羈旅歌一首(并短歌)
海若者 霊寸物香 淡路嶋 中尓立置而 白浪乎 伊与尓廻之 座待月 開乃門従者 暮去者 塩乎令満 明去者 塩乎令于 塩左為能 浪乎恐美 淡路嶋 礒隠居而 何時鴨 此夜乃将明跡侍従尓 寐乃不勝宿者 瀧上乃 淺野之雉 開去歳 立動良之 率兒等 安倍而榜出牟 尓波母之頭氣師
海神(わたつみ)は くすしきものか 淡路島 中に立て置きて 白波を 伊予に廻らし 居待月(ゐまちづき) 明石の門(と)ゆは 夕されば 潮を満たしめ 明けされば 潮を干しむ 潮騒の 波を畏(かしこ)み 淡路島 礒隠り居て いつしかも この夜の明けむと さもらふに 寐(い)の寝かてね 滝の上の 浅野の雉(きぎし) 明けぬとし 立ち騒くらし いざ子ども あへて漕ぎ出む 庭も静けし