大阪大空襲、被災者・遺族ら国を提訴へ
賠償・謝罪求め
提訴に向けて打ち合わせする藤原まり子さん(左)と安野輝子さん。ともに義足がなければ外出できない=8月25日、大阪市東住吉区、武田写す
約1万5千人の命が奪われたとされる1944〜45年の大阪大空襲の被災者と遺族らが国に1人当たり1千万円の損害賠償と謝罪を求める集団訴訟を年内にも大阪地裁に起こす。今月末にも原告団を結成し、開戦から67年となる12月8日の提訴に向けて準備を進める。
国は旧軍人・軍属やその遺族には、戦傷病者戦没者遺族等援護法を適用して障害・遺族年金を支給する一方で、民間の空襲被災者には何の補償もせず、死傷者や罹災(りさい)者の実態さえ調査していない。空襲で被災した民間人の集団訴訟としては、東京大空襲の被災者や遺族ら112人が昨年3月、国に損害賠償と謝罪を求めて東京地裁に初提訴。大阪大空襲の原告側も東京訴訟と同様、国が援助してこなかった不作為の責任を問う。
提訴するのは、1944年12月19日から45年8月14日にかけて約50回に及んだ大阪市や周辺への爆撃で障害を負った被災者や、両親を亡くして孤児となった遺族ら。6歳の時に鹿児島への空襲で被災し障害を負った堺市の女性も参加を望み、原告団は10人程度になる見通しだ。
一夜で約4千人が犠牲になったとされる「第1次大空襲」(45年3月13日夜〜翌日未明)で生まれてまもなく被災し、左足のひざから下を切断した藤原まり子さん(63)=大阪市東住吉区=らが06年に「戦災傷害者の会」を結成し、東京大空襲の被災者らと提訴に向けて連携。8月末の総会で提訴の方針を確認した。
空襲での被災をめぐる国家賠償については、最高裁が87年、「戦争犠牲ないし戦争損害は、国の存亡にかかわる非常事態のもとでは、国民のひとしく受忍しなければならなかったところ」という判断を示し、名古屋空襲で被災した女性2人の上告を棄却した。しかし、中国残留孤児訴訟では、神戸地裁が06年、この「戦争犠牲受忍論」を理由に賠償責任を認めようとしない国の姿勢を否定し、原告勝訴の判決を言い渡すなど、受忍論を見直す司法判断も出ている。
海外では、第2次世界大戦中にナチスドイツの空襲を受けたフランスと英国、連合国軍の空襲を受けたドイツとイタリアなどが、民間の被災者を対象とした補償制度を整備している。
藤原さんは「私たちの人生を変えた空襲の実像と、63年たっても続く苦しみを裁判で明らかにし、被害を放置してきた国の責任を問いたい」と話す。代理人を務める予定の高木吉朗弁護士(大阪弁護士会)は「社会情勢の変化や司法判断の流れを踏まえて、最高裁の判例が変更される可能性は十分にある」としている。(武田肇)
アサヒ・コム 2008年9月20日6時51分

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