2011/2/13

原爆小文庫と立川展感想文集  1950年代原爆の図展調査

午前中、東京・西東京市のひばりが丘図書館を訪れました。
以前から訪れたいと思っていたのは、ここに旧保谷市在住だった故・長岡弘芳氏が収集した原爆関連資料をもとにした「原爆小文庫」が保存されているためです。

現在、4月からはじまる目黒区美術館「原爆を視る1945-1970」展の図録用の論考を書くため、全国の図書館などに調査依頼して1950年代はじめの「原爆の図展」資料を収集しています。
当時の「原爆の図展」は、日本全国を巡ったことが伝説的に知られているものの、いつどこで誰が開催したのか、という具体的な検証が行われたことはありませんでした。
もちろん、記録に残らない展覧会も数多くあるだろうと思われ、60年の歳月が流れた今となってはすべてを掘り起こすことは難しいのですが、今回の目黒展を機に、できる限りの調査をしておきたいと思っているのです。

その一環として、先日、立川市中央図書館に「原爆の図展」の調査協力を依頼しました。
すると、調査担当の方がたいへん親身になって協力して下さり、開催日時や主催団体などの情報を教示してくれた上に、ひばりが丘図書館に立川展の感想文集が所蔵されているということも突き止めて下さったのです。

長岡弘芳氏は、丸木美術館とも深いかかわりのある原爆文学研究者。
こうしたかたちで原爆小文庫とつながった以上、やはり直接ひばりが丘図書館に足を運んで、実際に原爆小文庫と感想文集を確かめてみたいと思いました。

原爆小文庫は、開架書棚のひとつのコーナーになっていましたが、感想文集のような古い資料は閉架書庫に保存されているので、係の方にお願いして閲覧させて頂きました。

クリックすると元のサイズで表示します
(写真が感想文集、編集後記によればカットは「丸木、赤松両先生」、おそらく俊の筆)

1952年8月15日-17日 立川南口公民館
立川平和懇談会主催「原爆美術展」
原爆の図5部作と東京都立大学学生有志の集めた写真資料を展示


当時の立川には米軍基地があり、朝鮮戦争の緊張状態がいまだ続く時代。
朝鮮半島に向かう飛行機が続々と立川基地から飛び立っていたときに行われた「原爆の図展」ということで、主催者側の苦労も並大抵でなかったことでしょう。
しかし、その分反響も大きく、成功した展覧会であったと思われます。
感想文集『平和のために』(1952年9月9日、立川平和懇談会発行)の序文には、岸清次氏による次のような文が記されていました。

この三日間、政治、宗教、或は物の見方は異つても戦争より平和を!二度と廣島の悲劇を繰り返すな!と集つた延一八七名の、それこそ何の報はれることをも求めない涙ぐましい程の青年達の献身的な奉仕と協力に依つて開かれたものであつて、然も立川市長初め隣接十一町村長と立川地区労協傘下の各労組並に各文化団体宗教家等の賛同の下に、特に十七日は赤松俊子画伯の来場講演を得て盛大に行はれ、三日間に九、九〇七名の入場者(子供を加えると一万二千以上)と平和に関係ある各種署名四千七百八十九票、並に多くのカンパと感想文も百六十余通に達し大成功の中に終つたものであつて、一部は映画に迄収められている。

感想文集には、子どもたちや母、若者、勤労青年などの項目にわかれて、たくさんの感想文が記録されています。
なかには、以下の2つの感想(ともに一部抜粋)のように自身の住む町と原爆を結びつけて考えるような内容も見られました。

原爆展を見
毎日、毎日、身近に鈍い飛行機の音をきく
今この会場で汗を忘れ息をたかならせて絵に見入るとき
この今も不気味な爆音は、私たちの人間の命をふるわせて頭上をとぶ

立川に原爆展開かる。私達の忘れられぬ八月十五日、終戦記念日、此の植民地化されつゝある国際都市立川に於て、あの惨酷な地獄図を見て、誰もが云う「あゝ戦争はいやだ」展覧会を見て出てくる人々の顔に暗いかげがさしている。


後に美術批評家となるヨシダ・ヨシエ氏の詩も、文集に収められていました。
そこにもやはり、基地の街という立川の特殊性がうたわれています。

こころゆくばかり哭きました
はげしい怒りにふるえました
そうして

今あらあらしい感情のゆらぎの底に
固い誓いを切ないくらいおもいながら
家路に向うのです

今日の涙を覚えていよう
このいきどおりを忘れまい
頭上には不吉な尾を引いて
今日も爆音がひゞきます
一機 二機 三機 五機
そうしてそれが
明日は世界をおおう
不気味な黒雲になりはしないか
ひそかにわたしはおそれます

(以下略)

こうした感想文集は、当時の巡回展の状況を知るうえで、たいへん貴重な資料となるのです。
立川市中央図書館をはじめ、たくさんの資料をご教示下さっている全国各地の図書館の調査担当の皆さまには、本当に心から感謝いたします。
6



トラックバックURL

トラックバック一覧とは、この記事にリンクしている関連ページの一覧です。あなたの記事をここに掲載したいときは、「記事を投稿してこのページにお知らせする」ボタンを押して記事を投稿するか(AutoPageを持っている方のみ)、記事の投稿のときに上のトラックバックURLを送信して投稿してください。
→トラックバックのより詳しい説明へ



teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ