再び、「食品の裏側」から引用します。
著者が人生を変えた最大の要因は自分の開発したミートボールにあるのだそうです。
長女の3歳の誕生祝い、モーレツサラリーマンの著者がめずらしく家族と食卓を囲みました。そこにあったミートボールを見て絶句。
「このミートボール、安いし、子供達が好きだから、取り合いになるのよ。」と妻。
「ちょっと、待て待て。」と慌てる著者。
そのミートボールはスーパーの特売用商品としてあるメーカーから依頼されて開発したもので、売値が1パックたったの100円弱、原価は20円〜30円なのだそうです。発売を開始するや笑いが止まらないほどの売れ行きでこの商品だけでビルが建ったと言われたほどだとか。
著者がそのミートボールの開発にかかわったのは、そのメーカーが「端肉」を安く仕入れてきたのが発端だった。牛の骨から削り取る、肉とも言えない部分、ペットフードに利用されるところだ。ミンチにもならない、味もない。しかし「牛肉」である。元の状態は形ドロドロ、水っぽいしとても食べられるものではない。
まず安い廃鶏(ハイケイ・卵を産まなくなった鶏のミンチ肉)を加え、さらに増量し、ソフト感を出すために「組織上大豆たんぱく」を加える。安いハンバーグなどに必ず使われるものだとか。これに味をつけるため、「ビーフエキス」「化学調味料」を大量に、歯触りなめらかにするため、「ラード」「加工でんぷん」を入れる。さらに「結着剤」「乳化剤」を、これは機械で大量生産するので作業性をよくするためだ。色をよくするために、「着色料」を、保存性のために「保存料」「PH調整剤」を、色あせを防ぐために「酸化防止剤」を使用。ミートボール本体はこれで出来上がり。
ミートボールをからめるためのソースはと言えば、氷酢酸を薄め、カラメルで黒くし「化学調味料」を加えてつくる。トマトペーストに「着色料」で色をつけ、「酸味料」を加え、「増粘多糖類」でとろみをつけてケチャップもどきを作る。添加物は種類にして20〜30種類は使っていて、もはや「添加物のかたまり」といっていいぐらいのものだとか。
自分が作った添加物は国が認可したものばかりなのだから食品産業の発展にも役だっていると思っていた。添加物のセールスこそが自分の生涯の仕事と決め、日本の新しい食文化を築こうと本気で考えていた。しかし、自分の子供達には食べてほしくないものだった。自分も、自分の家族も消費者だったのだ、ということに気づいた。自分の「生涯の仕事」が何かがおかしい。添加物については誰よりも詳しいと自認していた自分が添加物のもっとも重要な「安全性」という問題をまったく無視して今日まで来てしまった、という気づき。
その夜一睡も出来ず、翌日会社を辞めました。・・・とあります。