原爆症認定めぐり初の国家賠償命令 広島地裁

判決の後、記者会見する弁護士や原告ら=18日午前11時47分、広島市中区の広島弁護士会館、青山芳久撮影
広島で被爆した被爆者23人が、国に原爆症認定と慰謝料1人あたり300万円の支払いを求めた広島2次訴訟で、広島地裁(野々上友之裁判長)は18日、3人の原告について「厚生労働相は、尽くすべき注意義務を果たさず、原告に精神的苦痛を与えた」として国に計99万円の慰謝料を支払うよう命じる判決を言い渡した。全国の原爆症訴訟で、国家賠償が認められたのは初めて。
判決は、未認定だった5人のうち、3人を認定し、2人の請求を棄却した。昨年4月に導入された認定の新基準ですでに原爆症と認められていた18人のうち16人は「訴えの利益がない」とすべての請求を却下したが、がんで認定されていた2人については新たに肝機能障害で原爆症と認めた。
判決で認定された5人のうち、未認定だった2人とがんで認定されていた1人については国家賠償も認めたが、他の2人については、審査当時は疾病と放射線との関連性が十分立証されていなかったとして、賠償は認められなかった。
判決は、厚労相の職務について、単に認定審査会の意見に従って判断するだけでは足りず、認定基準が被爆者援護法と相いれない場合には是正を促す必要があるとした。そのうえで、厚労相は、00年の最高裁判決で、審査会が重視してきた被曝(ひばく)放射線量評価システム(DS86)の適用は「機械的」と問題点が指摘された後も、審査会に再検討を促すなどの措置をとらなかったなどとして、原告3人の申請を漫然と却下したのは違法行為にあたると結論づけた。
原爆症認定をめぐる集団訴訟では、国の却下処分取り消しを命じる判決が続き、今回の判決で国は15連敗となった。慰謝料の支払いまで命じられたことで、国は認定行政のさらなる見直しを迫られることになる。
asahi.com 2009年3月18日12時58分

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