴木真奈美さんの発表が見事でした。
「原子力輸出は、輸出する側もされる側も、両国の脱原発への道すじをより難しくさせる」という鈴木さんの結論には大きく頷く思いでした。

   *   *   *

午後2時30分からは、1階メインホールで開催されたセッション〈エネルギーシフトへの道筋〉に参加しました。

登壇者は、進行役を務めた環境ジャーナリストの枝廣淳子さんをはじめ、環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也さん、おひさま進歩エネルギー株式会社代表取締役の原亮弘さん、ドイツ政府環境諮問委員会のミランダ・シュラーズさん、フランスの原子力・エネルギー専門家のマイケル・シュナイダーさん。

クリックすると元のサイズで表示します

開会イベントでも講演を行った飯田哲也さんの発表は、やはり聞き応えがありました。
ひとつは、今後の脱原発に向かう変化はYesかNoかの二項対立ではなく、多様な意見の違いのなかで合意できる部分を積み重ねながら未来を築いていくべきだという基本理念の話。
そしてもうひとつは、脱原発=自然エネルギーへの転換は、中央集権型から小規模分散型の社会に向かう革命であるという話でした。国や県などの大きな主体任せの事業はたいてい失敗する。そうではなくて、その逆――つまり、地域の小さなところから成功経験を地道に積み重ねていくことが大切、という発想です。

その実践例として、長野県飯田市で全国から基金を募って自然エネルギーの普及を進めているおひさま進歩エネルギーの原亮弘さんによる活動報告は、たいへん興味深く思いました。
まずは自分たちでできることを確実に成功させていく。
結局は、その小さな実践が「持続可能なコミュニティ」を作り、飯田さんの言う「石油と核による戦争から太陽による革命へ」という大きな結果に向かう、一番確かな道なのかも知れません。

   *   *   *

最後に参加した特別セッションは、午後4時45分から3階ホールで開催された〈2030年の市民社会―エネルギー・食・教育の未来を描く―〉

クリックすると元のサイズで表示します

登壇者は、進行役を務めたピースボートの小野寺愛さん、京都造形芸術大学文化人類学教授の竹村真一さん、エルサルバドルのFoEインターナショナル元代表リカルド・ナヴァロさん、環境ジャーナリストの枝廣淳子さん。

このセッションでは、世界初のマルチメディア地球儀触れる地球を開発した竹村真一さんの発表が非常に刺激的でした。
竹村さんは、現代社会の問題を、文明が発達し過ぎたのではなく、未だ人類が幼稚で未熟であることから起きているのだと位置づけます。
そして、地球にはまだ新たな可能性があり、子どもたちには絶望ではなく、20年、30年後の確かなヴィジョンを伝えることが大人の役割だというのです。
今後の社会は再生可能エネルギーが基幹エネルギーとなり、各家庭での太陽光発電のような「超ローカル」な形態と、地球の自転に合わせてエネルギーをリレーしていくような広域ネットワーク「超グローバル」な形態が並立していくという未来像には、目を開かれる思いがしました。

   *   *   *

午後6時から1階メインホールで行われた〈閉会イベント さぁ、始めよう〉には、東京大学名誉教授の上野千鶴子さんや首都大学東京教授の宮台真司さん、俳優の山本太郎さんらが出演するという最後まで豪華な顔触れでした。

クリックすると元のサイズで表示します

閉会にあたり、会議の成果として「原発のない世界のための横浜宣言」が発表されました。
@福島の被災者の権利
A日本政府と東電の説明責任
B住民の被ばく最小化
C世界的な脱原発の工程表づくり
D日本は停止中の原発を再稼働しないこと
E途上国への原発輸出の禁止
F地方自治体の役割などを強調し、福島を支援する国際ネットワークを進めること

その詳細は、以下のWEBサイトから見ることができます。
http://npfree.jp/download/yokohama_declaration.pdf

また、「東アジア脱原発自然エネルギー311人宣言」が紹介され、韓国と日本からすでに100人ずつの署名者が集まっていることも報告されました。311人宣言は2012年3月11日に正式に発表され、日中韓を中心とする東アジア行動ネットワークになるそうです。
http://npfree.jp/download/statement_311.pdf

延べ1万1,500人が参加したという脱原発世界会議。
気がつけば慌ただしく会場内を駆けまわり続けた2日間でしたが、さまざまな刺激と勇気を蓄えることができたような気がします。

この会議で得たものを、丸木美術館の日々の活動にどう生かしていくか。
そして、私たちの生きる未来にどのように小さな一歩を踏み出していくか。
原爆の図三部作の原寸大複製画を撤去しながら、そして電車に乗って家に帰るまでの道すじのあいだ、熱くなった胸を抑えながら、自分にできることは何かをずっと考え続けていました。
1



トラックバックURL

トラックバック一覧とは、この記事にリンクしている関連ページの一覧です。あなたの記事をここに掲載したいときは、「記事を投稿してこのページにお知らせする」ボタンを押して記事を投稿するか(AutoPageを持っている方のみ)、記事の投稿のときに上のトラックバックURLを送信して投稿してください。
→トラックバックのより詳しい説明へ



teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ