
1843年製プレイエル。ほぼオリジナル状態を保つ貴重な楽器なのだそうです。木の響がしました。人も多勢入っていたので、はじめ、いぶし銀のように感じられた響が、だんだん部屋と馴染んで、深い輝きを持った響に変わりました。後で聞いた話ではピッチはA=430Hzだったとのこと。昔、低めは好きでなかったのですが、最近は落ち着いた響、心地よく感じます。歳取ったせいかな、、(関係ないか、、)
昔、よく行っていたペンションで頂いたカードに書いてあった、こんな言葉が浮かびました。
「森で生きている間、私は黙っていた。命を失った今、澄んだ声で歌う」
--古い弦楽器にラテン語で書かれていた言葉--
(命を失ってはいない、、生物としての命は失われても、木の命は楽器として、音の中に生き続ける・・書いた人もそのような意味で書かれたのだと)

フォルテピアノの存在を知って1年未満なので知らないことも多いですが、主なメーカーとしては、エラール、プレイエル。エラールは比較的派手で良く響くそうで、リスト御愛用だったようです。リストはパトロンを嫌い、自分でチケットを売ってコンサートで収入を得たとか。なので多勢のお客を呼ぶために大きなホールが必要で、良く鳴るエラールを選んだのだそうです。ショパンは、その演奏のほとんどをサロンで披露したらしい、、 だから大きな響は要らなかったのですね、、

ただ、そのエラール、構造が複雑で、問題が起こると修復にかなりの時間を要したとか、、故にリストは演奏会の時にピアノを3台用意したのだそうです。響は良いけれど構造に問題のあるエラール、それをアメリカで改良したのがスタインウエイ一族だったとか、、 ピアノの歴史も知れば知るほど面白いです。

音量のバランスを取るために、敢えて響き過ぎないように板を入れたり、、 そのような楽器から醸し出される川口さんのppは微風のような、海の凪のような、、(会場がそのような雰囲気になるのです)絶品でした。私はショパンの曲を良く知らないので、曲の名前はわかりません。又、川口さんが演奏中になさる、本当に幸せそうなお顔。それを思い浮かべながら、日々練習に励みたいと思いました。