2010/4/16

川越スカラ座「戦場でワルツを」豊田直巳スライド&トーク  川越スカラ座

あいにくの小雨となりましたが、午後5時半から川越スカラ座にて、『戦場でワルツを』上映記念企画としてフォト・ジャーナリスト豊田直巳氏のスライド&トークが行われました。

『戦場でワルツを』は、1982年のレバノン戦争におけるパレスチナ難民虐殺(サブラ・シャティーラの虐殺)事件にイスラエル兵として加担したアリ・フォルマン監督が、当時の兵隊たちを取材しながら、失われた自らの記憶を取り戻していくという物語です。
実は少し前にスカラ座スタッフのIさんから、この映画を上映するにあたり、ゲスト講演者についての相談を受けていました。
そこで、イラク戦争やパレスチナ問題をたびたび現地取材し、丸木美術館で何度も写真展や講演をして下さっている豊田さんを推薦したのですが、実は豊田さんがジャーナリストになるきっかけとなったのが、まさにそのサブラ・シャティーらの虐殺だったということを知り(詳しくは、岩波ジュニア新書の豊田さんの新刊『戦争を止めたい フォトジャーナリストの見る世界』をお読みください)、偶然のつながりに驚いたのです。

   *   *   *

平日の夕方、しかも悪天候という条件にもかかわらず、会場には約40人ほどの参加者が集まって下さいました。
私は司会を担当し、歴史の“記録”からこぼれ落ちてしまう人間的な“記憶”の重要性(これは、現在開催中の「OKINAWA展」のテーマでもあります)に触れつつ、戦場に生きる人びとの暮らしを撮り続ける豊田さんを御紹介しました。

トークの前に映画をご覧になった豊田さんは、銃を向ける側の人間は、記憶を封印、あるいは正当化せずにはその後の精神の安定が保てないのだろうとしながら、しかし、銃を向けられた側は記憶を永久に封印することができないのだと指摘します。
そして、映画では語られなかった歴史的背景の説明――なぜパレスチナ難民が生まれたのか、なぜレバノン戦争がはじまったのか――について、映像を使いながらとてもわかりやすく説明して下さいました。スカラ座スタッフのNさんの言葉を借りれば、それは“「世界一受けたい授業」を彷彿とさせる感じ”だったようです。

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とりわけ強く印象に残ったのは、「耐えられない」というのが映画のテーマであるけれども、サブラ・シャティーラの虐殺はかたちを変えて今も続いている、という話でした。
虐殺は、加害の側にも記憶を閉ざすことでしか「耐えられない」恐怖を生み出す。
しかし、そうして記憶を閉ざした結果、どうなったのか。
ますます虐殺を続けなければならなかった。
「耐えられない」恐怖を抱えて、戦争はずっと続いていく。
だから、記憶を閉ざしてはいけない。
相手と向き合わなければ、相手の姿が見えなければ、相手は皆テロリストに見える。

こうした視点はもちろん、イスラエルとパレスチナ難民だけの問題ではなく、東アジアにおける私たちの立場にも重なることでしょう。

豊田さんの報告によれば、イスラエル国内にも、難民になって逃げなかったアラブ人がいるとのこと。破壊されてはいるけれども、彼らの村もあるそうです(現在、イスラエル国内のアラブ人は約2割ほどいるようです)。
イスラエルとパレスチナの共存は可能……という考え方を「イスラティナ構想」というそうですが、豊田さんは、「これは人種や宗教の問題ではない。現実に彼らはすでに共存しているんですよ」と言いました。
2000年も戦争を続けている根深い問題……という“常識”が本当に事実なのかどうか、しっかりと見極めることが大切だということを、あらためて痛感させられました。

   *   *   *

数日前にコソボやボスニアの取材から帰国されたばかりで、週末は大阪でトークの予定が入っているという豊田さん。たいへんお忙しいなかにもかかわらず、川越スカラ座に駆けつけて下さり、トークのあともスタッフたちと気さくに打ち上げに参加して下さいました。
心から感謝申し上げます。
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