2010/7/28

「白井晟一の造形」展  原爆堂計画

午前中は地元新聞社の取材を受けて、午後、近現代史研究者のKさんと、東京造形大学附属横山記念マンズー美術館の「SIRAI,いま白井晟一の造形」展(7月30日まで)を観てきました。

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白井晟一の設計した「原爆堂」の配置図や平面図、透視図などに加え、東京造形大学大学院生の制作による石模型や断面模型などが展示されている非常に興味深い展覧会。
断面模型の内部を除くと、なんと展示室の壁面には、1/100サイズの《原爆の図》が1部から4部まで展示されていて、嬉しくなりました。
断面模型なので、「原爆堂」が実現していれば8部作まで展示できる空間ができていたことになります。

   *   *   *

丸木俊さんは、著書のなかで、次のように「原爆堂計画」について記しています。

(友人の斎藤聖香さんが)
「あんたたちの知らん間に、大変な原爆美術館の設計ができているんだよ」
 と言って、白井晟一先生を案内してきました。わたしたちも訪問して仕事場を見せていただきました。白井晟一先生は、長い間、この設計に没頭され、ようやく完成したのだ、と幾枚もの青写真や写真を見せてくださいました。
 円筒をかこんで正方形の画廊がついている、そうして水に浮んでいる。それがそのまま原子雲の姿にも見え、だが、それは、悲劇を転じて幸いとなす、花のように水に映じている、そんな幻想に似た設計です。
「美術館にとどめてはいけない、堂となすべきだ」
 という意見も出ました。
 そうして、湯川秀樹先生、吉川英治先生、木辺宣慈先生、朝倉文夫先生、高津正道先生、滝波善雅先生、河井弥八先生、服部之総先生等が発起人になってくださって、この仕事を、世界行脚とともに進めることになったのです。
 阪本和子さんはたくさんの名簿の整理をしてくださいました。川田泰代さんはお姉さんのように、いろいろ考えてくださいました。井口大助さんは外国の手紙のほんやくを引きうけてくださいました。
 ソ連にも原爆反対のテーマの美しい彫刻がありました。
 メキシコのシケイロスさんはわたしたちに画集をくださり、それを見せながら、
「原爆投下のその十年前に、わたしはすでに原爆の絵を描いていました」
 と言いました。
 東独でも原爆をテーマにした絵を誰かが描いたと聞きました。
 わたしたちのばかりでなく、もうすでに日本にも先輩や友人の作品がたくさんできています。もし、日本に原爆の図の美術館ができたら各国の美術家にお願いして、今までに作られた作品を寄贈していただいたらいかがでしょう。また、ピカソさんやフージロンさんにお願いしたら。もし、これが実現したならば、二〇世紀の芸術家たちが、平和のためにどのようにして、この原爆の破壊と闘ったかという、一大モニュマンができ上がる、庭には木をたくさん植え、彫刻を配置して、美術館には絵を、図書館には長田新先生の原爆の子、大田洋子さんの屍の街、峠三吉さんの原爆詩集、死んだ原民喜さんの詩など、映画や芝居の小講堂もあったり。これは夢でしょうか。そのころ、そんなことを考えていました。

(1972年 朝日新聞社『幽霊 原爆の図世界巡礼』pp.159-160)

池の中央に浮かぶ正方形の建物が原爆の図の展示スペースとなり、手前の池のほとりに張り出す扇形の建物は図書室や講堂、事務室……企画展示などもできるスペースがありそうです。
夢のような「原爆堂計画」ですが、結局は実現せずに終わりました。
今、東松山市にある丸木美術館を、建て直して白井晟一の「原爆堂」に……という構想を、亡き針生一郎館長が会議の席で提唱したこともあります。
もちろん、決して簡単に実現できる構想ではありません。

でも、復元模型とはいえ、幻の「原爆堂」のなかにたしかに《原爆の図》が展示されているのを見たときに、何だかとても幸せな気持ちになりました。
会場となっている横山記念マンズー美術館も、実は白井晟一の設計がもとになっています。
こちらは「マンズー美術館」の外観写真。正方形と円の組み合わせ、窓の狭さなど、やはり「原爆堂」に似ています。

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白井晟一と丸木夫妻の関係については、白井晟一の義兄が位里と親しかった水墨画家の近藤浩一路だったことを知っていたので、そうした人間的なつながりがあったのだろうと思っていたのですが、今回の展覧会の年表を見て、戸坂潤との交流があったり(1926年に京都高等工芸学校講師となった戸坂潤に兄事する、とある)、1932年に1年間モスクワに滞在していたり、思想的にも近いようなつながりがあったのかも知れない、とあらためて感じました。

白井晟一が中公新書のマークのデザインや書籍の装幀を手がけていたことも初めて知ったりして、研究者のKさんも「来てよかった」と言って下さったので、わざわざ八王子まで行って良かったです。
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