東京中央郵便局、解体の危機
建築家ら「文化財に」

JR東京駅前の東京中央郵便局の保存運動が正念場を迎えている。昭和初期に建てられた局舎は日本を代表するモダニズム建築だが、日本郵政グループは超高層ビルへの建て替えを計画。危機感を抱いた建築家らは、局舎を国の重要文化財に指定するよう求める会を設立した。
保存運動が起きている東京中央郵便局=東京都千代田区丸の内
東京中央局は1931(昭和6)年、逓信省営繕課(当時)の故吉田鉄郎氏の設計で完成した。白く端正なデザインは当時、京都の桂離宮を評価したドイツ人建築家ブルーノ・タウトも称賛。国際的な建築団体「DOCOMOMO」(ドコモモ、本部パリ)も「日本の近代建築20選」の一つに挙げている。
だが、民営化で不動産事業を始める日本郵政は、吉田氏設計の東京、大阪両中央局の建て替えを計画。設計に先立ち、東京中央局の歴史的な価値について専門家による委員会に意見を求めている。
関係者によると、委員会では外壁を一部だけ残して高さ200メートルの超高層ビルにする案と、全面保存する案が出ているという。日本郵政は近く結論を出す予定で、現局舎の一部業務は5月で移転する。
これに対し、建築家や市民ら120人が3月25日、「東京中央郵便局を重要文化財にする会」(代表・前野まさる東京芸大名誉教授)を立ち上げた。周辺では、低層のビルが利用していない容積率(高層化できる権利)を他のビルに売ることもでき、会は、容積率を売って局舎を保存した方が、数百億円を借りて建て替えるより日本郵政の経営リスクも少ないと指摘する。
重文指定は、超党派の国会議員団も訴えており、会は歩調を合わせて日本郵政や千代田区、国へ働きかける。
東京駅周辺では、都市計画の規制緩和で、戦前のビルを超高層に建て替える例が90年代から続いている。丸ノ内ビル(23年完成)や旧国鉄本社(38年)のほか、最近では八重洲ビル(28年)と三信ビル(30年)が姿を消した。
一方、赤れんがの東京駅(14年)と明治生命館(34年)は重文指定を受けて健在だ。東京駅では未利用容積率の売却益で、戦災前の姿に駅舎を戻す工事も始まった。
会副代表の建築家兼松紘一郎さんは「外壁を申し訳程度に残して超高層にしたら、日本の玄関として恥ずべき景観になる」と話す。(神田剛)
アサヒ・コムasahi.com>社会>その他・話題> 記事 2008年04月03日22時25分

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