2011/6/12

震災復興祈念コンサート/栃木県立美術館「関谷富貴展」  他館企画など

午後2時から、栃木県教育会館大ホールにて宇都宮中央女子高校合唱部・吹奏楽部合同演奏会〜祈りの虹〜震災復興祈念コンサートが開催されました。

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宇都宮女子高校とのご縁は、昨年の夏からはじまりました。
8月6日のひろしま忌に出演された栗友会合唱団の一員に、同校合唱部・吹奏楽部顧問のY先生がいらっしゃったのです。
その後、Y先生は、合唱部の生徒たちを宇都宮からわざわざ連れて、《原爆の図》を観に丸木美術館に足を運んでくださいました。
というのも、彼女たちは、与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」を題材にして、信長貴富氏に作曲を委嘱し、合唱に取り組んでいる最中だったのです。
その後、Y先生からは、合唱のCDと、生徒たちの感想文がまとめて送られてきました。
生徒のひとりの感想文の一部を抜粋して紹介します。

合宿の中で「丸木美術館」を訪れ、戦争についても学びました。
私は絵の光景が実際に起きたこととは、今でも信じられません。
被災の直後の白黒と赤の炎で描かれた数枚の絵は、ほとんど見ることさえできませんでした。
しかし絵のすべてが現実であるし、私たちが受け入れ、後生に伝えていかなければならないのも現実です。
「君死に」と戦争の時代は違いますが、それに携わった兵士や彼らの家族の苦しく辛い思いは同じだと思います。
「君死に」を歌うとき、特に家族の思いが表れているところはよく思い出して、感情を込めたいと思います。
コンクールでは、最初から最後まで意味を噛み締めながら歌いたいです。


歌に向き合うためにまず戦争を学び、その時代を生きた人びとの思いを真剣に考えるという、Y先生と合唱部の生徒たちの取り組みには本当に心を打たれました。
同時に、日頃からそれほど深く歌と戦争の問題に取り組んでいた方たちだからこそ、昨年のひろしま忌のようなコンサートが成立していたのだと、あらためて考えさせられました。

今回、Y先生から震災復興祈念コンサートのご招待を頂き、「君死にたまふことなかれ」を歌った生徒たちが、どのように震災からの再生の祈りを合唱の力で表現しようとしているのか、実際に聴いてみたいと思って宇都宮を訪れました。

「道化師のソネット」、「花」、「赤とんぼ」、「ペチカ」、「アンパンマンのマーチ」(寺島陸也編曲委嘱初演)、「上を向いて歩こう」、「生きる」と続く合唱部のステージ、そして嵐やピンクレディのメドレーによる吹奏楽部の楽しい演奏、最後に合唱部・吹奏楽部合同のステージによる「We are the world」、「Over the Rainbow」(寺島陸也編曲委嘱初演)、「ふるさと」の演奏……。
音と音をあわせることが、どれほど人を勇気づけるのかを感じさせる、本当に素晴らしいステージでした。
ご招待下さったY先生、そして宇都宮中央女子高校の合唱部、吹奏楽部の皆さん、どうもありがとうございました。

   *   *   *

帰りに栃木県立美術館で開催中の企画展「妻の遺した秘密の絵 関谷富貴の世界」(6/19まで)を観ました。

これまで、まったく存在さえ知られていなかった女性画家・関谷富貴(1903-1969)を取り上げた非常に興味深い展覧会でした。
なぜ知られていなかったのかというと、彼女は、二科展の画家・関谷陽の妻として、生涯夫の仕事を支え、自らが作品を発表することは一度もなかったからです。
しかし、200点近く残されている作品は、クレーやデュビュッフェを想起させる驚くほど魅力的な抽象画で、はじめの数点を見ただけでぐいぐい引き込まれていきました。
どのように絵を学んだのか、どんな芸術観を持っていたのか、彼女の残した記録はまったくないそうですが、おそらく絵画教室を開いていた夫の教えや画集などを見ながら、独自の世界を切り拓いていったものと思われます。

教室に通っていた生徒の証言では、教室には富貴の作品も数点飾られていたそうですが、陽も富貴もその作品について話をすることは一度もなく、生徒のあいだでは、絵画の技法上の知識はともかく、新しい表現を生み出す才能は富貴の方が上なのではという噂もひそかにされていたようです。
陽もそのことを自覚していたのか、ふだんは温厚な性格だったものの、富貴が絵の批判を少しでもすると、キャンバスを切り裂いたり、物を投げたりすることもあったといいます。
芸術については互いに深く踏み込まず(踏み込めず)、しかし、それでも最後まで寄り添って静かに生きた夫婦の関係について、考えずにはいられない展覧会でした。
あるいは、夫婦とも亡くなった後に、妻の絵の方が注目されて、こうした展覧会が開かれることを、二人はどこかで覚悟していたのではないかと想像したりもしました。

ともあれ、忘れがたい印象の残る展覧会でした。
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