「取り調べメモ」広島地検が廃棄 広島少年院暴行事件
広島少年院(広島県東広島市)の法務教官らによる在院少年への暴行事件で特別公務員暴行陵虐罪に問われ、無罪を主張している元首席専門官、向井義(ただし)被告(49)の「取り調べメモ」を、広島地検が廃棄していたことが向井被告の弁護団への取材でわかった。弁護団は17日、同メモの適切な取り扱いを求めた最高検の通知に違反するなどとして、最高検に調査を申し入れた。
検事や副検事が主に容疑者の発言や質問事項などを記す取り調べメモをめぐっては、郵便割引制度を悪用した偽の証明書発行事件でも、大阪地検特捜部の複数の検事が関係者を取り調べた際につけたメモを廃棄していたことが明らかになっている。
調査申入書によると、向井被告は2009年6月、暴行を認める内容の調書に署名した。弁護団は翌7月、地検に備忘録やメモを廃棄したり改ざんしたりしないよう申し入れた。だが、今年4月の公判の証人尋問で、取り調べ担当の副検事は「私のメモはすべて処分した。まとめたメモなどは主任検事に提出した」と証言。弁護団が主任検事が保管しているはずのメモの証拠開示を請求したところ、地検は「廃棄済みであり、存在しない」と回答したという。
最高検は08年、取り調べの状況が将来争いになる可能性があると捜査担当検事が判断した場合、(1)メモを公判担当検事に引き継ぐ(2)公判担当検事はメモを一定期間保管する――ことを刑事部長名で求めた。弁護団は取り調べ内容が争いになることが予想されていたのにメモを廃棄した対応は最高検通知に違反し、証拠隠滅罪にあたる可能性もあるとしている。
弁護団は副検事による脅迫的な取り調べがあったとして苦情を申し入れたのに、地検が調査をせずに「調査をしましたが、指摘の言動はなかった」とする回答書を出したことについても、虚偽公文書作成罪などにあたる可能性があるとして調査を求めている。
2010年10月18日11時41分 朝日新聞

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