昨日、有楽町読売ホールで聞いてきたお話です。
これは大変大切なことと思い、一生懸命ノートテイク(要約筆記)してきましたので、今日はそれをここに載せます。
是非是非読んでください。とくにこれから子育てする人、その家族の人達に。
「メディア接触と子供達」
講師:清川輝基
平成19年7月2日(月)読売ホールにて、11時〜13時
プロフィール:1942年生まれ
東京大学教育学部教育行政学科卒業。64年NHK入局。
社会報道番組ディレクターとして番組に従事。
NHK特集「警告 子どもの体はむしばまれている」、
「何が子どもを死に追いやるか」など。
99年よりNHK放送文化研究所専門委員。
NPO法人子ども劇場全国センター代表理事。
チャイルドライン支援センター代表理事。
慶応義塾大学メディア、コミュニケーション研究所兼任講師。
2002年、川崎市のゼロ歳児1,300人を対象に、電子メディアに接するとどういう影響を受けるか、12年間追い続ける、というプロジェクトを立ち上げ、現在5年目でその結果がでるまであと8年かかる。この人体実験は世界で初めて、どの国もやらなかったことだ。日本の子供達は世界で一番多くメディア接触している。2歳児までにメディア接触の習慣を植え付けられた子供達が、脳、体、言葉、社会性の発達がどうなるかという追求である。
福島会津の母親殺人事件、奈良県の医師家庭の放火殺人事件、静岡県女子高校生のタリウムでの母親殺人事件、北海道では友人に自分の親の殺人を依頼した事件、など、これらの事件の主人公は0〜3歳児まで電子映像メディアに接触した1990年代生まれの子供達だ。
日本の子供達は先進諸国の中で学校以外の勉強時間が一番短く、テレビやビデオをみる時間は一番長い(文部科学省の常盤豊氏が平成17年4月に論文で書いている)といわれる。
この50年間で文化環境の変化が著しく、特に自然環境は100分の1に減少している。一方1953年テレビが登場、1960〜70年代に急速に普及した。1970年以降に生まれた子供達は100%テレビ普及したときの子供たちだ。1960年生まれの子供達が30歳になるのが、1990年代で、彼らの子育てのやり方が大きく変化している。(この年代の子供達が上記のような殺人事件をおこしている年代だ。) また、2001〜2005年までの5年間で小学校入学時の状態が変わった。何が?特別支援を必要とする子供達(例えば多動児など)が2倍に増えている。そして、又、子供達への虐待も2005年までの15年間で3倍に増加している。
1983年からゲーム機が売り出され、ビデオも普及した、1990年代にはパソコン、そして携帯電話が普及し、電子映像の種類が増えた。このような環境の中で、日本の子供達はメディア接触時間が世界で一番長く、半分以上の子供達が一日平均6時間接触しているようになった。休日には一日10時間も費やしている子供もいた。1年365日のうち、年間総勉強時間が1100時間だったら、メディア接触時間はその倍の2002時間である。
先日、テレビ番組「NHKスペシャル」で「30歳代のうつ病」について特集していたが、まさしく、彼らの年代は子供期にゲームをして育った人達である。彼らの育った当時はいろいろな現象がでている。レンタルビデオ屋が出現し、世界に類のない早期教育ビデオが発売されたりした。(例ベネッセのシマジロウなど、音感、英語、色彩教育についてなど)これらのビデオを子供達にみせて育てる親がいた。例えば生後7ヶ月から毎日6時間英語ビデオを見せ続けた。2歳半になってどうもこの子の様子がおかしいと気づき医者に診せたら、すぐにビデオ、テレビをみることをやめさせた。ようやく普通の発達に戻り始めたという例。このような状況で育った子供が大人になり、今その大人達が子供にゲームを買ったりしている。
10年程前から、人間の脳を生きたまま調査することが可能になった。ゲームをしている時の子供が手と眼を使った時の脳の様子を調べたら、脳はほとんど動いていないということが分かった。脳の前方部分の前頭前野が、活発に動くかどうかが大切である。この部分は人間の欲望、感情をコントロールするところだ。京大、東大、早大の大学生の集団強姦事件があったが、まさしく、彼らにはこの脳の前頭前野部分が働かないという状態だったのだ。パソコン、ネットゲームをすると、麻薬を飲んだと同じ快感を得られるとの結果もある。ゲーム以外でも例えば漢字を活字辞書で調べた場合に脳は働くが、電子辞書で調べたら働かないという結果も出ている。このように学力にも影響を及ぼす。パソコンで調べ物をしても脳の短期記憶というワーキングメモリーがほとんど働かず、物を覚えられない、ということだ。漢字の書き取りなどそうである。
文部科学省がこのような子供達の環境を懸念して、「早寝、早起き、朝ご飯」という生活のキャッチフレーズを打ち出した。(本当は「テレビを消して外遊び、ゲームを止めて外遊び」というキャッチフレーズにしたかったが、政府内、各省の力関係があり、テレビ等通信関係は総務省管轄、ゲーム等は経済産業省管轄で力の弱い文部科学省にとやかくいわれることではない、というのが本当のところである。)今の子供達の家庭での仕事(手伝い)といえば、「灰皿運び」「新聞取り」「テレビチャンネル替え」くらいだ。今、こどもの発達障害には@体、A知的、B軽度、に加え、Cとしてトータルで人間としてのことができない障害といわれる。当の子供達は何も分からず、これは親、大人の責任によるものだ。メディア生産にかかわる生産者サイドはだれ一人としてこの障害、影響について研究をしていない。北海道のミートホープ会社の肉もひどいが、せいぜい腹痛を起こすぐらい(笑い)だが、このメディア産業のもたらす功罪は人間の一生を左右する。アメリカ人のストラスバーガー曰く、「テレビ、ビデオに接触する際の人間の安全性について世界中どこの国でもまだ証明したところはない。」今の平均7割の母親は自分の赤ちゃんにテレビを見ながら、ケータイでメールしながら、おっぱいを飲ませている。これらの行為についてはまるで想定されなかったことだ。
1985年ころから日本の子供達の体力が低下している。このままではとんでもないことになる。東京都養護教諭研究会の報告によると、子供達の疲れが一番高いの学校の始まる週初めの月曜日である。まさしく勉強するわけでもない、働くわけでもないのに。土日の休みのメディア接触疲れによるものだ。私が昨年2月岡山県で聴いた報告によると、中2男子生徒が1日21時間のメディア接触(パソコン、チャット、ネット等)していた。私は日本評論社から今月7月号に出されている雑誌に「ちょっと待って教育改革、子供達の劣化と教育の未来について」という原稿を書いた。子供達の発達のおかしさについて専門家も現実を見ていない(触れていない)のでよく分かっていないのが現状だ。とても50年前の人間とは違うということを知ってほしい。5年前に「子供が危ない、2歳までにテレビをけしてみませんか」というビデオを作り、反響をもらった。その後先生を対象としたビデオを作ろうということで出来たのがこれからお見せするビデオ「子供のメディアの新しい関係を求めて、No.2 」です。
・ ・・・・・・ビデオ上映・・・・・
1995年から子育てのやり方が変わった。『三つ子の魂百までも』という諺があるが、この三つ子というのは満2歳という意味である。脳の神経細胞は生まれたとき130億個ある。これがうまく神経回路に出来ていくのがこの満2歳までなのだ。この大切な時期に7〜9割の親がメディア漬けの中でおっぱいをあげたり、子育てしている。これは大変に危険なことだ。(ピカチューの例もあげながら)強烈な光と音を与えるから。今まさしく日本の親たちはそれを人体実験しているわけだ。イギリスではピカチュー映像を見て少年がショック死し、韓国でもネットカフェで青年がやはりショック死している。自分の快楽のために赤ちゃんの脳に影響を与えているのだ。これらの現象は1990〜1995年に急激に増えている。そして、製造メーカー側は一度も安全性について研究していない。眼の焦点距離がピシッと合うのが小学校入学までだ。人間はほ乳類動物の中で唯一自力で赤ちゃんの時に母親のおっぱいのところに行かれない生き物である。それほど弱く生まれているのだ。そこに必要な眼(アイコンタクト)を親はメディアに向けながらおっぱいをあげている。そこで子育てさせられている子供はどうやって成長するのか・・・。子供から親への愛着がうまれないようにという子育てを今している。又、今は親の育児放棄、虐待などが問題になっている。自分の快楽の為に気づきもしないで、愛着形成を妨害しているのがメディアだ。
日本のひきこもり人数は100万人、ニートは60数万人、ネット中毒患者が100万人を越えるのは時間の問題だ。日本よりいち早くITが進んだ韓国では若者の18%(400万人超)がネット中毒で問題になっている。中国も今追随している。
低学年にも携帯電話を持つ(持たされている)時代だ。学校裏サイト等でいじめが生まれている。出会い系サイトも問題だ。「サザエさんサイト」など名前は可愛いが実際は見るに堪えないとんでもないひどいものだ。このようにメディアが愛着形成の妨害をし、クリックひとつで命が生きたり死んだりと行ったり来たりして、実体験をともなっていない。長崎県の小学生女児が同級生を学校内で殺害する事件があったが、加害者の女児は翌日、殺した被害者に対して「会ってあやまりたい」と言ったという。長崎の小学生1クラス33人中28人の生徒が人間は生き返ると信じていると答えたそうだ。
言語形成期にメディア接触が長いと言葉の力が育たない。また、昔は日本は家庭生活が生産生活(体力を使う)であったが、今は消費生活で筋肉が育たない。以前学校での体力測定に「背筋力テスト」があったが、今は子供達が腰を痛める子が多いということで中止となった。直立したとき、重心の位置が今の子供は2.6%後ろにいっている。幼児期は足を鍛える大切な時期である。これからの子供が大人になったころ、子供におっぱいあげながら腰痛になり、また、自分の親の介護もできなくなるだろう。車椅子生活者が増え、医療費が益々増え、刑務所が増えるだろう。この国の未来が見えてくる。
都の教育委員会は校庭を芝生にするように進めている。一校あたり、この事業に2,000〜3,000万円かかるが、将来を見据えての(テレビを取り上げて子供達の居場所を作る)よいことだと思う。私は現在長野県上田市に住んでいるが、川のあるよい所だが、子供が遊んでいる姿をみたことがない。市長に聞いたら、大人用のゲートボールの施設などに12億円使っているが、子供達への川の整備などにはゼロ円であるとのことだ。
以上