天平五年癸酉春閏三月笠朝臣金村贈入唐使歌一首(并短歌)
玉手次 不懸時無 氣緒尓 吾念公者 虚蝉之 世人有者 大王之 命恐 夕去者 鶴之妻喚 難波方 三津埼従 大舶尓 二梶繁貫 白浪乃 高荒海乎 嶋傳 伊別徃者 留有 吾者幣引 齊乍 公乎者将待 早還万世
玉たすき 懸けぬ時なく 息の緒に 我(あ)が思ふ君は うつせみの 世の人なれば 大君の 命畏(みことかしこ)み 夕されば 鶴(たづ)が妻呼ぶ 難波潟(なにはがた) 御津(みつ)の崎より 大船に 真楫しじ貫き 白波の 高き荒海(あるみ)を 島伝ひ い別れ行かば 留まれる 我れは幣引(ぬさひ)き 斎(いは)ひつつ 君をば待たむ 早帰りませ